断腸亭料理日記2006

蛤の湯豆腐、火鉢で小鍋立て

11月27日(月)夜

雨が降ったり、やんだり。
そんな一日。

落語会も終わり、仕事に集中しなくてはならない。

いや、それはそうなのだが、色々なものがあった方が、
このところ、逆に、それぞれに集中できる、
そんな感じでもあったように思う。

なんとなく、脱力感もあったりするが、
まあ、前向きに、いこう!。

19時過ぎ、今日は、なにを食おうかと、考える。

いつも、この“考える”場所はオフィスの外の喫煙場所。屋外である。

このところ、ほんとうに暗くなるのが早くなった。
今日は一日天気が悪く、少し暖かめであったが、
この時間になるとさすがに、肌寒い。

やはり、鍋か。

蛤の湯豆腐、にしようか。

簡単で、その上、うまい。

思い立ったら、荷物をまとめて、すぐ帰る。

スーパーに寄って、そこそこうまそうな豆腐と蛤。

蛤は、5月頃であったか、雑誌IPPO(いっぽ)の記事

料理日記本編

を書いたが、この時のテーマは、秋冬の剣客商売のメニューということで、
蛤もあったのである。

5月の蛤は食べられたものではなかった。
昔から、ひな祭りが食べ納めで、夏は食べてはいけない、
といっているが、その通りである。
悪くなるのも早いのかもしれない。

寒くなり、もうよい時期だろう。

輸入物だが、たっぷりあった方がよかろう。
2パック買う。

帰宅。

まずは、蛤を、少し塩を溶かした水に入れておく。
最近は、砂を吐かせたものも多いが、念のため、で、ある。

よし、今日は、火鉢にしよう。
この前のNHKの池波鍋の取材のときに、火鉢に火を入れたが
実際に使う目的で、火を入れるのは久しぶりである。

火熾(ひおこ)し、に炭を二つほど入れ、ガスに掛ける。

その間にページの更新。

熾きた炭は、火鉢に。
熾していない炭も足し、少し吹いておく。
放置。

引き続き、更新作業。

30〜40分、蛤はいいかな?
特に、砂は出ていないようである。

お燗用に鉄瓶も熱くしておく。

そこそこ炭は熾きている。
炭は三つもあれば、暖房目的であれば十分である。
しかし、実際にこれで煮炊きをするには、足らない。

小鍋に水を張り、蛤を三つほど入れ、最初はガスに掛ける。
蛤は、火力が強くないと、開かないであろう。
ふたをし、沸騰させ、開くのを待つ。

OK。開いた。
死んでしまっていると、開かないこともあるが、
さすがにこの時期、買ったばかりでもあり、大丈夫であった。

火鉢に移動、切った豆腐を入れ、また、ふたをする。

この間に酒の燗もつける。
(これもガス。)
(長火鉢があれば、両方できるのであるが、、。)

準備完了。


味付けは塩のみ。

そうであった、思い出した。
この正月にも蛤の湯豆腐をやったのだが、この時、
白しょうゆを入れたら、というコメントをくれた人がいた。

しかし、これは誰がなんといおうが、譲れない。

蛤のすまし汁には、さっぱりと塩だけで、必要十分であり
そこがこの料理のポイントであると思っている。
塩だけで、こんなにもうまいのか、そういうことなのである。

むろん、白しょうゆを知らないわけではない。

白しょうゆは、基本的には、名古屋や関西の味覚。
うまみ、なのかも知れぬが、濃い口しょうゆで育った、
東京人であるからであろう、そのうまみ、が、どうしても筆者の舌には
もったりした、あまみ、に感じてしまうのである。

これは筆者の好みの話、で、ある。
白しょうゆが好きな人を咎めているのでは、むろんない。
筆者は知っているが使わない、ということなのである。
(煮物、佃煮、焼き鳥のたれ、など、濃い甘辛いものには、
濃い口しょうゆに、白しょうゆを少し入れる。
これは、独特の風味が付き、悪くはないと思っている。)

もしご興味がある方はご自分の舌で、試してみても
おもしろいかもしれない。
すまし汁に、白しょうゆを少量入れる、という料理法は
確かに存在する。

(結局この後、三回にもわたって、白しょうゆ、しょうゆについて
書くことになってしまった。)

ともあれ、この汁が、実に日本酒に合うのである。

酒はいつもの菊正宗である。

これも、余計な味のない、塩と蛤だけだから気持ちがよいのである。

さっぱりと、豆腐もうまい。

燗酒と、蛤の汁、豆腐。腹に染み渡り、温まる。

火鉢も、寛げてよい。


よい夜、で、ある。



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