断腸亭料理日記2007

朝飯

12月15日(土)第一食

さて、土曜日。

早く起きてしまった。

せっかく早く起きたのだから、朝飯を作ろうと、
思い立つ。

飯を炊く。

今年7月、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」でやっていた
京都吉兆流のご飯の炊き方で、炊く。

最近、自分で炊く場合は、ほとんどこれ、で、ある。

さてさて、

吉兆といえば、今年は船場吉兆の一件が耳に新しい。

吉兆は、船場吉兆も、京都吉兆も、吉兆グループで、もとは同じ。

初代の湯木貞一氏が昭和五年に大阪で開業し、そこから、
それぞれ、子供達(一男四女)が暖簾を分け、
本吉兆、神戸吉兆、京都吉兆、東京吉兆、そして、
船場吉兆とに分かれていったという。

筆者など、吉兆はおろか、こんな高級料亭にいったこともなく、
また、湯木貞一氏がどのような料理人でどんな功績があった人なのかも
詳らか語れるものは今はない。
従って今の吉兆についても語るべきものはない。
だが、創業者から、二代目、三代目(船場吉兆の今回の問題で
例の記者会見に出てきた女将は、湯木貞一氏の三女にあたる人
で、あろうかと思われる。)となり、ああした不心得な経営者も
出てきてしまった、ということ。

こうした料亭でチェーン化というのか、多店舗化しているのは
珍しいという。そして、このように子供達すべてに暖簾を分けたのは
初代の頃であったようである。
そういう意味では、亡くなってなん年も経っているとはいえ、
その、偉大だった初代にまったく責任はなし、とはいえないような気もする。

また、今、船場吉兆と京都吉兆をはじめ、他の店々は経営的には
直接は関係ない、という。しかし、とはいうものの、同じ名前を名乗り、
祖父を同じくしているのであるから、まったく無関係とは
世間的には、通らない話ではなかろうか。

各グループに別れる前、まだ、初代が健在であった頃、
1979年の東京サミットでも吉兆は料理を出したらしい。
(江戸末期、ペリー来航の際に饗応料理を作ったのは、
江戸の一流料亭、百川と、八百善であったことを思い出す。)

むずかしいものである。

子や孫たちに、自分の仕事を継承させるべきなのかどうか。

一般に、家や、子孫の繁栄を祈らない者はいなかろう。
それは、人間の業(ごう)というものでもあろう。

と、いうようなことを考えつつ、京都吉兆流に
飯を炊く。

洗い、ざるに上げて、ベランダにある
エアコンの室外機の前に置く。
(これは、乾きやすいやすい。)

一時間ほど。
そして、浸水。
これは二時間。

おかずは、冷凍庫にある塩鮭。

味噌汁。米を乾かしている間に、煮干しを水に漬けておく。
後は、大根があるので、久しぶりに、浦里でも作ろうか。
浦里とは、池波レシピ。
なんでも、吉原の花魁が、馴染み客に出した、というもの。

大根をおろし、練り梅と、かつぶし、もみ海苔。
練り梅は、チューブのもの。

味噌汁は、ねぎのみ。
根深汁、で、ある。
信州味噌が切れていたので、八丁味噌。
赤だし。

鮭は解凍して、焼くだけ。

と同時に、飯も炊き始める。
煮立てて、一度下から、かきまぜる。

そして、ごく弱火。
ホーロー鍋なのだが、ふたがガラスなので、
様子がわかってよい。

水分が、ちょうどなくなったところで
炊き上がりなのだが、これがなかなか難しい。
京都吉兆流は、飯の表面が瑞々しい感じ、というのが
ポイント、で、ある。

ベチャベチャではさすがに、だめだが、
ひょっとすると、軽く焦げ始めるところまで、
いってしまう、のである。
(まあ、それでも、十分にうまい。
あるいは、吉兆流ではなかろうが、おコゲのある飯も
うまい、のではある。)

今日は?

気が付いたら、コゲくさい匂いが、してきてしまった。
あわてて終了。
飯を盛り、二、三日前に自分で漬けたカブの塩漬けも出す。


これは、ずいぶん充実した、朝飯ではなかろうか。

ただ、飯は、やはり、吉兆流であれば、もう少し手前で
終了すべきであった。
しかしまあ、普通の飯、としては、悪くはなかろう。

浦里は、しょうゆをかけて、全体をかき混ぜて、食う。

塩鮭も別段、普通のもの。

しかし、こんな朝飯を、よい朝飯というのであろう。



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