断腸亭料理日記2008
さて。
今日は昨日の続き。
銀座の資生堂パーラーへいく。
ビールをもらい、6000円のコースと、チキンライスを頼んだところまで。
ビールをもらってしまったのだが、このコースには、
キールの食前酒も付いていた。
折角であるから、それももらい、呑む。
次にきたのが、アミューズ。
まあ、前菜であるが、前菜は前菜で、別にあり、
食前酒とともに、出される、軽いつまみ。
お盆にのせて持ってきて、いくつかある内の、どれか二つを、
ということ。
お盆の上のものを取ろうとしてしまったが、
これは看板。
別にちゃんと持ってきてくれる。
私がもらったのは、フォアグラののったカナッペと、ライフコロッケ。
どちらもうまいが、特に、ライスコロッケ。
ここは、やはりコロッケの類が看板なのかもしれぬ。
次。
こちらが、ちゃんとした、前菜。
スープ(ミネストローネ)か、カンパチのカルパッチョから選ぶ。
私はカンパチ。
青りんごのソース、ということで、
ちょっと甘酸っぱいソースと、まわりに実際に
青りんごを切ったものも散らされている。
爽やかである。
内儀(かみ)さんは、ミネストローネ。
別段、特別なものではないが、少し飲ませてもらうと、
うまみが深い、優しい味のように思われた。
あまりにも値段が違うので、比べるのも不釣合いな気もするが
ちょっと、日本橋たいめいけんの、ミネストローネに
近いような、感じかもしれない。
(あれは、安いが、びっくりするほど、うまかった。)
次。
かにのクロケット。
このコースにもクロケットが入っている。
ミートではなく、かに。
また、ここのアラカルトのクロケットは、俵型で
二つ、で、あるが、このコースのは、
この勾玉(まがたま)型で一つ。
普通にいうと、かにクリームコロッケ、で、ある。
これも格別に、うまい。
なにがといって、的確に表現できないのだが、
最初のライスコロッケも同様で、
うまみが濃い、ように思うのである。
まわりの、ソースが違うのかもしれぬ。
ソースもパンで、ふき取って残らず食べた。
また、日本橋高島屋で食べたときにも書いているが、
上にかかっているパセリを揚げたものが散らしてある。
なんということもないものかもしれぬが、これも、うまい。
いずれにしても、手間を惜しまず、
材料も吟味をしてある、のであろう。
やはり、この資生堂パーラーの存在価値というのは
このあたり、ということになるといってよいように思う。
なにかというと、こういうことである。
例えば、昨日書いたが、カレーライス、3000円は、いかにも高い。
ここのカレーライス自体は食べていないので、むろんわからないが、
カレーライスというのは、家庭料理でもあるし、
日本国民、みんなが知っているどこにでもある料理である。
それを、どういう工夫をしているのかわからないが、
最良の材料を使い、おそらく長年積み重ねた手法で
“あたりまえのもの”を日本一の味に仕立て上げる。
ここのシェフ、料理人達は、こういうことを考えて
料理をしているのではないだろうか。
このかにクリームコロッケも然(しか)り。
珍しい材料を探し、使い、珍しい、人がやったことのない
料理法で、新しい料理を作る、というのに
人の目は向かいがち、で、ともすれば、そうでなければ
価値がない、とまで思われる人も多かろう。
まあ、それもわるいとはいわないが、
“あたりまえのもの”をあたりまえに、うまく作るということは
私は、とても重要なことだと思うのである。
それが人間のいとなみ、というものではなかろうか。
これは、池波先生が書かれていたこと、でもあったように思う。
“あたりまえのもの”というのは、長いことかかって、
様々な人々、先輩達が工夫をして、出来上がり、定着したものである。
それをひっくり返し、奇を衒うのは簡単。
しかし、その王道を正しく、再現して、継承するということは
商業的にも、料理人としてもそうそうたやすいことでは
ない、と、思うのである。
(むろん、少しずつは、改良しているのであろうが。)
ここの値段はそういう値段、と、
考えてもよいのではないだろうか。
そう思えてくる、クロケットの味、で、ある。
さて、次。メイン。
メインは魚2種、肉2種から選べる。
私は、ステーキを選んだ。(内儀さんは魚。ホタテ。)
飛騨牛ランプ肉のペッパーステーキ。
ランプ肉は、和牛でも脂の少ないところ。
いわゆる霜降りというのではなく、赤身なのであろう。
焼き方は、聞かれなかったように思われる。
ミディアム以上に火は入っているようだが、柔らかい。
ペッパーという以外は、余計な味は付いておらず、うまい。
同時にチキンライスもきた。
二人でシェアするので、取り分けてくれる。
やっぱり、“あたりまえ”に、うまいチキンライス、で、ある。
元来私は、チキンライスが好きなのでろうが、
池波先生が洋食やで、白いライスではなく、チキンライスに
してもらう、という、まあ、ある種の贅沢、をしている
というのを読んで、自分も洋食やでは、必ず頼むメニューに
なっている。
浅草ヨシカミのものは、濃い。
銀座煉瓦亭のものは、ピラフに近い、上品な味。
ここのものは、中間か。
前にも書いているが、どいう工夫をしているのか、
入っている、鶏がうまい。
チキンライスには、ピクルス、福神漬などの薬味のセットが付いてくる。
一番下に、少しわかりずらいが、オレンジ色のものが
見えると思う。
これは、袋を取った、みかん。
今、ほとんど見なくなったが、我々の子供の頃には
みかんの缶詰、というものがあった。
あれ、で、ある。
その頃は、とても甘かったが、これは、甘味は押さえて
いるようである。
うまいので、全部食べてしまった。
デザート。
さつまいものクリームブリュレ、というのをもらった。
秋らしい、さつまいもを使い、
さつまいもとわかる、誰でも馴染める味。
しかし、なにが違うのかわからぬが、作っている、
パティシエが、ちゃんと自己主張をしているような、
そんな味、のようにも思えた。
そういう意味では、先ほどまで食べてきたオーソドックスな洋食とは
ちょっと違う方向なのかもしれない。
パンも食べ、チキンライスも食べて、そうとうに腹も一杯。
勘定はテーブルで。
ちょうど、二人で20000円。
ビールに加え、グラスワインももらっていた。
この味で、このサービスで、決して高くはないだろう。
さすがに、資生堂パーラー銀座本店。
たいしたもの、で、ある。
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