断腸亭料理日記2007
4月17日(火)夜
今日は焼鳥、で、ある。
昨日も寒かったが、今日も寒い。
おまけに雨、である。
夕方から、今日はなにを食べようか、考えたのだが
思いついたのは、焼鳥、で、あった。
場所は近所。台東区台東4丁目。
これでは例によって、どこだかわからない。
昔風にいうと、下谷竹町。
佐竹商店街の西側、竹町公園の隣。
無口な小父さんと口うるさい小母さんでやっているが、
うまい、らしい、と聞いた。
会社帰り、新御徒町駅、佐竹商店街側の出口から出る。
元浅草の拙亭へ帰るのとは、反対の出口。
8時。雨も降っているので佐竹商店街のアーケードを通る。
この時間は人通りはあるが、もともとシャッターの閉まっているところが
多い商店街だが、この時間は、開いている方が少ない。
下町のスーパー「みかわや」、はまだやっている。
その手前を右に曲がる。
突き当たり、小さな神社(秋葉神社)があり左折。
町内会の掲示板に、お祭りの案内が貼られている。
このあたりは、下谷神社、で、ある。
お祭りといえば、下町では初夏の訪れを告げるもの。
「下谷」は界隈では、早い方だが、もうそんな季節になった
のだと、日常に取り紛れているが、
季節の移りかわりの速さを、しみじみ感じる。
右側が竹町公園。公園の南側の通りを右折。
公園の信号の先。この通り沿い、右側にある。
以前から存在は知っていた。
新しくもないし、知らなければ、入れない、
小さな店である。
常連さんが多いのであろう。
ちょっと、恐る恐る、ドアを開けてみる。
入ると、若いかわいい女性が、
「いらっしゃいませ」と声をかける。
「一人」。
「どうぞ」と、カウンターの席を用意してくれる。
カウンターと、テーブル席2〜3と、中も広くはない。
壁には、一面にメニューが貼り出されている。
「お飲み物は?」
寒いので「お酒、お燗で。」
「なにします?」と、娘さん。
「えーと、、、、」
壁のメニューは、一気に見られないので、
「セットのような、、えーと、、、」
と、カウンターの中の親父さんが引き取って、
「なん本ぐらい?」
「じゃあ、5、6本、適当に、、。」
と、奥で、小母さんが
「お酒は、本醸造と、純米とありますが、どうします?」
「純米で。」
親父さんは、がっちりした体格で
白髪頭を短髪に刈り込んでいる。
神輿を担ぎそうである。
会話を聞いていると、娘さんはどうも、実の娘さんらしい。
カウンターの上に、お通しとお猪口、割り箸が置かれた。
煙草を一本吸う内に、お酒が来た。
大きなお銚子である。
二合であろうか。
店の中に下げられている暖簾も、澤乃井、であるが、
お銚子も、澤乃井の、丸に、かにの印(しるし、商標)が入っている。
中身の酒も、澤乃井、であろう。
呑んでみる。なかなか、うまい。
澤乃井は、以前に蔵元見学に行ったことがあるが、
数少ない、東京都の酒蔵である。
場所は、奥多摩。青梅の奥で、奥多摩線の沢井という駅。
多摩川の上流、奥多摩渓谷といったらよいのか、
山の中にあり、秋の紅葉の頃などは、絵に書いたような
美しいところである。
(豆腐料理をメインにした料理屋も一緒にあり
蔵元見学と合わせて、なかなか楽しめる。)
ともあれ、呑みながら、待つ。
お通しは、なにかと思えば、大根おろし、で、ある。
それも、いわゆる、鬼おろし、というのであろうか。
大きめに、ザクザクとおろされたもの。
味はなにも付いていない。
しょうゆをかけて、つまむ。
焼鳥がきた。
まずは、つくね、二本。
塩、で、ある。
小ぶりなものが一串に二つ。
香ばしく、焼かれ、うまい。
続いて、レバ、二本。
これも塩。
半生。よい具合である。
ここで、追加で、皮のポン酢を頼む。
続けて、正肉と、ねぎま。
これも塩。
どれもうまい。
カウンターの親父さんのちょうど目の前に座ったので、
すべての料理が上がるのが、見える。
壁に貼ってあるメニューで気になっていたのだが、
「焼きトマト」と、いうのがあがった。
ちょうど、それらしきものが上がったのを、
筆者が目を丸くして見ていたら、
親父さんが「焼きトマト」(だよ)、と自慢そうにいう。
無口だが、なんとなく、人柄を感じさせる。
皮のポン酢。
これは少し、おもしろい。
皮は焼いてある。
皮のポン酢であれば、茹でたものが普通であろう。
香ばしく、うまい。
このへんでよかろうか。
お勘定をして出る。
(¥2000ちょい。)
なかなか、噂通り、気の置けない、
うまい店ではなかろうか。
客層は、近所のサラリーマンといったところか。
またこよう。
鳥喜
03-3835-7618
東京都台東区台東4丁目3−2
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