断腸亭料理日記2008
6月22日(日)夜
今日は一日、雨。
梅雨らしい、というべきであろうが、
やはり、うっとうしい。
こんなときは、シャキッと、辛い
インドカレーはどうだろうか。
ちょうど、昨日の、チューボーですよ!、で、やっていた。
インドカレーといえば、私の得意料理の一つといってよい。
私のインドカレーは、学生時代にさかのぼる。
25年以上も前の話、で、ある。
当時でも、東京の街にはインド料理の店や、
インドカレーの店はあり、食べに行き、
好きになっていた。
これを自作してみたい、と思ったのだが、
こうした、ばらばらのスパイスから、本格の
インドカレーを作る、というレシピは
本屋へいっても、ほとんど出ていなかった。
ほうぼう探し、最後には大学の図書館で見つけ、
メモをし、作ってみるようになった。
当時のことであるから、クミンやガルダモン、
フェネル、といった、単体のスパイスなども
スーパーでは売っておらず、新宿の高野まで、
探しにいった記憶もある。
レシピに沿って作ってみても、最初は辛すぎたり、
塩が入れ足らなかったりで、
なかなか食べられるものができなかった。
しかし、それでもなん回か試行錯誤をし、
大学を卒業するまでには、そこそこ食える、
インドカレーらしきものが、できるようになった。
さて、今日は、大きな違いはないのだが、
先の、チューボーですよ!の、ホールのスパイスを
油で炒め、あわせてからあまり煮込まない、
というのをやってみよう。
雨が降っているが、切れていたクミンなど、
スパイスを買いに出る。
帰宅し、作る。
まずは鶏肉。
冷凍庫にあったものを解凍し、一口に切る。
これに、下味を付ける。
塩、おろしたにんにんくとしょうが、ターメリック、
レッドパッパー、油をかけ、もみ込んでおく。
米も研いでおく。
玉ねぎ。
今日はミキサーを使ってみよう。
1個半ほど、荒く切る。
にんにく、しょうがも切り、ミキサーに少量の水を入れて
粉砕する。
これを耐熱の皿に入れ、サラダ油を少しかけて、レンジ加熱。
本来ならばフライパンで炒めるのだが、
そのショートカットである。
最終の仕上がりとして、狐色まで炒めるのだが
これがたいへん。
ショートカットといっても、時間はかかる。
ついていなくてよい、というだけ。
水を足しているので、水分を飛ばすだけでも、
時間がかかる。
様子を見ながら、20分を2回。
このくらいで、色も付き始め、濃いペースト状に
なってきた。
ここから、テフロンのフライパンに移し、
ごく弱火でさらに炒める。
面倒だが、玉ねぎを狐色まで炒めることだけは
カレーにはどうしても必要、で、ある。
適当にやめてしまうと、味が違う。
炒まったところで、これは置いておく。
このあたりで、ご飯も炊き始める。
別のテフロンのフライパンに油を敷き、ホールのスパイスを炒める。
今日使ったのは、ローレル5〜6枚、
手で多少細かくしたシナモンスティック2本、
グローブ小さじ1.5ほど、フェネル、オレガノ、
コリアンダーシード、フェネグリークリーフ各同量、
といったところ。
ホールのスパイスを油で直接炒めるのは、
香りを引き出すため。
また、別の鍋に、下味をつけた鶏肉を炒めておく。
炒めたホールスパイスのフライパンに
最初の玉ねぎペーストを合わせ、馴染ませる。
ここに、ホールでない、スパイスを入れる。
ターメリック、レッドペッパー、クミン、
S&Bのカレー粉(赤缶)。
クミンは小さじ1.5ほどで、後は、大さじ1が目安だが、
辛さの調整は、レッドペッパーの量を加減。
ターメリックは、色。
鍋に移しホールトマト、これもミキサーでつぶしたもの、
水、炒めた鶏肉を入れ、煮たてる。
ブイオン1かけら、
最後に味をみながら塩を入れる。
トマトとのバランスで色が赤くなるので、
ターメリック、カレー粉を足して、調整。
煮込むのは5分ほど。
できた。
らっきょ、なども出す。
いつも作るものよりも、水分が少なく、ミキサーをかけているので
粘度が高い感じに仕上がった。
また、煮込んでいる時間が少ないので、
スパイスの香りも強いかもしれない。
しかし、今回、いつもと少し違う作り方をして、改めて、
思ったのだが、インドカレーというものの奥深さ、で、ある。
スパイスの量や組み合わせ、玉ねぎをみじん切りにするのか、
今日のようにミキサーにかけるのか、水分の量、煮込むのか、
煮込まぬのか、で、ほとんど材料は同じでも
味が随分と違ってくる。(今日は作り方が違うだけで、
使うスパイスや材料は、いつも作るものと全く同じである。)
また、植物油ではなく、バター(それを溶かしたギー)を
多量に使うかどうか、でも、味は変わってくる。
さらに、私は入れないが、ヨーグルトや、今日のレシピにもあった、
ココナッツミルクを入れても味はむろん違ってくる。
インド料理レストランで食べても、店によって
やはりなかなか同じ味、というのには、
お目にかかれない。
日本の料理を考えてみると、なんでもよいのだが、
肉じゃがであったら、日本全国、誰が作っても、
大幅に違う味にはならない。
日本の料理は、基本的にはしょうゆ味。
しょうゆ味と、素材の味、ほぼこれで決まってしまう。
その中で微妙な違いはむろんあるのだが、
インド料理の味の幅広さに比べたら、誤差
といってもよいほどであろう。
別ないい方をすると、
日本料理は素材のバリエーションで食べる料理で、
インド料理はスパイスのバリエーションで食べる料理、
ということになるのかもしれない。
ともあれ、驚くほど複雑で奥の深いインドカレー。
日本人の料理のイメージとはベクトルがまったく違っている。
おもしろいものである。
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