断腸亭料理日記2006

断腸亭、取材?!

鴨鍋・正調、剣客商売版

5月20日(土)夜

さて、ぐずぐず伸ばしていた落語会の開催も6/25、蔵前いせやさんに、決め、
既に申し込みをしていただいた方も、随分いらっしゃる。
ありがたい限りである。日曜日の午後、梅雨のさなかであるが、
お時間のある方は是非、一度、うまい江戸前天ぷらを肴に
拙いものであるが、落語を聞いていただき、読者の皆様に、
お顔合わせができれば、と、考えている。

毎度書いているが、筆者は、どうも、今の、表面だけの、
ネットでの“放電”コミュニケーションというものに馴染めない。
一つの、表現としてこの日記を書いている。
いわゆるオフ会という形ではなく、
筆者のその表現の一つである、落語も、聞きにきてください!!
と、いうことなのである。

さて、そして、もう一つ、大きな出来事が先週あった。
表題にも書いたが、取材の申し込み、で、ある。

取材自体は、この日記を書いていて、以前にも、
NHK、朝日新聞AERA、とあった。

NHKはもう随分前だが、「火鉢」。
なにか、一つのモノに焦点をあてて、掘り下げる、という番組で
今、リアルタイムで火鉢を使っている、ヘンな奴、がいる、と、いう
ことでの取材であった。

AERAの方は、`03年秋、池波先生の食い物特集で、
「あなたもできる、鬼平軍鶏鍋」というような内容で、
筆者が軍鶏鍋を作る、と、いうもの。
(むろん、その他に、てんぷら近藤の近藤氏や、
新富寿し、など先生行きつけの店への取材、池波ファンの各界著名人の方々の
コメントなどで構成されていた。)

今度も、池波先生関係。
「江戸のロハス」ということで、
剣客商売で、十品、料理を作ってほしい、という。

毎度書いているが、筆者、いわゆる今、流行の欧米からきた、ロハス、
スローライフといったようなものは、嫌いである。
もちろん、好きでやっている人を否定するつもりはさらさらないが、
東京には、江戸から流れる、街のリズムがあり、それで暮らす、
江戸からある旬の魚や野菜を食うのが、もっともよい。
それが東京で生まれ育ったものとしての主張である。

ロハスは嫌いだが、江戸のロハス、なら、趣旨としては、大賛成。
いや、折角、取り上げてくださるなら、喜んで、、、で、ある。

雑誌は、筆者は存じ上げなかったが、IPPOという中高年向けの
季刊の健康誌(ニューズ出版)、ということ。記事自体は、秋の号。

剣客で秋の料理十品。来週、拙亭で撮影。

十品のリストアップである。
剣客、かつ、秋。そんなにあるのか?と、思ったが、
「剣客商売・包丁ごよみ」(新潮文庫)を見直し、原典にもあたると、
あるある。十品どころではない。

中で、編集の方とともに絞ってみた。

そして、食材は来週として、今週は食器、鍋などの準備である。
合羽橋で、鉄鍋やら、皿、箸など調達。
(それから、落語用の着物。今の季節に着れる着物がなく、
六区のちどりや、という男着物の店で探す。)

さて、メニューはまた、追々書くとして、今日は、一品、
事前に作ってみることにした。

鴨鍋、で、ある。

拙亭の鴨鍋は、甘辛で芹。生卵をくぐらせて食べる。

これは、東京の鴨鍋としては、標準のものであると思われるが、
剣客に出てくるものは、ほんとうは少し違っていたのである。
これは、鉄鍋でねぎのみで焼き、酒で割ったしょうゆに
つけて食べる、というもの。「剣客商売」「辻斬り・老虎」(新潮文庫)

この通りにやってみなくてはいけない、というわけである。

ハナマサで調達した、冷凍の合鴨胸肉、を解凍。

酒で割ったしょうゆは、いわゆる、ニキリにするのであろうか。
酒にしょうゆを入れ、煮たて、さましておく。

鉄鍋は、小さめのすき焼き鍋。
ここに、まずは脂身を溶かし、馴染ませる。
ねぎは、火の通り易い、薄切りにする。


肉に軽く火が通ればよい。
身は、すぐに固くなるので注意が必要である。


これを、先のニキリにつけて、食べる。


いや、これは、これは、なかなか、よい。

甘辛にするのであれば、芹と、玉子がよいが、
こうして、しょうゆのみのさっぱりした味。
ねぎがあまく、鴨の脂に染みて、ベラボウに、うまい。

写真のように、しょうゆの小皿に上に、層になるほど
脂が出てくる。
これを、白飯にかけても、うまそうである。

とてもシンプル。さっぱりと、江戸前の味覚。
これがうまいのである。
また、このへんが、池波先生の池波先生たるところ、であろう。

今、池波先生はいわゆるグルメ作家、といういわれかたもされる。
しかし、先生自身、また、お弟子である佐藤隆介氏なども書かれているが
(佐藤隆介「池波正太郎への手紙」ゴマブックス刊)
先生は、いわゆる食通でもグルメでもない、という。
この場合のグルメや食通は、金にあかせて、豪勢な料理を食う、
ということである。
たとえ安いものでもあっても、一食一食を、死ぬ気で食べる、
これが、池波先生の食に対する考え方である、と。

筆者も、これは常に肝に銘じ、大切に飯を食う、ことを
心がけている。



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