断腸亭料理日記2007

神田猿楽町・蕎麦・松翁

9月1日(土)第二食

さて、油揚げの煮たの、で朝飯を食って、
今日は、ちょっと片付け物があり、オフィスへ。

東京もやっと、多少涼しくなってきたので、自転車で行こう。

11:30。
元浅草の拙亭から30分ほどで、牛込市谷のオフィスに着く。
猛暑の頃は、まったく自転車など、乗る気にもならなかったが
やっと少しよい季節になってきた。

仕事を片付け、14時過ぎ、オフィスを出る。

今日は、神田猿楽町のそばや、松翁へいってみようと
思っていたのである。

趣味そば研究(?)のため、元祖、とも思われる
松翁に、7月14日、いったのであった。

しかし、予想は大きくはずれた。
思いがけず、よい店であった。
(ここは、池波先生が晩年よくいっていた店であるが、
実名がきちんと作品中に明記されていないので
晴れて、筆者は“池波レシピ”と定義はできないと、
思ってはいる。)

こんなよい店であるのなら、もっと前からいってみるのであった、
というのが、正直な印象であった。
土曜日は16時までやっている。

外濠通りを飯田橋まで行き、JRをくぐって、エドモントの脇を抜け
歩行者用の橋で、日本橋川を渡り、三崎町、路麺の名店、とんがらし

土曜日もこの時間はやっている。
一瞬、ここに入ろうか、、迷うが、やはり予定通り、素通り
松翁にいかねば。
白山通りを渡り、日大経済学部を脇を抜け、猿楽町。
カトリック神田教会の古い石造りの教会建築を横に見て、
路地を左折、さらに、路地を右に入る。

間口はほんの小さな店、で、ある。

入ると、昼の人は引け、一人二人。
やはり、蕎麦屋はこのくらいの時間がよいのであろう。

「どうぞ」、というので、一番奥のテーブル席に座る。

まずは、生のエビスビールをもらう。


涼しくなったとはいえ、自転車をこいできたので、
ビールがうまい。
そば味噌のお通しももらう。

さて、そばは、なににしようか。

やはり、ここは、ご店主自らが揚げ、
手づから、テーブルまで運ぶ、天もりしかあるまい。

二色天もり。
変わりそばと、ノーマルなそばの二色。
今日の変わりそばは、唐辛子切り、ということ。

天ぷらは、定番の車えびが入ったもの以外に、
なにがあるかと聞いてみると、(前回は鱧を食べた)
ハゼ、キス、メゴチ、というのがあるよう。
これを頼む。

そば味噌を舐めながら、ビールを呑んで、待つが、
のどが渇いており、あっという間に、呑み終わる。

ここは、酒も充実している。
昼間っからであるが、天ぷらもくるし、一杯呑もう。

静岡の開運が¥550という、ここでは安い値段。
吟醸香の強い酒で、筆者は前から呑み慣れている。
これをもらう。

呑んでいると、天ぷらがきた。
やはり、ご店主が箸を持って、運んでくる、

紅葉ののった皿に、まずは、キス。

塩で。

ちなみに、ここは、別にお金を取られるが、
天つゆももらうことはできるようである。
お金を取るとはいえ、やはり、こういうところが、
この店のよいところであろう。

そばつゆも、濃い目と、薄目を選べるのも然(しか)り。
「うちは、こうです!」それに賛同しない人は
きてくれなくてけっこう、というような、
趣味そばにありがちな姿勢はどうも“居心地”が悪い。
(むろん趣味が合えばよい。しかし、基本的には、
彼ら趣味そばは、筆者の好きな濃いつゆやその他もろもろの
東京老舗蕎麦屋へのアンチテーゼとして、存在している
やに見えるので、趣味が合うことは稀、で、ある。)

メゴチ。


ほんの少しであるが、薩摩芋、銀杏。

ハゼ。


前回同様、どれもとても軽く揚がっている。

キス、メゴチ、ハゼ、と、いえば、江戸前天ぷらの
代名詞ともいえるネタ、で、あるが、こうして軽く揚げ、
塩で食う、というのも、これはこれで、うまい。
(天つゆを頼むと、どんなものがくるのであろうか。
車えび、などであれば、塩はよい相性であろうが、
今度、こんなネタで天つゆも試してみようか。)

さて、そばがきた。


パスタのようにも見えるが、橙色のものが唐辛子切り。
筆者、このような変わりそばは、普段ほとんど食べない。

これは思ったほど辛さはない。
更科のような白い粉に唐辛子を入れているように思われる。
さわやかで、うまい。

ノーマルなそばも、むろん、うまい。
一気に食ってしまう。

勘定は、¥3000ちょい。

天ぷらもそばも、どれも一級品。
しかし、実のところ、それだけではない。

結局、なにが違うのか。
手づから天ぷらを運んで、お客の皿に出す、ご店主。
このご店主の真摯な姿勢に尽きる、のであろう。

へんに格好を付けず、いや、格好を付けることを
むしろ、よしとしない、のかもしれない。
飾らず、しかし“気持ちよく”お客に、うまいそばや天ぷら、
酒を出すことに集中している。
そんなふうに、見える。

これを、よいそばや、と、いうのであろう。


松翁
住所 東京都千代田区猿楽町2−1−7 
03-3291-3529





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