断腸亭料理日記2008

江戸東京博物館・浅草今昔展他、雑感

11月2日(日)

今日は、午後、ちょっと、江戸東京博物館へ。

今、特別展で浅草今昔、というのをやっている。
これは、まあ、見ておかなければ、ということである。

両国までは、歩いて行ってもよいのだが、
帰りに、御徒町に回ろうと思うので、今日は、自転車。

元浅草から、まっすぐ東へいって、厩橋を渡り、
清澄通りを南下。石原の交差点の先、右側、
第一ホテルがあって、江戸東京博物館。

ボストン美術館の浮世絵展もやっているので、
ついでにこれも見る。

入ってみると、浮世絵展は、たいへんな人である。
浮世絵には興味がないわけではないが、
列に並んで見るのは、時間もかかるので、
さーっと見て、出たところで、図録を買う。

しかし、これならば、最初から、図録を買えばよかった。
また、NHKで番組もやっていたが、門外漢には
ただ本物の絵や版画をみるよりは、
わかりやすい。

浮世絵や版画は実物を見ると、それなりの感動は
あるのだが、いわゆる絵画などと比べると、実際には小さいもの
なので、なんとなく、ふーん、という感じである。

富嶽三十六景にしても版画などは、手に取って見たもの
なので、大きいものではないのである。

従って、かなり近寄らないと鑑賞にはならない。
今回のボストンのものは、保存状態がよく、
色が残っている、ということだが、これも近寄らないと
実際のところはわからない。

そんなこんな。今の技術で、デジタル処理された
きれいな印刷物、NHKのテレビ画像。
さらに解説も付いている、方がよい、とも思ってしまう。

さて、浅草今昔の方。

展示は、浅草寺の宝物やら、猿若町の芝居町、さらには六区の
浅草オペラ、三社様の神輿、、。

三社様のお神輿はまあ、見慣れたもの。

浅草の歴史、というのは、いわば庶民の歴史、
といってよいのだろう。

震災や戦災で焼けてしまったものも多いのかもしれないし
庶民の歴史は、あまり形に残るものではないのかもしれない。
残っているものでも、例えば、エノケンやらの、
浅草オペラの古いパンフを見ても、なんとなく、ピンとこない。

つまり、庶民の歴史は物ではなく、そこにいた
人々が見えないと、なんとなく実感がわかないのである。

オペラであれば、どんな人々が、どんな場所で、どんな雰囲気で演じ、
どんなときに、どんな人々が、誰と、どんなふうに、どんな格好で、
見にいって、どんな感想を持ち、泣いたのか、笑ったのか、、。

そんなものが見えてこないと、実感がわかないように思う。

また、浅草には、オペラやら、芝居など、ある程度
表の歴史に残せるもの以外にも、たくさんの庶民の歴史がある。
前に、十二階下の魔窟などとも呼ばれた、銘酒屋、のことなど
少し書いたことがある。

(十二階というのは、凌雲閣(りょうんかく)というのが
正しい名前だが、今の花屋敷の西側あたりに震災まであった、
当時の高層ビル、浅草のランドマークであったもの。)

十二階の模型などは展示されているが、
浅草の花柳界なども含めて、こういうものは、
表の歴史には、まず、残されていないものである。

あるいは、吉原などは、まだ歴史に残されているが、それとても
残せる部分が残っているだけで、実際にそこにいた人々の
生の姿、のようなものは、なかなか表には出てこない。

こういうものは、価値のないもの、いや、もっというと、
隠蔽したい歴史、と、いうことなのでもあろう。

しかし私には、それも大事である、と思うし、
それも、私達の歴史なのだと思う。

そういう意味では、生のものは、物ではなく、書かれたもの、
文章にあたらないと、わからないのであろう。
あるいは、落語のような口承文芸も生の庶民を伝えているもの
と、いってもよいかもしれない。
そういう意味で、私は落語というものの価値をとらえてもいる。

ともあれ。

博物館というものは、物を展示するところであるから、
まあ、そういうもの。
一つ、おもしろかったのは、ふさ楊枝。

浅草、特に浅草寺の仲見世やらには、錦絵にもなった、
きれいどころを置いた、いわゆる茶店と並んで、たくさんの楊枝屋があった。
(これは地図が展示されていたが、境内や、仲見世のほとんどは
この二つの業態で占められていた。)

例えば、池波作品でも仕掛人藤枝梅安に出てくる、
彦次郎は、浅草北部、塩入土手に住み、このふさ楊枝を作る、
腕のいい職人であった。
また、落語にもふさ楊枝は出てくる。
(例えば、明烏。一夜明けて、ふさ楊枝を使うシーンがある。)

実物を再現したふさ楊枝が展示されていたのだが、
今の楊枝と比べると、ずいぶん大きなものである。
(10cm程度もあるものもあったであろうか。)

柳などの柔らかい木を使っているというが、木の棒の
先端部分を広げ、細く、ちょうど刷毛(はけ)の先というのか
文字通り、房(ふさ)のように細かく削ったものであった。
これで、歯を磨いた、という。
これは物を見なければわからないものである。

(ともあれ、浮世絵にしても、浅草今昔にしても、
図録の方はまだ読んでもいないので、読んでみれば
もう少し、違うものが見つかるかもしれない。)

夕方、見終わって、一階のミュージアムショップへ。
ここもなかなか繁盛である。

書籍だけではなく、様々な、いわゆる、江戸グッズを売っている。
私も、手拭いを二本買う。

やはり、今、江戸ブームは続いているのであろう。
東京に生まれ育ったものとして、東京の昔や、
江戸に興味を持ってくれる人々が少なくないことは、
素直に、喜ぶべきこと、なのであろう。

しかし、いい商売ではある。
ある種、ここ、江戸東京博物館は、実物大の日本橋やらあり、
江戸東京テーマパークなのであろう。
そういう雰囲気を味わうと、なにか記念のものを買いたくなる。
で、あれば、ディズニーランドではないが、江戸趣味、東京趣味の
食いものやなども、もっとあってもよいようにも思う。
(以前は、確か、八百善が入っていたこともあったか。)

ともあれ。

再び、自転車に乗り、今度は、国技館側へ出て、
隅田川沿いの道を北上し、厩橋。渡って、御徒町を目指す。







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