断腸亭料理日記2007
4月18日(水)昼
さて、今日は、市谷左内坂・ラーメン屋の庄の、の、こと。
筆者オフィスそばの、有名ラーメン店である。
以前は、このあたりはラーメン屋はたいしたところもなく
空白地帯であったが、この庄の、そして、くるりと、二店できている。
この店を考えるにつけても、今の東京のラーメン屋事情に
思いが至る。
ある種、今の東京のラーメン屋界は特殊な状況にあるように思う。
どうしてこんなことになったのであろうか。
いや、まあ、そんな大袈裟にいわなくともいいかもしれぬ。
単純に、おもしろがっていても、よいのかもしれない。
こんなことをいっても、
なんのことやら、読者の方にはわからないだろう。
どのくらい前からかわからないが、
東京の街のラーメン屋界は、行き着くところまで
行き着いてしまったのではなかろうか。
例を挙げると、天神下の大喜。
そんなところが、筆者の知っている範囲でも、好例である。
まあ、考えるだけ、考えつくしたラーメンを出す。
武骨はともかくとして、
大喜はそうだが、次から次へと、変わったラーメンを
考えて、出してくる。
もともと、ポテンシャルのあるご店主なのであろう。
出してくるものは、皆、うまい。
武骨のように、いかすみ、を使った、
コケオドシのような真っ黒なスープは極端であるが、
大喜の出してくるものは、それぞれが新しく、驚きに満ち、
そして、うまい。
ここ、庄の、は、月代わりで、新作ラーメンとして、
新しいものが、出てくる。
毎月、というのは、筆者、他にはあまり知らない。
それも、近所であるから、ほとんど食べているが、
ハズレ、と、思うものは、まあ、ない。
例えば、今日食べた、今月の新作。
これは、つけめん、である。
左側にあるのが、つけ汁で、ビールを呑むような
器に入っている。
海老塩つけめん、と、いうような、名前が付いていた。
つゆは、熱々で、上に油の層があり、麺をつけると、
よい感じ。
ここのご店主は魚介系が得意なようで、
蛤やら、海老やらを使ったものがよく登場する。
これも、名前の通り、海老塩味のつけ汁、で、ある。
そして、最初にいわれるが、食べ進んで後、
皿のかたわらに添えられている、揚げ雲呑を、つけ汁に入れ、
潰して、もう一つの味を、楽しんでください、という。
食べていき、その揚げ雲呑を入れてみると、
なんであろうか、味噌のような、そんなものが入っており、
味は、ナンプラー(タイなどで使われる海老の醗酵調味料。)
のような味がしてくる。
海老味噌なのか、なんなのか。
ちょと、コクのある味に変わる。
そして、麺を食べ終わったら、写真右側、小皿にご飯。
粉の削り節がまぶされている。
ここに、つゆをかけて、食べてください、と、いう。
茶漬けのようなもの、で、ある。
最後は、つけ麺のお約束、スープ割り。
これも、ただ、スープを入れるだけでなく、
薬味を足してくれたり、なにかしら、一手間している。
このご店主、年はお若いようだが、
高校生のころから、ラーメンが好きで作り始めた、と、いう。
とにかく、いろんなことを、考えており、
それが、まあ、おもしろいし、うまい。
大喜のご店主もそうなのだが、相当な、「味」感覚の
持ち主であり、研究熱心であり、作るものはどれも、
はずれてはいない。
筆者など、思ってしまうのであるが、
これだけの才能があるのであれば、
なにも、ラーメンなど作っていなくとも、
もっと他に、、フランス料理なのか、鮨なのか、わからぬが、
もっと高級な他のメニューでもよいのではないか、ということ。
フランス料理や、鮨と、ラーメンの、どちらが地位が上か、
下か、、そういう議論なのか?
いやいや、ラーメン屋と、侮ることなかれ、
客単価は低くとも、回転がよければ、なまじ単価が高くとも、
客の少ない日もある、高級店よりは、よっぽど実入りはよい?
そんな、議論なのか?
いやいや、金ではない?
わからぬが、この人、ラーメンが好きで、
新しい味を考えることが好きであることは、間違いなかろう。
なかなか、稀有な人ではある。
筆者など、毎度、楽しませてもらっているが、
東京には、やはり、こんな人がいて、こんなラーメン屋が
存在する。
単なる、アイデアや、コケオドシではない。
少し、大袈裟だが、これは、もはや五つ星のフレンチレストランや、
江戸前鮨職人の店と同じような、
質の高い味覚エンターテインメントである、
と、筆者は思う。
どこへ行くのか、東京ラーメン屋界、そんなことも
ふと思う、`07年4月の、今日この頃で、ある。
住所 新宿区市谷左内町1
TEL 03-3267-2955
営業時間 11:00〜15:00、17:30〜22:00、(土)11:00〜15:00
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