断腸亭料理日記2008

すみいか

11月31日(日)夜

さて、あらためて、書くこともないのだが、
私は、仕事をしながら、こんなものを書いているわけである。

仕事は仕事でそうとうに、忙しい。
これは、時間的、体力的、物理的に忙しい、
ということもあるが、考えなければいけない、
という意味で、いっぱいいっぱい、というような
毎日を送ってもいる。

そうすると、気分を変える、という意味で
土曜日は、ほぼなにもしない。

日曜日はこの日記にかかる、ということになる。
つまり、日曜日に五回分の目処をある程度付けている
わけである。

この作業に取り掛かるまでにはそれなりに、
努力は必要だったりするのだが、
取りかかってしまうと、むろん仕事ではなく、
好きで書いていることなので、夢中になる。
(今週であれば、神楽坂の話、あたりのことである。)

調べて、書いて。
楽しい作業ではある。

そのあい間に、ねたでもあり、アメ横に買い出し。
今日は、徒歩。

稽古ではないが、落語をぶつぶつ喋りながら。

アメ横到着。
師走も近くなったせいか、大にぎわい。
歩くのも、一苦労、で、ある。

先週は、鱸、で、あった。今週もある。
それから、秋刀魚、鯵、いつもある、太刀魚、
あんこう、も、ある。鯛、これもいつもある。
蛤、、、。今週は、なんとなく、ピンとくるものが、、
ないか、な、と、あきらめかけたが、すみいか。

まあ、ここでも珍しくはないが、
見ていて、食べたくなった。
すみいかというと、私は、いつもは、天ぷらを
主に考えていたが、今日は一つ、刺身を主に
考えてみようか、と、思い付いた、のである。

五杯で、500円。

徒歩で、帰宅。

再び、作業に戻る。

7時前、さばき始める。


こんな感じ。

さばくのは、今日は、少し、
内儀(かみ)さんにも手伝わせる。

下足をはらわたごと抜き、殻を取り、
えんぺらをきっかけに、皮をむく。

下足も身も、きれいに洗う。

いつもやっているので、特段のことはない。
経験上、気を付けなければいけないのは、
できるだけ、きれいにすること、で、あろうか。
墨だの、内蔵だのは、飛び散らないように取り、
飛び散っても、できるだけきれいに洗っておくこと
であろうか。
刺身などの場合は、少しでも残っていると、
生ぐさくなってしまう。

身は、開くと、台形をしている。
天ぷらにする四角い部分を取るために、
三角形の切れ端の部分ができる。
(お分かりになろうか。台形から長方形を取ると、両端は
二つの三角形が残る。)

今日は、刺身を主に、と考えたのだが、
自分で食べるから、見てくれは、三角形でもよい。
天ぷらは、大きめに切った方が、うまい、
ので、こうなったのである。

刺身用の三角のもの。
刺身を主、と書いたが、さほど、特別なことを
考えていたわけではない。

京都祇園の鮨やなどで、見た、水分をできるだけ取る、
というのと、常温にする、というもの。
白身や、いかは、この方がうまいのでは、
と、いうことである。

そこで、水分は、ペーパータオルでよく取って、
ざるにのせて、そのまま置いておく。

天ぷら。
これは毎度書いているので、今日はやめよう。
内儀さんに、大根をおろさせ、今日の衣は、
比較的堅め。油温は高温を目指してみた。

それから、下足。
これは湯通しし、例の甘いたれ。

天ぷら


まあまあ、目指すところの揚げ上がりになったか。
なかなか、うまい。

主、で、ある、刺身。


これは、やはり、違う。
自分でさばき、切ったにしては、随分とうまい。
なにかというと、すみいかのあまみ、が強く感じられる。
ものはべらぼうによかったわけではないと思われるが、
十分にうまい。

刺身の温度と、表面の水分。
常温で、表面は乾いているわけではないが、
濡れている、という感じではない状態。

こうすると、なんとなくおわかりになろうが、
ねっとりした感じが強く、なるのである。
これがあまみとして、より強く感じられるのであろう。

白身と、いかは、この方がよいかもしれぬ。

さて、下足。


これもうまかったのだが、
内儀さんには、ケチを付けられてしまった。

なにかというと、甘いたれ。
本当は、毎度書いているように、穴子の煮汁を
煮詰めたもの、なのだが、
実は、先日、あんきもを甘辛く煮た。
この煮汁を煮詰めて、足しておいたのであった。
なかなか、内儀さんも敏感である。
わるくはないと思うのだが、あんきもはちょっとくせが
強かったので、別の味が付いているのである。

また、穴子を煮て、足しておこうか。






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