断腸亭料理日記2008

駒形どぜう

9月8日(月)夜

夕方から仕事で、以前に住んでいた、葛飾の四つ木へ。

四つ木というのは、都営浅草線、京成押上線で荒川を越えて一つ目。
小さな町工場のある町。
今の浅草へ越してくるまで、20代の頃から、
足かけ、10年は住んでいたのだが、なんだかんだいって、
よい街であった。

随分前に、東京の下町の定義、なるものを試みたことがあった。

この話をし始めると、長くなるのでやめておくが、
四つ木がひらけたのは戦後のことであるから、
長屋、町屋のようなものや、昔からあるお寺や神社、あるいは、
文化財のようなもの、があるわけではない。
(例えば、谷中、根津、千駄木のような。)
道も、昔の農道、田んぼ道が元なのであろう、
細く、曲がりくねっており、お世辞にも
きれいな街ではない。

しかし、街としての、人気(じんき)、
人情のようなものをいうと、四つ木のような街は、
東京下町といって、なんら問題はあるまい。
むしろ、半分オフィス街になっている台東区などよりも
よっぽど正しい東京下町を継承していると思う。

ともあれ。

18時前、仕事が終わって、
京成に乗って、戻る。

これは、会社に戻らずともよいであろう。
浅草を素通りして、仕事に戻る気にはどうしてもならない。
(実際は、片付けねばならぬことがあったのだが、
これは持ち帰ってきてはいる。)

夕方から、考えていたのだが、
駒形どぜう、に寄ろうか、と。

6月であった。
久しくいっていなかったのだが、ふと、
のぞいてみた

はとバスコースの、土日ではなく、ウイークデーの夜であれば、
なかなかよい、というのを発見したのであった。

都営浅草線の浅草駅の、南に向かって、先頭から降りると、
駒形どぜうは、すぐ、で、ある。

門口に、本日鯨料理、二割引、などと書いてある。

くじらかぁ〜。
ここに鯨もあったのか。
くじらもいいなぁ〜。

戸を開けて入る。

下足のお兄さんから札をもらい、入れ込みの座敷に上がる。

奥から三番目の桜板。
神棚を背に、胡坐をかいて、座る。

ビールをもらい。
くじらは、と、、?

立田揚げ、さらしくじら、刺身、などなどあるが、
中で、鍋、というのもある。

くじらの鍋、というのはどんなものであろうか?
肉であろうか。

お姐さんに聞いてみると、脂と笹がき牛蒡で、ある、という。
はは〜、くじらベーコンのような脂身か。

もらってみよう。

きた。


こんな感じである。

どぜう、のように、ねぎをのせるのかと聞くと、
まあ、お好みですが、このままで、というので、
玉子だけもらって、食べることにする。

味は、想像通り。
ベーコンではないが、湯がいたような脂身の薄切りで
見た目以上に、さっぱりしており、なかなかうまいが、
まあ、珍味、というところかもしれない。

一通り、食い終わる。
これだけでは、やはり、物足りない。
やっぱり、どぜう、を食わねば。

丸鍋をもらおう。


やっぱり、これこれ。
ねぎをたっぷりのせて、はふはふ、いいながら、
味の染みたどぜうを、口に運ぶ。

やはり、うまいなぁ〜。
しみじみと、うまい。


煮詰まってくると、割り下を足して、
またねぎを足して、汗をかきかき、どぜうを、食う。

もう一つ、お替り。

うまい、うまい。

食い終わり、勘定。

(5000円。)

だいぶ汗をかいてしまった。

外に出ると、さすがに、夜風が涼しい。

隣のバンダイの本社ビルとの路地を入り、
真っ直ぐ西に。
ここから、えっちら、おっちら、
歩いて帰れるのも気持ちがいい。

こうして、早い時間に一人で駒形どぜうに寄るのは、
やっぱり、よいものである。



駒形どぜう




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