断腸亭料理日記2006

食は文化である。
しろしょうゆのこと。その2

今日は、昨日の続き。しろしょうゆのことから、筆者にとっての
しょうゆ、しょうゆの歴史など、考えている。

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冒頭に、食は文化である、と、書いた。

文化は、伝統、と、置き換えてもよかろう。
何十年、何百年と、積み重ねられたものである。

そして、これはまた、世界中どこでも同じであろうが、
地域独自性が、高いものである。
(ちょっと、蛇足であるが、筆者、大学では、
日本民俗学を専攻していた。
当然、「食」も民俗学の守備範囲でもある。
これももう一つの筆者のバックグラウンドかも知れぬ。)

ご存知の方もあろうが、筆者が2年間単身で住んだ名古屋圏、
愛知、岐阜、三重、の三県は、一つのまとまった地域である。
テレビの局もこの三県で、ローカルになる。

今、文化的、あるいは味覚的にもほぼ、同じ様な特徴を持つ
地域といってよいと、思われる。

伝統食で、この地域で全国的にも有名なのは、
愛知県、三河岡崎の八丁味噌に代表される、
米麹を使わず、豆のみで発酵させた、赤味噌。
一般の家庭でも、この地域では、味噌といえば、これ。

そして、しろしょうゆ、というものも、
赤味噌ほど、どの家庭でも使う、というものではないが、
やはり、この地域の特徴的な、調味料である。

今回、あらためて、しろしょうゆ、というものを調べてみた。

先に、JASできちんと定められている、ことを書いたが、
これは、製法が決まっているということと、
伝統的なものである、という裏付けでもあろう。

今、これだけ一般的な、こいくちしょうゆの誕生は、せいぜい江戸の頃。
キッコーマンの発祥の地でもある、江戸近郊、水運で結ばれた、
下総、野田などで、盛んに作られるようになった。

江戸、関東の味覚を代表する、こいくちしょうゆは、江戸、の食環境に
合わせて、定着していったようである。
江戸、江戸近郊は、いわゆる関東ローム層というやせた赤土で、
ここで収穫させる野菜は、上方などに比べると、まずい。
この旨みの足らない野菜の味を補うために、こいくちしょうゆが、
どうしても必要であった。

さて、そもそも、しょうゆの発祥は、もっと古く、
室町以前、鎌倉までさかのぼるという。場所は、紀州。
今、和歌山市の南にある湯浅町、というところらしい。

居酒屋で出る、もろきゅう、の味噌。
きゅうりや、エシャロットにつけて食べるあの甘い味噌。
金山寺味噌というのだが、ほとんどの方が食べたことがあろう。
(余談だが、落語、黄金餅、の主人公、金兵衛は、
金山寺味噌売り、であった。)

紀州湯浅で、この金山寺味噌の『樽底に沈澱した液汁』を
調味料として使うようになった。
これが、しょうゆ自体の始まり、らしい。
ものとしては小麦が入った、金山寺味噌の、
たまり、ということになるようだ。

そして、その後、和歌山からは、少し離れた、三河碧南地方で、
時代は下った江戸末期、現代まである、しろしょうゆ、の形が作られた。
やはり発端は、金山寺味噌の上澄みから考えられたようである。

今、先のしょうゆ発祥の地、湯浅町でも作られているが、
全国でもやはり、名古屋を中心に、
東海地方で多く作られているものである。
(しょうゆ全体の中では、量はごくわずか。)
主原料は、金山寺味噌同様、大豆は従で、小麦が主。
(キッコーマンHP、しょうゆ文化センターHP、
和歌山県湯浅町HPなどから)

しろしょうゆは、色は、うすくちしょうゆよりもさらに薄い。
透明に近く、しょうゆというよりも、
みりんに赤みをさしたような色である。

さて、もう一度、名古屋の味のことに戻る。

先に、赤味噌、のことを書いたが、
一般的な、名古屋地方の味付けの傾向は、筆者など、
東京者からすると、甘い、と、感じるものが多い。
酢飯などは、最たるものである。
筆者には、名古屋の、握りずしは、とても甘くて食べられない。
(名古屋では、コンビニで買った寿司でさえ、酢飯が甘い。)
また、煮物も、色が薄く甘い。

赤味噌を使った料理の中でも、味噌煮込みうどんは、よいのだが、
味噌かつはダメ。赤味噌をベタベタに甘くし、
かつなどとはとても、食べられない。

東京ローカルの、しょうゆは強いが、さっぱりした味覚で育った筆者は、
父親ほどではないが、やはり、甘い、ということに、弱い。
こればかりは仕方がない。

筆者には、合わないが、しかし、
これも立派な名古屋圏の食文化である。

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さて、今日はここまで。
もう一日、しょうゆのこと、お付き合い願いたい。



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