断腸亭料理日記2007
5月3日(木)夜
めずらしく、と、いうべきか、今夜はイタリアン。
内儀(かみ)さんの希望である。
深川の深川。最寄は門中(もんなか、門前仲町。)。
パッソ・ア・パッソ、と、いう店。
かなり有名らしい。
先日、行こうと思う当日、予約をしようとしたが、
だめであったことがあった。
今日は、内儀さんがTELをすると、当日であったが空いていた。
19時の予約。大江戸線で向かう。
新御徒町からは、五つ目。
歩きも入れて、20分ほど。
清澄通り沿い、交差点から、北へ向かい、赤札堂を越え、
首都高の下を抜ける。
この首都高の下は、十五間川、または油堀と呼ばれていた堀であった。
大川(隅田川)から、八幡様などの裏を通り、木場まで通じていた。
埋め立てられたのは、昭和50年と、比較的新しい。
この首都高をくぐると、町名は、門前仲町二丁目から深川二丁目となる。
江戸の頃は、佐賀町代地、深川蛤町など。明治になって、深川和倉町。
すぐ右側、清澄通り沿い、ビルの一階。
入ると、なるほど、さほど広くない。
名前をいうと、一番奥へ案内される。
満席ではない。お客数で、5〜6組であろうか。
シェフお一人のため、このくらいの数に、
絞っているのであろう。
予約をしたときに、プリフィクスなのか、おまかせなのか、
決めるように、いわれる。
おまかせは¥6000で、プリフィクスは¥5000。
一品、数が違うらしい。せっかくであるから、おまかせ、にしておいた。
まずは、ビール、エビスの小瓶、を、もらう。
前菜
かわいく、三切れ。
フルーツトマトのテリーヌ、と、いっていたが、
ゼリーのようなものである。
白のグラスワインをもらう。
いか。
じんどういか、に、ほたるいかのスープでクスクスを炊いたものを
詰めたもの。下には、菜の花のソテー。
じんどういか、とは、ひいか、のことだと思われる。
(沼津産という。)
シェフが、小さい、いか、なんで、わたを抜いて、軟骨を抜いて、
詰め物をするのは、手間がかかるんですよ、といっていた。
なるほど、香りとうまみが小さいところに、十二分に凝縮されている。
菜の花も、とても繊細に火が通されているようである。
香りも食感もよい。
リゾット。
モロッコインゲンや、絹さやなど、5種類の緑の豆が入っているという。
米は日本の米だが、シェフ自ら新潟で栽培されているという。
上に、パルメジェーノ・レッジャーノチーズがかけられている。
これは、米の食感も、香り、味、、、かなりうまい。
このあたりまでで、気が付いてきたが、オイルなども少なく、
全体に薄味、で、ある。
素材の味を生かし、上品というのか、
かなり、繊細でデリケートな味付けをしている。
ぼんやり食べていると、ただ薄いだけ、という印象も受けてしまうので
気を付けなければいけない。
パスタ。
酒盗のリングイネ。
リングイネは細め、で、ある。
酒盗のパスタというのも、自分でもよく作るが、
まあ、自作のものなどと比べるのは、畏れ多いことだが、
まったく、酒盗のくさみはなく、さっぱりとし、
うまみ、だけが引き出されているのだろう。
ワインを赤にかえる。
ほろほろ鳥。
皮をむいていない、ホワイトアスパラ(香川産)が添えられている。
焦げ目がついているので、蒸し焼きにしているのであろう。
ちょっと、焼きねぎのような、甘みがある。
ほろほろ鳥は、なん回か食べている。
(詳細はこちらを参照されたい。)
岩手のものだという。
地鶏に似た味と食感であるが、地鶏よりもずっと、旨みを濃くした味、
と、いったらよいであろうか。
皮との間に、黒オリーブのペーストを挟んで焼いてある。
やはり、これも素材の味を生かす、という仕上げ、で、あろう。
ほろほろ鳥のコクのあるうまみが、堪能できる。
「チーズはいかがですか?」というので、もらってみた。
イギリスのブルーチーズで、スティルトンという名である、という。
添えられているのは、りんごを甘く煮たもの。
一緒に食べると、不思議とくさみが抑えられ、赤ワインとよく合う。
ドルチェ。
スターアニス(八角)で香り付けされた、パイナップルのソテー。
プラムなどのドライフルーツ。
グリーンピースのソース。
パッションフルーツのシャーベットに、ココナッツの焼き菓子。
シャーベットは、酸味が強く、爽やか。
終了。
シェフが調理場から出てきて、話をしてくれる。
(上に書いたのは、その内容で、ある。)
イタリアン、のはずだが、気が付くと、オリーブオイルも
トマトソースも、にんにくも、ほとんど、なかった。
なるほど、こういうイタリアンもあるのか。
いや、もはや、フレンチとか、イタリアン、というジャンルを越えて、
こういう料理、と、思った方がよいのかもしれない。
素材、味付けもとより、ワイン、チーズその他もろもろ、店の隅々まで、
シェフの繊細な目が、細かく行き届いている。
なぜここ、深川に店を開かれたのか、
聞いてみたいような気もする、そんな、店である。
TEL:03-5245-8645
住所:江東区深川2−6−1 アワーズビル 1F
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