断腸亭料理日記2007

スパゲティー・ナポリタン

2月28日(水)夜

夜、仕事をしながら、なにを食べようかと、
例によって、考える。

なぜであろうか。
まったく原因はわからないが、
スパゲティー・ナポリタンが食べたくなった。

いわゆる、喫茶店のナポリタン、で、ある。

まあ、筆者であれば、このところ、過食はいけないと思い、
少しご無沙汰であるが、真っ先に、有楽町のジャポネを思い出す。

(しかし、ジャポネの味は、単なる喫茶店のナポリタンをはるかに超えて、
独自の境地に到達しては、いる。)

少し調べてみると、ズバリ、「ナポリタン」(上野玲・小学館文庫)

と、いう本まで書かれている人がいる。

発祥の秘密、歴史、世界のスパゲティー・ナポリタンのこと、
などなど、幅広く、深く、書かれている。
やはり、こういう人がいるのである。

(ちなみに、この上野さんという方は、1962年東京の生まれで、
筆者などと同世代である。やはり、という感じである。
(東京生まれの)筆者ら世代の特徴であろう。
どうでもいいことをおもしろがり、かなり本気に追求する。
いや、追求すること自体をおもしろがる、のだろう。)

この上野さんによると、スパゲティー・ナポリタンの発祥は、
戦後のGHQからで、あるらしい。
スパゲティーのケチャップ和え、という食い物は、
それ以前から、米軍で盛んに食べられていたものだ、というのである。

占領軍の本部は、当初、横浜のホテルニューグランドに置かれた。
彼らはまた、乱暴であるから、いつも食べている、アレを作れ、
というので、スパゲティーのケチャップ和えを作らされた。
ナポリタンという命名は、この時の、ニューグランドのシェフ
であるという。
なぜ、ナポリタンなのか、と、いうと、
イタリアのナポリの路上で、スパゲティーにトマトソースを
かけたものを、売っていたから、ということらしい。

そして、日本全国に広まった。
まあ、簡単にいうと、そういうことらしい。

ということは、元祖スパゲティーナポリタンは、
横浜のホテルニューグランドである、と、いうことになる。
(今でもメニューにあるのだろうか。
あるのなら、今度、いってみなくてはいけない、か?と、思い、
ニューグランドのHPを見てみたが、
ナポリタンというメニュー名のものは、今はないようである。
きっと、言えば作ってくれるのではあろうが。)

ナポリタンといえば、もう一つ。給食であろうか。
既に和えられた状態でバケツに入っていたミートソースも
あったが、ナポリタンもあった。
どちらも、かなりの人気メニューであった。

中学生ぐらいになり、自分で簡単な料理をするようになり、
当時、今でもある某パスタメーカーから、ゆでスパゲティー
なるものが出始めていた。あまり定かな記憶ではないが、
ケチャップは粉末であったか。
焼きそばのようにして、作ったのであろう。
これは、今考えると、たいしてうまいものではなかったが
簡単に作れたので、一人でなにか食べなければならない場合には
よく食べていたように思う。
(これのミートソースはうまかった記憶がある。)

さて、帰途、材料を買う。

玉ねぎはあるので、ピーマンと、ハム。
ハムは、オーソドックスにロースハムでよいのだが、
パストラミが売っていたので、これを買う。

作る。(、、と、いうほどのことはないが。)

まずは、湯を沸かす。

その間に、玉ねぎ、ピーマン、ハムを切っておく。

湯が沸いたら、塩を入れ、パスタを茹でる。
アルデンテ、などといってはいけない。
普通に茹ったら、笊にとっておく。

フライパンに、マーガリン。
これはジャポネの真似、で、ある。

玉ねぎ、ピーマンを炒める。
しんなりしてきたら、ハムを入れ、ブランデーを入れてみる。
フランベ。
これは、浅草ヨシカミのチキンライスの真似、で、ある。
香りとコクが出るように思われる。

塩胡椒。
胡椒は、パストラミハムを考えて、黒胡椒の荒挽き。
ミルで挽きながら入れる。

笊の上で少しかたまり始めた、スパゲティーを入れ、よくほぐす。

炒める。

ケチャップ投入。
よく混ぜる。

仕上げにもう一度、黒胡椒をたっぷりかける。

盛付け。


やはり、クラフトの緑の紙管のパルメザンチーズと、
タバスコ、で、あろう。
(昔は、スパゲティーといえば、条件反射のように、
タバスコ、で、あった。前に、有明のイタリアン「アルポルト」で、
おしゃれなパスタを前に、田舎の(?)お兄さんが、「タバスコーー」と、
怒鳴っていたのを思い出す。)

ビールを開けて、食べる。

なんということもない、普通のナポリタンである。
しかしまあ、胡椒をたっぷりかければ、これで、ビールも呑める。

しかし、なぜ、タバスコであったのだろうか。
これも、進駐軍であろうか。

今日は、胡椒をたっぷり入れたので、タバスコは控えめにしてみた。
タバスコというのは、酸味がかなり強く、あの独特の味になってしまう。
ナポリタンには、辛味がほしければ、明らかに、味としては素直な、
胡椒の方が、うまい。
(いや、あの味、がいいのだ、という人もいるかもしれぬが。)

どちらにしても、改めて思うが、不思議な食い物で、ある。
イタリアンではちろんなく、さりとて、洋食屋のメニューでもない。
あえていえば喫茶店のメニューだが、実際に喫茶店でも
東京などでは、もう見かけなくなったメニューである。

しかし、筆者らの世代には、懐かしく、時々食べたくなる味ではある。

きっと、若い人達は、違うのであろう。
もしかしたら、50年もたてば、
滅んでいくメニューなのかもしれない。


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