断腸亭料理日記2007

銀座のR

7月29日(日)夜

さて、またまた、佐藤隆介氏の「池波正太郎への手紙」で、ある。

池波先生の「銀座日記」では、『銀座のR』と書かれている店。

高級中華料理の店、銀座コアビル最上、10階。


先日の日比谷の広東料理の慶楽
のところでも書いたが、先生は、中華も大好きであった。
それもたいていが、ビールに、シウマイや、春巻といった点心少しと、
焼きそば。

東京人の正しくかつ、伝統的な中華料理の楽しみ方、で、あろう。

香港、上海、北京などのネイティブな中国の中国料理の
楽しみ方、ではない。
あくまでも、日本の中華料理の楽しみ方、で、ある。
味も、香辛料や、香菜などがふんだんに入ったものではない。
日本人に合うようにアレンジされた、中華料理、で、ある。

そして、東京人、と、書いたが、
このようなメニューを普通に置いている中華料理店と、いうのは、
東京では、昔からあたりまえにどこの街角にもあるが、
日本国内でも、実は、さほど、あたりまえではない。

サラリーマンの昼飯、と、なると、
こうした中華料理屋で、チャーハンやら、餃子やら、中華丼やら、
焼きそばを食う、というのは東京では、ごく普通であろうかと思う。

しかし、筆者が名古屋転勤時代、名古屋には意外に、
こうした中華料理店、というのがないのに、驚いたと同時に、
寂しい思いをした。
他の地方が、どうなのか、はっきりしたことはいえないが、
東京ほど、あたりまえではないのではなかろうか。

そこで、「春巻にビール、焼きそば」は、
筆者は東京人らしい、中華の楽しみ方、と、
いえると思っているのである。

さて、「銀座のR」。

高級、ということで、あらかじめ、6時半、
一応TEL予約をしておく。

6時前、内儀(かみ)さんとともに
元浅草の拙亭を出る。
旧小島小学校で、参議院選の投票を済ませ、稲荷町の駅まで。

銀座線で、銀座。

コアビルは、銀座四丁目交差点、日産ギャラリーの中央通り沿い、
新橋側、隣のビル、で、ある。

エレベーターで、10階まで、上がる。
降りると、アンダーな照明で、ステータスを感じさせる。

名前をいうと、予約席と書かれた、テーブルに案内される。

と、ちょっとしたトラブルがあった。

隣のテーブルにお金持ち風の、お婆様を中心とする、
家族連れの先客があった。

筆者は、座るとすぐ、店員に「ここ、煙草を吸えますか?」と、聞いた。
「けっこうです」、ということで、灰皿を持ってきてもらい、
ビールと、ともに、吸い始めた。
すると、この隣のお婆様、露骨にいやな顔を始め、
店員に訴え、最終的には、彼らは、席を立ち、別のテーブルに
移っていった。
その上、筆者には聞こえなかったが、内儀さんがいうには、
息子らしい男が「クサイ、クサイ」と聞こえよがしに
捨て台詞を残して、いった、という。

これに関して、こちらでも、店に、
「向こうはあんな反応をしていたけど、いいんですよね?」
と、念を押した。
店のシステムとしては、分煙はしていないので、
「問題ありません」。隣のテーブルの『捨て台詞』については
「ちょっと、変わった、お客様で、、、、申し訳ありません、、」と
いうあいさつ。

こうした、高級、を、売り物にしている店では
逆にこのような俗物丸出し、
尊大不遜な客も少なくはないのだろうと、想像できる。

筆者など、面と向かっていわれれば、「ふざけんじゃないよ」
ぐらいの啖呵は切りかねないので、聞こえなくてよかった。

まあ、どちらにしても、お互い、気分の悪い思いをする。
分煙、してもらった方が、むしろよいのでは、と思われる。

せっかくきたのに、まったくもって、、、なのである。

しかし、すっかり忘れて、気分を替えて、で、ある。

注文は、先生に倣(なら)って、春巻二本と、海老の焼きそば、
チャーハン。内儀さんの希望で、ロメインレタスの炒めもの。


ロメインレタスというのは、よく、シーザーズサラダに使うレタス
であるらしい。


春巻。
これは、はっきりいって、べらぼうに、うまい。
むろん揚げ立て、皮はパリパリ。中はジュワッと、、。
なによりも感心したのは、皮がまっさら、一片も粉になって
崩れていない。
うつくしい、春巻で、ある。

海老の焼きそば


チャーハン



焼きそば、は、堅くも、柔らかくもできる。
筆者は柔らかい麺に焦げ目が付いているものを選んだ。

チャーハンも焼きそばも、どちらもうまい。


二人で、10000円。

『銀座のR』で、あった。





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