断腸亭料理日記2008
引き続き、箱根・塔ノ沢の福住楼、一夜明けて、二日目。
1月13日(日)
朝起きたのは、8時前。
朝飯は、8時半から。
日本旅館というもの、あたりまえのことであるが、
朝、食事前に、布団を上げてくれる。
上げるのもそうだが、前の晩、敷いてくれるのも、むろん
やってくれる。
これが驚くべき早業。
番頭さんと、部屋担当の仲居さんがきて、二人で、さ、さっと
瞬く間に、すんでしまう。
普段、日本旅館などに泊まることは皆無である筆者には、
あらためて、らしさ、を感じる場面、で、ある。
(もっとも、家ではベットであるし、畳の上で、
布団に寝るのすら、滅多にない。)
考えてみれば、布団の上げ下ろしだけではない。
伝統的な日本の旅館が、ホテルと違うところは、
ほとんどのことを部屋でする、ということである。
布団を上げて、その後の食事も、部屋でする。
いや、その前に、まず、宿に到着し、部屋に案内されると、
ここで、いわゆる、ホテルでいうチェックイン手続きはする。
担当の仲居さんがきて、挨拶。
世間話をしながら、出された宿帳をつけ、
ぽち袋に用意してきた心づけなども渡す。
日本旅館の多くのサービスは、仲居さんなどが、
部屋に、どんどんと入ってきて行われる。
(むろん、きちんと声を掛けてから、入ってくるし、
福住楼は、次の間のある部屋も多く、ダイレクトに
部屋に入れない仕組みになっている。)
また、昔の日本旅館には、高級なところでも、
部屋に鍵などは付いていなかったのだろう。
今、福住楼もそうだが、部屋の戸には簡単な鍵は
付いている。しかし、筆者らなどもそうだが、基本的には、
あまり皆、戸締りはしないだろう。
欧米風のサービスに慣れている若い人などは、
なんとなく無用心のような、あるいは、無遠慮な感じもするだろう。
筆者もここに来るようになった当初は、そんな気もしたのだが、
今は慣れ、開けっ放し、で、ある。
昔の旅の宿屋などでは、ごまの蠅、などという言葉もあり、
泊り客のなかで、こそ泥のようなことをする者もいたようだが、
やはり、そうしたことに、いたっておおらかな、文化なのであろう。
また、日本旅館では、宿に対して、客は戸を建てるよりも
ドーンと開けっ広げ、仲居さんやら、番頭さんやらに
任せた方が、より寛げる、と、最近は思う。
ともあれ、布団を上げてもらい、脇に座って、テレビなど見ながら、
朝食の準備を待つ。
次の間に片付けてあったお膳を移動させて、朝食を並べていく。
今日は、湯豆腐、の、ようである。
朝、湯豆腐をここではよく出してくれるのだが、
これは、冬には、よいものである。
鯵の開きも、温かいまま、運んでくれる。
他には、特段かわったものはないが、飯もよく炊けて、
味噌汁も、少し濃い目で、うまい。
食べ過ぎてはいけないと思いつつも、
二杯くらいは、食べてしまう。
さて、このまま、ごろごろ。
これが、同じ旅館で、二泊をするよさなのである。
一泊であれば、眠い目こすって、せっかくだからと、
大急ぎで、風呂にいって、飯を食って、会計をして、
とっとと、出ていかなければならない。
飯を食って、ごろごろして、9時ごろに、おもむろに、
風呂にいく。
ひとっ風呂浴びて、部屋に戻ってくると、
「お部屋の準備ができました」と仲居さんがきた。
昨日は団体が入って、満員だったので、
今日は、早川に面した部屋へ、移動、で、ある。
(むろん、値段が違う。)
桜の一番。
昨年と同じ部屋である。
次の間の二方がガラス窓で、早川が大きく見える部屋。
部屋が広くなった分、暖房で暖めるのも時間が掛かったりするのは、
まあ、仕方がないだろう。
そうである、ふと気が付いたのだが、ここは
炬燵(こたつ)というものを、置かない。
冬の旅館であれば、炬燵は普通、置いてあるであろう。
箱根の日本旅館がどこも炬燵を置いていないのだろうか。
そんなことは、なかろう。
しかし、この洒落た座敷には、
確かに炬燵は似合わなかろうと思われる。
昔であれば、火鉢が置かれていた、のであろう。
筆者、自宅でも毎度書いているが、炬燵はなく、
火鉢、で、ある。
これは、筆者の趣味、なのであるが、なぜであろうか。
今まで、炬燵は、なんとなく、だらしない感じがするから、
と、思ってきたののであるが、よくよく考えてみれば、
火鉢があっても、だらしない生活を十分に筆者は送っている。
(火鉢とお膳を置いて、その周りに、いろんなものを置いて、
立たなくてもよい、生活が、理想だったりする。)
火鉢とは?、炬燵とは?歴史的考察からしなければならないか、、、?
なにか、別の話しになってしまいそうなので、
これはこの辺でやめよう。
いずれにしても、この部屋のストーブの前に寝転がって、
文庫本を読みながら、昼前まで、ごろごろ。
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