断腸亭料理日記2008

笹乃雪の薄揚げの餡かけ

10月27日(月)夜

寒くなってきた。
やっと、というべきかもしれない。

もう、11月にならんとしている。

この秋はだいぶ暖かだった。
昼間などは、上着を着て外を歩くと
汗が出てくるような日々が続いていた。

8時過ぎ、オフィスを出て、牛込神楽坂の駅に向かう道を
歩きながら、なにを食べようか、考える。

餡かけ豆腐でも作ろうか。

豆腐なら、根岸、笹乃雪

餡かけ豆腐も、池波レシピ、で、ある。

なん度も書いているが、鬼平にしろ、梅安にしろ
剣客にしろ、池波作品には、とてもよく出てくる。
豆腐がよければ、簡単でうまいもの、で、ある。

駅そばのスーパーに寄る。

ここには笹乃雪の豆腐が置いてある。
ここのものは、500円を越えるが、一丁で二丁分以上はある。

昨日今日できぼしの、わけのわからぬな名前をつけた、
高価な豆腐よりも、よっぽど信用ができるし、
実際に、格段にうまい。

売り場にきてみると、、
この時間になると、やっぱり、売り切れ。
一日におそらく、一丁程度しか入荷しないようである。

あ〜あ。
どうしたものか。

隣に、同じ、笹乃雪の揚げと、飛竜頭(がんもどき)がある。

なんとなく、餡かけ、の頭になっているので、
飛竜頭では無理だが、揚げであれば、餡かけもあるか。

買ってみよう。

それから、出汁用に、乾燥椎茸のスライス。
国産のもの。
中国産であれば、一袋100円で買えるが
やっぱり、中国産は、このご時世、手が伸びない。
まあ、東京に暮らしていて、中国産のものを
完全に食べないで暮らすのは不可能であろうが、
自分がわかる範囲で選択できるものは
同じものなら、国産のものを選びたいというのは、
人情、というものである。

帰宅。

笹乃雪の薄揚げ。


厚揚げではなく、薄揚げ。二枚入っている。
厚さ1cm弱。

笹乃雪は店は鶯谷、根岸の里に、
江戸の頃からある、老舗、で、ある。
豆腐や、ではなく、豆腐料理店。
むろん近所はなん度も通っており、存在も知っているが
入ったことはない。
やはり、店では餡かけ豆腐が、昔から、看板であるという。
場所柄、上野の山の宮様御用達。

まずは、鍋に、水、椎茸スライスを入れ、加熱、煮立てる。
煮立ったら弱火にし、椎茸が戻るまで、しばらく待つ。

薄揚げは一口に、切る。

ある程度、椎茸が戻ったら、薄揚げも入れ、
しょうゆ、酒、砂糖で味付け。

ある程度、味を含ませればよいだろう。

10分程度。

最後に、火を付けたまま、水溶き片栗粉を回し入れ、
堅めにとろみを付ける。

盛り付け。


さよりの押し寿司が残っていたので、これも出す。

ビールを開けて、食べる。

豆腐であれば、味の差、というものはわかりやすい。
笹乃雪のものは、そこいらの豆腐とはまるで違う。

揚げ、で、あれば、よくわからないかもしれぬ。
それでも気は心、気分である。

うまい。

餡も、椎茸から、よい出汁が出て、なかなかよい。

簡単でうまい、酒の肴、で、ある。





笹乃雪





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