断腸亭料理日記2007

浅草・うなぎ・小柳

12月9日(日)第一食

先週、ご近所のうなぎや、やしま、のなかで、
浅草、上野界隈のうなぎやについて、少し思うところを書いたのだが、
名の知られた店で、いったことのないところが一軒あったのに
気が付いた。

小柳。

ここは、数年前放送された、
NHKの朝の連ドラ「こころ」のモデルであるともいう。
中越典子が女将として、浅草の老舗うなぎやを継ぐ話であった。

浅草の老舗、有名うなぎやは、どんなところがあってどのくらいの創業か。

まず、先日挙げた、色川、初小川。
色川の創業は、幕末文久元年(1861年)、初小川は明治40年(1907年)。
他には、少し前に触れたが、隅田川沿いの、その名も、前川は。
正確な年代はわからないが、200年程度前といい、文化文政年間。
それから、雷門通りの旧仁丹塔交差点そば、田原町にある、やっこ。
(やっこの、「こ」の字が漢数字の「六」に似た、「古」をくずした字)
ここは、松平定信の寛政の改革で有名な、寛政年間。
寛政は1789年からであるが、ここが、もっとも古いことになろうか。
このやっこは、

のらくらとした奴もあり田原町

というような、川柳も残っている。
(奴さんは、しゃきっとしているものだが、
うなぎやのやっこは、うなぎなので、のらくらしている、、。
そんなニュアンスの川柳である。)

さて、小柳は。
やはり正確な年はわからないが、なんでも大正末、らしい。

浅草の老舗うなぎ屋が、軒並み、旧幕時代の創業であるのと
比べれば、むしろ、新しいじゃないか、という感じがしてしまう。
(それだけ、浅草という街が江戸期から、現代に至るまで
繁栄を継続している、と、いう証拠、で、あろうが。)

場所は浅草一丁目、オレンジ通りと仲見世の間の通り。
(天ぷらの大黒屋のある通りである。)
浅草公会堂のそば。

昨日と同様に、稽古がてら、昼前、徒歩で家を出る。

噺が30分ほどあるため、西浅草から、六区を抜け、
観音様の裏を通り、馬道まででて、再び仲見世あたりに戻ってくる。
観音様界隈は、日曜日であり、観光客でにぎわっている。
(実のところ、人の多いところは、歩きながらの稽古は
気が散って、やりにくいのではある。)

小柳到着。

二階建ての日本家屋。
曇りガラスの窓、入口もガラス戸。

開けると、一階はカウンターとテーブル席。
テーブルは6人掛けの大きめのもので、4〜5卓。
カウンターは、6〜7人。
ちょっと、広い印象。
二階は座敷。

そこそこ埋まっているので、相席で座る。

ビール小瓶と、うな重、肝吸いをもらう。

ビールを呑みながら、ぼんやりとあたりを見る。
店はむろん、戦後の建築であろう。
曇りガラスの窓が大きい。とくに凝ったところはなく、
どちらかといえば、簡素、シンプル。
逆にそれが、落ち着ける、かもしれない。

カウンターの向こう側には、そのまま調理場が見える。
広さの割に、というべきか、人数が多い。
40人入る座敷もあるせいであろう。

外は、ドラマ「こころ」のように、着物を着た女将
(で、あろうか)、と若女将が仕切っていて、
なかなか、行き届いている感じである。

お客は、この場所と、日曜日というのもあってか、どちらかといえば、
遠くから来ている人の方が多い様子である。

きた。

テーブルに置かれている山椒。やげん掘のものである。
(やげん掘といえば、赤い缶の七味が有名であるが。)
お重のふたを取って、かける。
ちょっと、山椒の挽き方が粗く、よい香り、で、ある。


なかなか、うまいが、ちょっと、甘め、で、あろうか。
しかし、むろん水準以上。

お新香も、肝吸いも、よい。

うまかった。

ここは、いわゆる、帳場や、レジのようなものはなく、
勘定は、座ったままするようである。

若女将の如才ない挨拶に送られて、店を出る。

ウイークデーの夜など、来てみたい店かもしれない。



小柳




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