断腸亭料理日記2009

竹町・焼鳥・鳥喜

8月27日(木)夜

今日は、天気はよかったが
少し涼しかった、と、いってよかろう。
そろそろ秋の空気か。

午後、埼玉県にある、早稲田大学の所沢キャンパスへいってきた。
(むろん、仕事、で、である。)
所沢も郊外のこの早稲田の界隈は、武蔵野の趣、
と、いってよいだろう。畑があり、林がある。

池袋から、山手線、ぐるっと回って、6時半頃、
御徒町に戻ってきた。

戻ってきて、なにを食べようか、考えていた。

焼鳥。

なんとなく、よい天気と、焼鳥はつながっている。
うまく説明できないが、そうなのである。

寒い時分にも、焼鳥ということはあまりないし、
暑すぎてもそういう気分にはならない。

どちらかといえば、今日のような天気の日のしめくくりには、
焼鳥が思い浮かぶのである。

上野、御徒町、湯島、と、この界隈、焼鳥、鶏料理の
店は、チェーン店を除いても、少なくない。
(ひそかに、焼鳥、鳥料理集中地帯ではないかと、
思っているのであるが。)

中で、思い付いたのは、竹町の鳥喜

竹町といっても、お分かりがない方も多かろう。
台東四丁目。
これでは、もっとわからないか?!。
まったく、味もそっけもない町名を付けたもの、
で、ある。

台東区台東。

台東は、そもそも、浅草区と下谷区が合併して、
台東区と、ついた名前であろう。

この台東、余談だが、今は、タイトウ、と濁らずに読まれているが、
発足当時は、ダイトウと濁って発音されていた。
今でも、町内会の地元のお年寄りはダイトウと
いう人も少なくない。

台東そのものの由来は、上野の山など、台地の東で、
台東、という説明。まあ、それほど、由緒のある表現ではないと
いってよいだろう。
その、台東自身を町名にしている。

台東区台東は、西は昭和通り、東は清洲橋通り。
南は、三井記念病院の北、凸版印刷本社の南の通りから始まる。
ここから、蔵前橋通りまでが一丁目で、旧二長町。
(今の丁目と、旧町は一致しない。)
なん度か書いているが、二長町には、明治になり、
歌舞伎、江戸三座のうちの市村座ができて、
大いににぎわった。

この蔵前橋通りから、佐竹商店街入り口にぶつかっている
東西の通りまでが、二丁目。
このあたりから、南北に細長く、昭和通り側が御徒町。
東側が、竹町。
そして、竹町公園、今日の鳥喜のある通りの南が、三丁目。
その北、春日通りまでが、四丁目となっている。
ちなみに、今の佐竹商店街は、なん度も書いているが、

江戸の頃は、出羽久保田20万石佐竹藩上屋敷。
竹町の名前の由来は、屋敷の西門に竹が使われていた
ことから、このあたりが“竹門”、と呼ばれていたことから。
(このあたり、今の佐竹商店街と竹町公園のあたりは、
明治になり、藩邸跡が、空き地になり、下谷公園という
町名がついて、その後に、寄席などもある、ちょっとした
盛り場になっていた。)

今、御徒町といえば、ここだけだが、
御徒士(おかち)の住む、町は、江戸各地にあった。

例えば、牛込。今の、北町、中町、南町がそうである。
かの、蜀山人大田南畝先生は
本職は、幕府の御徒士であったが、この牛込の御徒町に住んでいた。
(御徒士とは、江戸幕府では最下級の武士で、御目見え以下の
御家人。普段は、江戸城の門などの番士や、将軍外出時の警備(行列)。
七十俵五人扶持で、薄給。従って、内職も盛んで、
この下谷御徒町では、朝顔を作る内職が広まり、それが今の
鬼子母神の朝顔市のもとになったともいわれている。)

下谷のこのあたりにも、たくさんの御徒士が住んでおり、
江戸の頃は町人の住んでいる地域ではないので、
正式な町名ではないが、通称として、既に御徒町と
呼ばれていた。

と、まあ、二長町にしても、御徒町にしても、
竹町にしても、この界隈の東京人にしては、長年慣れ親しんだ、
地名であったはずである。

台東という町名は、まあ、地形的に場所を現わす言葉としては、
間違ってはいないだろうが、これら由緒のある数々の町名を
塗りかえるほどの説得力は、どこにもないのではなかろうか。

この界隈に昔から住まわれている方々はどう思われているのか。
あるいは、町名が変わってから、ここに住んでいる人々は、どうか。
町名が台東になってから既に、40年以上であろうか、
経っているので、もはや、ある程度、馴染んでいるのも
確か、かもしれないが、、。

毎度ながら、前置きが長くなってしまった。
それも、毎度お馴染みの内容で恐縮、で、ある。

鳥喜へは、JR御徒町駅の南側の改札から出て、歩く。
昭和通りを渡って、先の、三丁目と四丁目の間の通りを

歩いて、竹町公園の手前、到着。

小さな店である。

入ると、手前のテーブルに3〜4人。

一人なので、カウンターに座る。

瓶ビールをもらって、
いつものように、5〜6本、適当にお願いする。

太った兄ンちゃんが、刺身なんかは、いいですか?
というので、レバ刺しをもらってみる。

荒くおろした、大根おろしのお通しがきて、

ビール。

渇いた喉に、ビールがうまい。

きた。


レバ刺しもうまい。

焼鳥は、つくねから。


塩、で、ある。

次は、ねぎま。


続いて、ハツ。


ぼんじり。


この後、手羽が出たが、写真を撮り忘れた。
これで、五本。

どれも、うまい。

今日は、こちらも、なんにもいわなかったが、
全部、塩、で、ある。

ここは、別段、塩専門ではない。
タレも、むろんうまい。

焼鳥や、というのは、大人数ではなく、
こうして、一人か二人、カウンター越しに
焼けたのを小皿にのせて出してもらって、
どんどん食べる。
これがよい。

ビール一本、これで、お勘定。

うまかった。

無口な親爺さんがやる、こんな地味なところの、
小さな店であるが、やっぱり、うまい。

店を出て、竹町公園を抜けて、帰宅。



TEL:03-3835-7618
住所:〒110-0016 東京都台東区台東4丁目3−2






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