断腸亭料理日記2008
今日は、昨日の続き。
会社帰り、左内坂の、ラーメンや、麺や庄の、に寄る。
昨日は、左内坂に江戸の頃あった、定火消屋敷のことなどに触れた。
今日は、八幡様のことなど。
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4月18日(金)夜
再び、昨日の地図をご覧いただきたい。
今度は昨日の、定火消屋敷の反対側、
左内坂に向かって左側にある市谷八幡。
これは、隣に、予備校の駿台などがへばり付いているが、
今でもちゃんと、この場所にある。
町名は坂が市谷左内町で、八幡様は、市谷八幡町。
市谷八幡は、正確には、亀岡八幡宮という。
映画監督の周防正行氏とバレリーナの草刈民代氏が
結婚式を挙げた場所、というのを知っている方も
少ないかもしれない。
この神社の歴史は、実際のところ、古く、由緒も正しい。
その起源は、なんと、徳川様の前の江戸城主、
かの、太田道灌の頃。
室町時代である。
太田道灌は当時の室町幕府の関東管領、
扇谷上杉家の武将として生まれ、江戸に城を
築いたわけである。
この時、現在も残る、赤坂の日枝神社、麹町の平河天神、
などとともに、この、市谷亀岡八幡も鎌倉の鶴岡八幡宮を勧請し、
この地に祀ったという。
(そこで、“亀”岡、なのであろう。)
この当時から、江戸鎮守という意味があったのである。
その後、戦国の時代を経て、荒廃していたものを
江戸に徳川家康が幕府を開き、その後、家光をはじめ、
将軍家が江戸鎮守として、庇護をし、賑わいを取り戻した、という。
「境内には、茶屋、芝居小屋、相撲小屋、仲見世、
露店が軒をつらねて並び、終日にぎわった」(八幡宮HPより)。
こんなことは今の静かな亀岡八幡からは、
想像もつかない情景ではある。
さらに、この門前は、一時は、岡場所
(吉原などの公許の遊郭ではなく非合法の遊所)として
名を馳せたこともあったようである。
時代としては、吉宗の享保時代の後から始まり、
寛政の改革で取り払いになるまでの百年程度の間で、
さほど長いことではなかったようである。
物の本によれば、田沼時代の安永年間には
山手の「高級地」であったという。
また「傾城と地女をひっくるみ」にしたような、
などという形容もされていた。
(素人っぽい、というようなことであろうか。)
かなりの余談だが、市谷八幡の岡場所の値段は、
「十二匁(もんめ)の妓代」という。
これは一両の1/5、である。
この頃の吉原の最上位の花魁(呼出)の揚代が
一両一分(宝暦以降)、であったのと比べると、相当に安く、
格式で売っていた吉原と違い、「高級地」などといいながらも、
気軽な場所、ということであったのかもしれない。
(さらに蛇足だが、とても大雑把には、1両は、現在の貨幣価値で
6万円程度のイメージである。)
ともあれ、どちらにしても、この頃というのは、
ちょうど、剣客商売の秋山小兵衛さんの時代であり、
また、蜀山人大田南畝先生の活躍した頃の話である。
江戸でも“いい時代”で、あったのかもしれない。
ともあれ、そんな歴史のある市谷亀岡八幡ではある。
そして、今もって、市谷界隈の鎮守ではある。
私の勤める会社でも、正月、仕事始めの朝、社長をはじめ、
幹部が揃って初詣に出かける場所でもある。
また、江戸の頃の市谷八幡には
もう一つ大切なものがあった。
時の鐘、で、ある。
江戸の町々に、時を告げる鐘は、江戸市中、諸方にあった。
主なもので、日本橋石町。
上野の山、浅草弁天山。
それから、芝の切通し、本所横川、
そして、この、市谷八幡、で、ある。
この市谷八幡の鐘は、周辺の牛込、麹町の山手の町々に、
時を伝えていたのである。
上野、浅草、新宿は同じ場所に、日本橋石町は移動しているが
往時の鐘が現存している。
そしてここには、今は、なにも残っていない。
さて、さて、こんなところで、
市谷左内坂界隈については、やっと終了。
明日は、麺や庄の、の、こと。
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