断腸亭料理日記2007
7月21日(土)第一食
鮎飯のこと。
もう二年も前になる。
池波正太郎先生縁(ゆかり)レシピとして、
鮎飯を作って、食い、それを書いた。
ここで、筆者は
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
塩焼きと、鮎飯にしたのであるが、
鮎ほど、養殖と、天然の差がある魚も珍しいのでは、なかろうか。
味がまったく違う。
天然ものは、はらわた、がまったく苦くない。
このため、本当に、頭から尻尾まで、そのまま食べられるのである。
前回は、この違いを、思い知らされた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
などと、書いている。
これを読まれた、秋田で、実際に鮎の養殖をされている方が、
ご本人は実は、天然鮎を食べたことはないのだが、
「天然鮎は、養殖よりも一般には苦い、といわれていますが
本当に、養殖の方が、苦いのでしょうか」という
疑問として、問い合わせをいただいた。
はて、困った。
筆者、そもそも、こんなことを書いているくらいであるから、
天然鮎の方が、はらわたは苦い、と、いわれてもいる、ということは
知らなかった。
では、まず、なぜ、こんなことを書いたのか、で、ある。
遥か、子供の頃の記憶にさかのぼる。
小学生の頃であろうか。
奥多摩であったか、秩父であったかへ、家族でいき、鮎を食べる
機会があった。
ここで、父は、「鮎というものは、きれいな川のコケを食べているから、
はらわたも、苦くないから、食べられる」と教えてくれた。
そして、実際に食べてみると、むろん苦いことは苦いのだが、
海の魚ほど苦くなく、子供にも食べられた。
また、身の味も、子供心にかなりうまかった、そんな記憶、で、あった。
30年程度前のことなので、まあ、この鮎は天然であったのであろう。
かなり強烈な記憶で、鮎(天然)のはらわたは、苦くない、
という、刷り込みが、筆者には、なされていたのである。
子供の頃の強烈な思い込みはおそろしい、ということかもしれない。
その後、鮎を食べる機会というようなものは、
ほとんどなく、成人し、成人後はさらに、天然鮎は貴重品となり
東京に暮らす筆者にとっては、、完全に、経験できる範囲外に
いってしまい、あえて、求めて食べる興味も
なくなっていった、のであった。
おそらく、この日記を書き始めて、銀座のいまむら
(いまむら、も、池波先生縁の店で、ある。)
へ行って食べたのが、久しぶりの体験であったのだと思う。
当然、うまかった。
このとき、はらわたが苦かったかどうか、正直のところ、
憶えていない。
そして、この鮎飯、を作ってみたのである。
この時は、魚屋で手に入る、養殖鮎で作った。
しかし、池波先生が、うまそうに書かれているほど、
うまいと感じなかった。
これは、分析すると、苦味というのもあろうが、えぐみ、雑味、
のようなものだったのではないかと思う。
塩焼きでも、養殖ものは、はらわただけでなく、身も
えぐみ、雑味を感じた。
これは、やはり、先の子供の頃の、鮮烈な記憶。
清流に泳ぎ、植物性のものしか食べないという、天然鮎。
その、身の美しさ、うまさのイメージ。
そして、それを背景にした、先年の、いまむらの記憶。
これと比べて、自分で焼いて、飯に混ぜ込んだ、養殖ものの鮎は、
かなり違っており、そのギャップが、印象として
強かったのではなかろうか、と、思われる。
そこで、養殖だから、苦い、という表現になったのである。
しかし、冒頭のようなお問い合わせをいただいた限りは、
天然鮎で、鮎飯を是非とも作って食べてみなければならない。
筆者、今、流行りの、いわゆる、お取り寄せ、は、ポリシーとして
普段はしないことにしている。
こうした行為を、いさぎよし、とは思えないのである。
しかし、この場合、しかたがない。
ネットで調べ、高知産、中型のもので500g、送料を入れて
5000円程度、を土曜の午前着で注文した。
(大型のものは、倍以上と、格段に高価であった。)
着くまでに、少し、鮎飯の作り方も調べてみた。
すると、焼く前に、腹を抜いておく、
と記された作り方もあることがわかった。
鬼平などの作品には、特段、そういう記述は、なかったのである。
むろん、あたりまえのことで、書くまでもなかったことかもしれない。
ひょっとすると、これが原因かもしれない。
それから、実際に味を比べるとすると、
その場で食べ比べた方がよかろう。
ということは、同時に、養殖ものも、買っておく必要がある。
前日、金曜の夜。浸水に時間がかかるので、あらかじめ、
米をとぎ、酒、しょうゆで、水加減をし、冷蔵庫に入れておく。
さて、土曜日。
朝から、高知からの宅配便が届くのを、今や遅し、そわそわして、待つ。
養殖ものを、御徒町の吉池に買いに出たいのだが、内儀(かみ)さんは
出かけており、宅配便を受け取る人間がいなくなってしまう。
11時過ぎ、待ちに待った、天然鮎の、宅配便が届いた。
発泡スチロールの冷蔵箱を開けてみると、ビニール袋に入れられた
天然鮎、が出てきた。開けて、手に取ってみる。
中型と書いてあったが、思いのほか、小さい。
稚鮎よりも、大きい、というようなことなのであろうか、、。
ただ、色は、養殖ものとは違うように見える。
箱を再度閉じ。
御徒町の吉池に自転車を飛ばす。
きてみると、養殖ものだが、やはり、なん種類かある。
(天然ものは、むろん、ない。)
なかで、和歌山産のもの、特大で250円、大型で一匹220円。
220円のものを、四匹購入。
帰宅。
開けて、天然と、養殖を並べてみた。
大きい方が、今買ってきた、養殖もの。
むろん大きさは一目瞭然にわかるが、写真に撮ってしまうと、色の違いは
微妙なものなのであろう。見た目には、随分違うのだが、写らない。
養殖ものの方が、より黄緑に近い明るい色で、
天然の方が、より黒っぽい色、で、ある。
長くなる。
今日はここまで。
明日はいよいよ、天然鮎の鮎飯にかかる。
乞うご期待。
☆お知らせ☆
あさって、7/25(水)、またまた、東京FM、断腸亭、生出演?!
TOKYO-FM 『Daily Planet』内
コーナー『Humming Bird』(月〜木、21時〜)
例によって、江戸のロハス、というようなお題のようです。
彼らのこと、また直前に予定変更の可能性はありますが、、。
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