断腸亭料理日記2007

根岸・笹乃雪から、、

豆腐に関する考察。

3月26日(月)夜

さて、今日は写真から。





これは、豆腐、で、ある。
金520円也。

いわゆる高級豆腐、というジャンルに入ろう。
近年こうした、高級、高額な豆腐は、まあ、一つのブームと
いってもよいのだろう。

しかし、この豆腐は、昨日今日、できぼしの豆腐やのものではない。
元禄4年、1691年創業で今年で創業316年。
根岸の老舗、笹乃雪のもの。

宮家御用達、と、書いてある。


弁当箱のような形である。
大きさは、20cm×12〜13cm×7〜8cmほどと、
でかい。

包装を開けると、プラスチックの文字通り弁当箱のようなケースに
二丁分はあろうという、大きな絹ごし豆腐が一丁入っている。

なぜこんなものを買ったのか。
筆者には、似合わぬかも知れぬ。

今でも多少はそう思っているのだが、
豆腐というもの、つい最近まで、たいしてうまいものとは
思っていなかった。
(そういう意味では、筆者は豆腐のシロウトである。
今日の、豆腐に関する考察、そのつもりで、読んでいただきたい。)

池波作品には、多数登場する。
先生も豆腐はお好きであったのだろう。

湯豆腐、奴はもちろん、江戸の食の演出としても、田楽

餡かけ豆腐、などなど、

いろいろやってみている。
しかし、正直のところ、味噌田楽なども
たいしてうまいものではない、というのが印象であった。

しかし、先年、牛込のオフィス近所のスーパーで
有名なものなのかどうかはわからなぬが、
富士山麓の忍野八海の豆腐、というのを買ってみて、
少し認識が変わった。

一丁¥100ちょいの値段。
まあ、安くもないが、高級豆腐という値段でもない。

しかし、これがかなり、うまかったのである。
味があり、あまいのである。

これ以来、スーパーに売っている、マスプロ(?)の
安い豆腐はだめだが、ものによっては、べらぼうに高いものでなくとも、
うまいものはあるのだ、という認識にはなったのである。

もともと、たいしてうまいとも思っていなかった筆者であり、
豆腐というものが、よくわからないのである。

そもそも、豆腐の味というものは、どこで決まるのか。
そして、値段である。

今日買った、根岸・笹乃雪、二丁分としても、一丁¥260。
片や、スーパーで安売りであれば、一丁¥50くらいの場合もあろうか。
5倍(?)もする。どうして、ここまで開きがあるのか。
むろん今日のは、ブランド、というのはあろうが、
豆腐というもの、根本的にどこで値段が決まっているのか。
よくわからない、のである。

豆腐の原料は大豆。
豆乳にし、これに、にがり、を入れて、固める。
作り方を書けば、そういうことになる。

よくいわれるのは、大豆の良し悪し、にがりは海水から取った、
天然のものを使う、そして、水がうまいかどうか。

では、スーパーの安い豆腐はなにが違うのか。
大豆が違う、にがり、が違う、水が違う。
機械で作るのか、職人の手作りなのか、、。
そういうことなのか?

まずは原料の大豆の品質、国産でよいものを吟味して
使い、そして、今日買った、笹乃雪のものは、3倍の濃さ、
と書いてあったが、豆乳が濃い。
これは、わかる。
確かに、値段としては、上がるであろうし、うまいのだろう。

豆乳が濃ければ、味が濃くなり、水っぽくもなくなる、
ということか。

(笹乃雪・ふたを開けたところ)


今日の、笹乃雪は、そのまま食べても、十分、あまいのだが、
ちょっと、しょうゆを垂らすと、べらぼうにあまく
濃い味に感じられ、まさしく、極上の味。
また、普通の豆腐は、置いておくと、どんどん水が出てくるが、
これは、硬いわけではないのに、水はほとんど出てこない。
なるほど、と、いうところである。

わからないのは、残りの、にがり、と、水。
そして、作る技術。

そんなに違うのであろうか。

日本酒、であれば、もう少し、わかりやすいように思う。
原料の米の種類とその精米度合いはむろんだが、杜氏という人がいて、
出来上がるまでには、なんヶ月かかかり、
長年の経験から会得された微妙な匙加減があって、
さらに、よい水の採れるところが、銘酒の生まれる条件という。

なんとなく、説明されれば、わかる、ような気がするのである。

これに対して、豆腐やは、昔であれば、町内に一軒はあった。
と、いうことは、誤解を恐れずに書くが、そんなに難しい、技術を要する
仕事ではない、のではなかろうか?
(重い、朝早いなど、労働として、
たいへんではあったろうが、そいう意味ではなく。)

そして、そう時間がかからずにできる。
これも一つである。
気温やら、水温はあろうが、出来栄えに影響する要素は
先の、日本酒造りに比べれば、少ない。

仮説である。
豆腐作りの技術は、マスプロで再現できないほど、
難しくはないのでは?と、いうこと。

そして、にがり、と水。
これも、もともと、日本全国、いろんな水があり、
にがりの成分も、いろいろであったろう。
うまいといわれる、豆腐の水とにがりをマスプロで再現するのも
そうは難しくはないのではなかろう、と、思うのである。

筆者の仮説の結論は、原料大豆の品質と濃さ、が違う。
本当は、そこで大方の価格(原価)が決まっているのでは?
ということ。
(笹乃雪のようなプレミアの付いたブランドは別にして。)


結局、筆者は、なにがいいたいのか、で、ある。

一、高い豆腐を無闇にありがたがるのはどうなのか。

二、マスプロでも、安くてもっとうまい豆腐ができるのでは?。

この二点、で、ある。

今日の、根岸・笹乃雪の豆腐は、はっきりいって、かなりうまい。
¥520の価値は、そのうまさと、老舗のブランド、看板に払って
相当であろう、と筆者は思う。

そうではなく、よくわからない氏素性(うじすじょう)で、
そこそこうまいが、¥200を超えているものが随分あるようだし、
売れてもいるようである。

そこへいくと、先に登場した、
忍野八海のものは¥100ちょいでも、十分にうまい。
良心的である。
本来、豆腐の値段は、このあたりまでが、
適正なのではなかろうか。
そして、こういう良心的な豆腐は、筆者が知らないだけで、
他にももっとあるのではなかろうかと思われる。

昔から豆腐は、酒の肴にもなり、飯のおかずにもなる、
安くて、うまい、庶民のものであった、はずである。

それが、今、安いものはまずい、よくわからなくて高いものが
よく売れている、というのは、妙なことではないか?
というのが筆者の問題提起なのである。

(もっと理屈っぽくいうと、今の豆腐は、今まで述べてきたように、
ブラックボックスになっている部分が多いのである。
つまり、なんらか、日本酒にはあるような、専門的にみても客観的で、
消費者にはわかりやすい、品質の基準のようなものが豆腐にも、
あってもよいのでは?と思うのである。(原料、製法、などなど。)
その上で、消費者、個人個人が食べてうまいのかどうか、
その値段で、適正かどうかを、判断できるようにしてはどうかと
思うのである。)


(奴と、同じく笹乃雪の厚揚げ、これは温めて、
しょうがじょうゆで。それから、鯛の刺身。)


そして、売り場で見ていて、
なぜだか、奴と一緒に、鯛の刺身が食いたくなった。

今日は東京は最高気温18℃と、暑かった。
そこで、さっぱりと、冷奴とビール。
そして、天然鯛の刺身。

うまかった。





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