断腸亭料理日記2009

鰯 その2

3月20日(金) 21日(土) 22日(日)

さて。

その後の鰯の行方(ゆくえ)、で、ある。

これだけあると、やはり、鮨、で、あろう。
押し寿司。

素人の作れる鮨といえば、押し寿司しかないのだが、
私はよく作っている。


秋刀魚


さより







昨年だけでも、これだけ作っていた。
これだけ作っていながらだが、まだ、コレ、という
うまい、押し寿司のための、秘訣のようなものはまったく、
つかめていない、のである。
(まあ、まったく食えないものではないのだが、、。)

上の四つも、さよりはちょっとグレーだが、
どれも、いわゆる光もの。
青魚、で、ある。

まずは、ベースとして、青魚というのが、
そもそも、むずかしいのだと思われる。
なにかというと、1)鮮度、と、いうのがある。
鯖はむろんのこと、鰯にしても、鯵にしても、
買ってきた時の鮮度、その後の処理、そんなことでも
違うのかも知れない。

それから、2)脂ののり。
押し寿司、というのは、脂があった方がよいのか、
そうでない方がよいのか。あるいは、どちらでもそれなりなのか。

たとえば、秋刀魚の押し寿司、というのは、紀州の那智勝浦が
名物だが、あちらでは、南下して、脂が落ちた秋刀魚で作る、というのを
看板にしている。このため、やっぱり、脂が落ちた方がよいの
か、と思ったり。そうかと思うと、京都の鯖の棒寿司などでは
脂の乗った鯖、というのもあるように思われる。

3)次に、〆具合、というのがある。
これも素人にはよくわからない。
基本は、2〜3時間、あるいは、一晩、塩をし、
水分を抜いて、酢に漬ける、などといわれてきた。
塩をする時間を長くすればするほど、塩味も強くなるので、
これをまた、抜かなければならない。
一度塩をして、置いて、また、洗って、水に浸けて置く。
どのくらい置けば抜けるのか。この時、折角抜いた水が
戻らないのか、などと思うのだが、、。
あるいは、最近の鮨やでも、鯖でもここまでぎっちり
〆たりはしない。半生、あるいは、もっといくと、
ものによっては、塩は5〜6分で、酢は洗う程度。

この塩の時間と、酢の時間は、魚にもよるのだろうし、
鮮度にもよるのかも知れない。あるいは、握る場合と
押し寿司でもまた、違いそうでなのである。

つまり、出来栄えを左右する、変動要素(パラメータ)の
組み合わせがとても多い。
料理の中でもこの手のものは、難易度が
高いのである。(たとえば、天ぷら。これも、変動要素、
パラメータが、とても多い。
衣のかたさ、ゆるさ、油の温度、揚げる時間、やはり、
これに、たねの種類、大きさなどが関わってくる。)

生ぐさくならず、よい塩梅というのが、わからない、のである。

そこで、いつもは1時間ほどだが、今日は、

少し、長めに〆てみようか、と、考えた。

土曜の夜、3匹、三枚に下ろし、両面塩をし、
ざるにのせて置く。

深夜まで、3時間ほど、置いてみた。

寝る前に、洗い、数分水に浸け、、酢に漬ける。

酢は、気持ち、砂糖を入れたもの。

米を研ぎ、浸水。
あとは、起きてから。

翌、日曜日。
起きてから、炊飯器のスイッチを入れる。
炊き上がりは、かためモード。

酢飯を作る、のも、私には鬼門、で、ある。
これも、会得できていない。

またまた、登場だが「鶴八鮨ばなし」である。
これには、酢飯の作り方、というのも載っていた。

(そういえば、酢飯で思い出した。
そうとうな余談だが、この前の、考察では、触れなかったが、
鮨やの符丁のこと。
酢飯は、シャリ。お茶は、あがり。お勘定は、おあいそ、、
などなど、(もっと)たくさんあるが、私は、基本的に、
使わないようにしているし、また、これは、お客としては、
使わないのが、正しいと思っている。
本来符丁は、今でいう、業界用語。
使ってもよい言葉もあるとは思われるが、
物によっては、お客にわからないように、わざと、
使っている、符丁もある。例えば、数字をいう符丁。
一はピン、二は、リャン(そのままだ。)、三は、ゲタ(下駄)、
四は、タリ、などなど。お勘定の額を離れた帳場などに通すのに、
これを使っている店も多い。こんなのは、お客みんなにわからない
ように、使っている。
また、特に、おかしいのは、おあいそ。
これは、はっきりいって、お客が使うべき
言葉ではないのである。いいおじさんが「おあいそして!」
なんといっているが、おあいそは、店がいうから、
おあいそ、なのである。
お客は、普通に、お勘定、お会計、でよいのである。
まあ、いずれにしても、符丁とはプロの使う言葉である。
お客はお客。知った顔で、使うのは、やめたほうがよいだろう。)

「鶴八鮨ばなし」の酢飯の作り方、で、あった。

ここに書かれていたのは、合わせ酢を炊き上がったご飯に、
合わせるが、この時に団扇などで、
ほとんどあおがない、ということ。

(そうなのである。そもそも、我々なども、
あまり分かっていないが、にぎり鮨の場合、江戸前伝統では、
完全に冷まさない。にぎり鮨の酢飯を入れておくおひつは、
保温をしておくくらいなのである。
そして、人肌程度なのか、少し温かみのある状態で握るもの、
なのである。たまに、鮨やのレビューで、温かい、というのを
マイナスの評価にしているのも見かけるが、これは見当違い。)

また、飯粒を潰してはいけないので、さっくりと切るように、混ぜる。

なんとなく、私は、完全に冷やすもの、と、思い込んでいた。
(情報としては、先の保温をして、というのは
知ってはいたのだが、、。)

炊き上がった、ご飯は、10分ほど蒸らす。

そして、合わせ酢(これも砂糖を少し入れたもの。)を作る。
(合わせ酢は一合に対して、40cc。)

ボールに半分(一合)ほどご飯を取り、酢を合わせる。
全体に酢を行き渡らせ、混ぜていると、ご飯の熱で、段々、
水分が飛んでくる。
ここで、やめる。

今までは、完全に冷えるまで、かき混ぜ続けていたし、
その上、なん度かに分けて、酢も入れていたようにも思う。
(入れる量も目分量だったり、、。
その上、ご丁寧に、扇風機まで使っていた。)
こうすると、飯粒はつぶれるし、冷え始めると、
水分は飛ばないし、というので、ベチョベチョの
酢飯になっていたのである。

酢は一気に入れ、手早く混ぜ込み、水分がある程度飛んだら、
すぐにやめる。
これがポイント、なのかも知れない。

やっと、会得したか!?。

押し寿司の型を用意し、ラップを内側に敷いて、
一番底に、酢に漬けてあった鰯をよく拭いて、
敷く。

あとは、手に水分を付けて、まだ温かめの
酢飯をなん回かに分けて、押し込んでいく。
全部入れたら、ふたをして、押す。

この後、どのくらい置くのか、これも、よくわからない。
伝統的な押し寿司の作り方は、数時間置く、というのが
多い。
しかし、例えば、にぎり鮨は、完全に即席、で、ある。
なん回も書いているが、即席に、にぎるだけで、
アミノ酸の量が増える。
では、時間をかけなくともよいのではないか。
とも、思えてくる。

と、いうことで、今日は、形を作るだけで、
五分ほど落ち着けて、型から抜く。

切る。
実は、これも、苦手なのである。
どうも、きれいに切れない。

プロが、巻き寿司などを切るのを見ると、
軽く、刺身包丁を湿らせて、一気にサクッと
切っている。

同じようにやってみても、こうはいかないのである。
まず、上の魚を切るが、ここで引っ掛かり、
包丁を少し動かしながら、下の飯を切るのだが、
下まで行く間に、いわゆる端面、切れ目の面が、
全部ではないが、少し、崩れてしまうのである。
(むろん、包丁は切れないわけではない。
酢をつけて、包丁はあまり動かさず、腕で円を描くように、
そして、一気に切る、、そんな情報もある。)

ともあれ。
切れた。


食べる。

ふむふむ、なかなか、うまい。
やはり、しっかり〆るのが生ぐささ、に、ついても
失敗は少ない、の、かもしれない。

塩加減も、わるくない。

内儀(かみ)さんに食わすと、うまい、とはいっていた。


さて、あと、三匹、残っていたもの。

これはさらに翌、日曜に、蒲焼、に、してみた。

三枚におろして、ガスグリルで焼き、
最後に、甘いたれ
(例の穴子の煮汁を煮詰めたもの。
鮨やの符丁で、ツメ、で、ある。実は、今、拙亭には
以前からあったものと、最近作ったものと、二種類ある。
以前からのものは、キンメかなにか他の魚を煮たつゆも
煮詰めて足してあったりしている。こちらの方は、
よかれと思ってやってはみたが、違う味が混じり、
イマイチ、になっていたのである。
そこで新しく煮たものは、別にしてあったのである。
で、その古い方をこれに使った。)
でつけ焼きにした。


色もよいし、なかなか、うまく焼けた。






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