断腸亭料理日記2006

秋刀魚

9月24日(日)夜

今日はなにを食おうか。

珍しく、内儀さんと相談をする。

と、これも、珍しく意見が一致した。

秋刀魚、で、ある。

東京でも、盆明けごろから、本格的に安く並び始めたが、
どうも今年は、食指が動かなかった。

理由は、自分でもよくわからないが、
ちょっと、飽き気味、なのか。
鯵や、鯖、などの青魚と比べても、ご存知の通り、
脂の量はべらぼうに多い。
年齢のせいであろうか、秋刀魚の脂がヘビーに感じるように
なったのかもしれない。

ともあれ、たまには、いいか。
秋刀魚。

御徒町の吉池。

落語の稽古がてら歩く。
(ちなみに今日は、この後、田原町の床屋までも歩きながら稽古。)

吉池。
北海道もの。刺身でもいけるものが、1本¥120。
3本で¥300。一人塩焼き2本は食べたい。3本は半端である。

よし、こうなれば6本買ってしまおう。
塩焼きだけでなく、秋刀魚づくしでいってみよう。
刺身、酢〆、いろいろできる。

帰宅。

まずは、刺身と酢〆のために、二本、三枚おろしにする。

一本は刺身。
おろしてから皮を引き、切り、皿に載せ、ラップをし、
冷蔵庫に入れておく。

引いた皮と、中骨。
これも捨てずに、後で、焼こう。塩をして冷蔵庫に。

もう一本は軽く塩をし、30分、置く。

30分後、一度水洗いし、よく水分をペーパータオルで拭き取り、
パッドに広げ、酢をかける。
表面にもよく漬かるように、ペーパータオルを上からかけておく。

〆鯖などは甘酢であるが、今日は酢のみにしてみる。
脂の多い秋刀魚の場合は、甘みがない方が、さっぱりとしてよいであろう。

外出していた内儀さんの帰宅を待ち、残り四本、焼き始める。

よし、今日は、七輪。むろん、炭。

拙亭はマンションであるが、ベランダで、七輪で焼く。
過去にも、焼き鳥はよく焼いているし、秋刀魚を焼いた経験もある。
今のところ、近所から苦情は来ていない。
以前に、鶏皮を焼いたときには、もうもうと上がる煙に、
さすがに、すぐにやめた
。)

火熾しでガス。

七輪に移し、扇風機をあて、キンキンに熾(おこ)す。

切らずに一本ずついってみよう。

七輪の前に座り、背中に扇風機を置き、部屋に煙が入らないようにする。
(これ、今書きながら、気が付いたのだが、冬ではない。
ベランダに出てドアを閉めて焼けばよかった。)

まずは一本。

焼けてくると、ポタポタと脂がしたたり落ちる。
と、炭火にあたり、煙が上がる。

これはいけない。

近所迷惑、でもあるが、部屋にも煙が入る。
そして、なによりも、秋刀魚自体を燻(いぶ)してしまう。
煤けた秋刀魚になってしまうのである。

すぐに、扇風機の風をあて、飛ばす。
と、その内に、したたる脂の量が、多くなり、飛ばし切れなくなる。
網ごと七輪から、秋刀魚を一度外し、落ち着くのを待つ。

これを繰り返し、片面終了。ひっくり返す。

七輪で焼く場合、皮がくっついてしまうことが多い。
そーっと、、、。

少しくっついたが、まあまあ、きれいにとれた。
焼きすぎないのがポイントであろうか。
ガチガチにくっつくと、身までむしれてしまうこともある。
注意が必要である。

一本切らずに丸のままを七輪で焼く場合、
拙亭の七輪では、全部が載りきらず、頭と尻尾が出てしまう。
このため、頭と尾はもう一度、ずらして焼く。

続けて、残り3本、同じ要領で焼く。
冷蔵庫に入れておいた、皮と中骨。

中骨はそのまま。皮は串に巻きつけて、焼く。

骨はカリカリまで、よく焼く。

骨がちょっと、煤けてしまったが、終了。

内儀さんに、大根と、刺身用のしょうがを、を、おろさせ、刺身を出す。

さあ、食べる。

まずは、皮の串焼き。

これはかなり、うまい。
鮨やなどでも、細魚(さより)の皮でこうした串焼きをする。
脂が多いが秋刀魚でも、なかなかうまい。

骨はやはり、ちょっと燻ってしまった。
骨だけはオーブントースターにしておけばよかったか。

刺身。

やはり、刺身は秋刀魚でも、さっぱり食える。

塩焼き。

おろしをのせて、しょうゆをかけて、二本。
どんどんと、食う。

今日は、生まれて初めて、積極的に
はらわた、も、食べてみた。

秋刀魚に限らず、魚のはらわたは、子供の頃から、苦いもの、と、
食べない習慣になってしまっていた。
親も特に、食べろ、とはいわなかったのであろう。
まあ、食わず嫌いである。

詩人、佐藤春夫の秋刀魚の歌、
『秋刀魚苦いか塩っぱいか、、』ではないが
秋刀魚のはらわたは、全国的に食べるところ、食べる人の方が
多いのであろうか。

食べてみれば、むろん、苦味はあるが、確かに脂もあり、
食えるものである。

これで腹は一杯。

酢〆は、酢を切り、オリーブオイルをかけて冷蔵庫。
こうすれば、しばらくは、もつ。

(ちなみに、翌日食べたが、けっこううまかった。)

今日はなにか、ヤケのような秋刀魚づくしになってしまった。

去年は秋刀魚飯などというものを試みた。
これはかなりうまかった。

今日の中では、(塩)焼き、は、まあ、想像通りのものだが、
皮を串に巻いて、焼いたのが一番であった。
乙な味、で、ある。



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