断腸亭料理日記2008
11月1日(土)夜
だいぶ、秋らしく、なってきた。
肌寒くなってくると、やっぱり、おでん、で、ある。
今年はまだ、で、あった。
私にはおでんといえば、お多幸、
なのであるが、今年は、まだいけずにいる。
今日は、作ろうか。
内儀(かみ)さんと二人であるから、
おでんを作っても、余ってしまうので
さすがに家では、あまりやらない。
毎度書いているが、今、おでんといえば、
皆、コンビニのおでんを思い浮かべる、ことであろう。
澄んだ出汁。
おでんというのは、東京が発祥で、あろう。
おでんの元々は、ご存じのように、
豆腐やコンニャク、里芋などを、味噌で食う、田楽であった。
江戸にも、この食べ物は屋台だったり、
さほど気取らない、飯やとしてあった。
(茶飯、あるいは、菜飯と田楽というのが、
一組であったようである。)
これが江戸末期、煮込むようになり、
煮込みのおでん、と呼ばれるようになったらしい。
この頃は、まだ味噌味であったという。
(煮込みのおでん、といういい方は、落語にも出てくる。
なにかというと、お若伊之助。)
明治に入り、味噌味から、他の煮物と同様のしょうゆ味に。
業態は、やはり、屋台か飯や。
(屋台のおでんも、落語に出てくる。
思い付くのは、替わり目。長屋に回ってくる。
志ん生師のものを思い出す。
それから、ちきり伊勢屋。これは圓生師。
夜、道に出ている屋台。
駕籠屋が、二人でおでんを食い、酒を呑み、茶飯を食う。)
煮込みのおでんは、明治になり、大阪へいき、
関東煮(かんとうだき)になり、料理やとしてのおでんや、が、
生まれたらしい。
先の、お多幸の創業は大正12年。
ちょうど関東大震災の年である。
この頃、大阪の料理人が東京へ進出するようになり、
大阪の関東煮と、屋台ではない、料理やとしての
おでんやを広めた、ということらしい。
(参考:紀文HP)
東京のおでんとして、澄んだ出汁のおでんと、
しょうゆで真っ黒なおでんと、どちらが正しいのか。
先の、歴史を見てみると、大正の頃には、既に、
関西風の澄んだおでんは、東京に入ってきていた。
浅草千束の大多福は創業がさらに古く大正2年という。
ここは、浅草にあるが、関西風。
そういう意味では、東京でも薄い色のおでんは、
そうそう新しいものではない。
一方、私は、若い人を含めて、東京下町で育った人々に、
今までに、おでんといえば、どっち?、あるいは、
家のおでん、はしょうゆ?というような質問をしてきた。
すると、やっぱり、しょうゆで黒い、と、答える人が
多いこともわかってきた。
両親の出身地にもよるのであろうが、
やはり、東京下町では、しょうゆで真っ黒、
東京伝統の煮物としてのおでん、が一般的であった
と、考えている。
しかし、まあ、しょうゆで真っ黒、な、おでんは、
今となっては、東京でもマイナーなもの、なのではあろう。
しかし、誰がなんといおうが、
(だれもなにもいわぬかもしれぬが、、)
しょうゆで真っ黒な、おでんは、うまいし、
私にとってのおでんは、これ、で、ある。
ゴタクはこれくらいにして、
おでんを作る。
買い出しは、田原町の赤札堂。
まず、野菜は、大根(半分)と、里芋も入れようか。
東京のおでんには、やはり里芋は欠かせないであろう。
八つ頭、などの場合もあるが、おでんには入れるもの。
(やはり田楽からの伝統であろうか。)
それから、練もの、のコーナー。
いきなり、練ものではないが、ちくわぶ。
東京の人であれば、説明の必要はなかろうが、
小麦粉で作った、ちくわ型のもの。
東京固有のもの。
それから、すじ。
牛筋ではなく、練ものの、すじ。
これも東京のもの。
なんでも、鮫のすり身、で、あったらしく、
おそらく軟骨が入っているのであろう。これが
スジッポイ、食感で、すじ、という名前、と、
勝手に思っているのだが。真偽のほどはわからない。
売られているときの形は、直径10cm弱の凹凸(おうとつ)の
ある、円柱型。これを輪切りにして入れる。
もう一つ、東京のおでん種といえば、はんぺん、なのだが、
これは、私はおでん種としては、あまり好まないので入れない。
(はんぺん自体は、嫌いではない。はんぺんであれば、
煮込むよりも、バターで焼いた方が、うまい、であろう。)
それから、つみれ。これも欠かせない。
さらに、焼き豆腐も。
豆腐でもよいが、煮崩れるので、焼き豆腐の方がよいだろう。
(だが、日本橋のお多幸の豆腐は、ぴか一、で、ある。
茶飯にのせて食う。)
あとは、ちくわと、揚げもの。
これらは、今、セットになっている袋があるので
これを。
こんなところで、よいだろう。
帰宅。
先ずは玉子。
これも欠かせない。
3個ほど茹でる。
里芋は、鉄(かな)だわしでごしごし洗い、
大きめの一口に切る。
大根は皮をむき、輪切り。
面倒なので、面取りなどはしない。
まずは、煮えにくいものから。
大きな鍋に、大根、里芋、ちくわぶ。
水を入れ、煮立て、弱火。
ある程度煮えたら、しょうゆ、酒。
むろん濃く。
ここで、味の染み込みにくいもの。
玉子、焼き豆腐を入れる。
しばらく煮て、残りを全部入れる。
あとは、煮込むだけ。
味が染み込むまでに、結局、1時間ほど。
よいだろう。
おでんといえば、菊正宗の燗酒、で、ある。
最初の一皿は、ちくわぶ、すじ、焼き豆腐、つみれ。
ちょうどよく、煮えた。
ちくわぶ、も、焼き豆腐もよい。
二皿目。
大根、玉子、里芋、ボール。
大根もよく煮えた。
内儀(かみ)さんはまだ帰ってきておらず、一人。
大量にできてしまったが、
そうそう一人で、たくさん食べらもしない。
しばらく、食べ続けねば。
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