断腸亭料理日記2007
9月15日(土)第二食
午前中、歯医者。
そばが食いたい。
久しぶりに、アメ横の魚屋をのぞきがてら、
池の端藪へいってみようか。
今日も暑い。
麦わら帽子に、短パン、雪駄を履いて、1時半、歩きで出かける。
清洲橋通りを渡り、キムチ横丁。
昭和通りを渡り、AM/PMの路地に入る。
丸井の裏、上野藪。
こちらでもいいか、とも思ってはいたのだが、
驚いたことに、列ができている。
TVかなにかで、やったのであろうか。
素通り。
左側に立ち呑み、たけおか。
少し先、右側に同じく、肉の大山。
海苔屋のガード下に入る。
両側にガード下の呑み屋。
こんな時間であるが、にぎわっている。
その隣が、餃子のうまい、昇龍。
こちらも数人待っている。
ガードを抜け、角にまぐろのどんぶり屋のある路地から、
中央通りに出る。
左に折れ、ヨドバシカメラの前を通り、
中央通りを渡る。
池之端仲通りに入る。
昼間くるのは久しぶりかもしれない。
土曜日のこの時間、人通りはさほど多くはない。
通りのずーっと、奥。
左側、池の端藪、で、ある。
店の入り口右側に、ちょっとした植木の植え込みがある。
苔むした石に、噴水のように、水がちょろちょろと
かけられ、涼しげ、で、ある。
元浅草から、ここまで歩いてくると、さすがに汗が吹き出る。
二時過ぎ。
土曜日の昼の営業は、三時まで。
この時間であれば、さほど混んでいることもあるまいと
思い、きたのだが、戸を開けて、のぞいてみると、ほぼ満席。
テーブル席に相席で座る。
扇子で、パタパタ。
まずは、お酒、冷で、もらう。
つまみは、はしらわさび。
四角いお盆に載せられて、お酒がくる。
小鉢に入れられた、そば味噌。
白い一合の銚子は、塗りの一合枡を袴にして載せられている。
そして、はしらわさび。
はしらわさびとは、小柱の刺身。
小鉢に入れられ、細く切った海苔がまぶされている。
小皿にわさびと、一人用の、ほんの小さなしょうゆ挿しが付いてくる。
これら、四角いお盆の上の、酒とつまみ。
これが、酒呑みにとっては、自分の箱庭のような、
ある一つの、かけがえのない、酒呑み空間、のように思われるのである。
蕎麦屋で、こうしたお盆に載って出てくるところは多い。
しかし、ここ、池の端藪の、このお盆の上の空間は
器や、それぞれの中身が、いずれも吟味され、乙。
かけがえなく感じさせるのは、これらが、池の端藪の歴史に
裏打ちされているからなのかもしれない。
同じものを集めても、昨日今日できぼしの、蕎麦屋では、
出せない空間、ということかもしれない。重みが違う。
これがここの値打ち、である。
はしらわさびで、菊正宗を、呑む。
さて、そば。
なにがよかろう。
さっぱりしたものがいいか。
おろしそば。
なん回か食べている。
こんもりとしたおろしに、茹でた芝海老が添えられている。
つゆを全部入れても、おろしの方が多い。
おろしは、辛味大根ではなく、通常の大根おろしで
辛すぎない。
そばを、おろしにたっぷりとからめて、食う。
ぺろっと食って。
勘定。
忙しそうなので、立っていき、勘定をする。
うまかった。
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