断腸亭料理日記2007

落ち鱸(すずき)

10月7日(日)第三食

さて、鶯谷の公望庵という蕎麦屋から、
上野公園に自転車で上がる。

西洋美術館ではムンク展をやっている。
国立博物館までくると、大徳川展という看板が目に入る。
10日から、らしい。

徳川宗家、尾張、紀州、水戸などの全徳川家の宝物を一堂に集めて展示する、
と、いうもので、これは珍しい、と、いう。
(展示物をちょっと調べると、刀剣やら、着物、茶道具やらいろいろ
あるらしいが、筆者の興味では、徳川家康が任征夷大将軍に任じられた
宣旨、やら、大政奉還上意書、やらの、本物が展示されるらしい。
忘れなければ、見にこようか。)

自転車で、上野のお山をぶらぶら。

そうである。例によって、魚屋をのぞこう。
落ち鱸、鱸(すずき)が課題であった。

精養軒の脇から不忍池側に降りて、山下の交番。
三橋。中央通りを渡り、路地に入る。
人通りが多すぎるので、自転車は置いて、アメ横のいつもの
魚屋をのぞく。

鱸は、ない。
今年、豊漁の、鯖でもいいかと思うが、
刺身にはできないという。
あきらめ、吉池にいこう。

吉池にきてみたら、あったあった。
鱸、千葉産。(富津までであれば、江戸前、といってよいのだろう。)

大きいもの、半身で、¥1500、値段もいい。

思い切って、買おうか。
刺身と塩焼きだ。

帰宅。

夜に入り、作業を始める。


まずは、塩焼き用に、頭からふた切れ、切り身にする。

残りを刺身に。
洗い、というほどのことではないが、
切ったものを軽く冷水にさらそうと思い、ボールに
氷水を用意する。

洗い、で、あれば、かなり薄く切るのかもしれぬが、
そこまでの技術はない。
2mm程度の厚みで、切り口を大きくするため、包丁を寝かせ、
斜めに刃を入れていく。皮まで到達したら、さらに寝かせ、
皮との間を切り離す。

切ったそばから冷水に入れるが、長時間入れておくのも
いけないであろう。すぐに上げ、ペーパータオルの上に
のせ、水を切る。
全部を切り、ペーパータオルのまま、
一度、冷蔵庫へ入れておく。

さて、塩焼き。
きょうも、炭で焼こう。

とはいっても、昨日の反省。
炭は、カンカンに熾さない。

じっくり焼こう。


鱸は、秋刀魚のように、ポタポタと脂は落ちてくるわけではないので、
黙って見ているだけでも、よいような感じである。

焼き上がり。


刺身も盛り付ける。


やはり落ち鱸、
とちらも見た目以上に、脂がある。

塩焼きは、鱸独特の、身の香りがポイントであろう。
あまみのようなものを感じさせる香り。

刺身。
これもかなり、うまい。
ちょっとあまみのある脂で、大げさなかもしれぬが、
とろけるようである。
脂があるといっても、ベトベトではなく、
上品な脂というのであろう。

半身で¥1500。塩焼きに刺身。
安くはないが、大満足、で、ある。






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