断腸亭料理日記2006

箱根・塔ノ沢・

福住楼2006 その1

12月22日(金)夜

毎年恒例、年末の年賀状書き、の箱根、で、ある。

昨年

箱根塔ノ沢温泉の、古い日本旅館、福住楼。
毎年、この時期に、年賀状を書くために、二日間、
こもる、というほどでもないが、くる。

家にいると、だんだかんだで、集中して書けず、
暮れの骨休めを兼ねて、きている。

年賀状を書くのは、昼間(ひるま)。
昼間、旅館の部屋にいるためには、二泊しなくてはならない。
それで、二泊、と、いうことになる。

箱根の古い日本旅館の部屋に、昼間いる、
と、いうのは、なかなか贅沢なものである。

流連、と、いう言葉がある。
音読みして、リュウレン。居続け(いつづけ)、と読ませたりもする。

落語がお好きな方であれば、知っておられるかもしれない。
吉原などに、何日も居続けることを、居続け、流連、という。
その代表的な噺は、「居残り佐平次」、であろう。

(ちなみに、居残りと、居続けとは、正確には、違う。
居続けは、居たくて居るのであるが、居残りは、帰りたいのだが、
金がなく、帰してもらえない、という状態である。)

噺の詳細は断腸亭落語案内をご参照いただくとして、
普通は、夜泊まるところに、昼も客として、ごろごろしている、
というのは、なかなか、よいものである。

吉原の居続けと、箱根の温泉宿に昼間いる、と、いうのは
まあ、違うのであろうが、少しばかり、そんなことを
重ねて、楽しんでもいる、わけである。

今年の元々の予定は、月曜は休暇を取り、土曜、日曜の二泊、の
はずであったが、月曜に、はずせない会議が入り、
急遽予定を変更し、金土にずらさねばならなくなった。

金曜、18時、ばたばたとオフィスを出て、帰宅。
19時、車で、出る。
コンビニでおにぎりなんぞを買い、食いながら首都高、
東名、厚木から小田原厚木道路。
21時過ぎ、箱根塔ノ沢着。

女将さんが迎えてくれる。

部屋は、早川に面した、桜の一、という部屋。
次の間付き、で、ある。

ここにくるようになって、次の間付き、というシクミの実際を憶えた。
落語、明烏、の朝の場面などにも出てくるが、
廊下から、戸を開けても、すぐに主部屋ではなく、
四畳半なり、六畳の小さめの部屋が先にあり、そこを通らないと、
入れないようなつくりになっている。
仲居さんなどがきても、いきなり開けられない。
ちょっと、よい部屋には、こうした次の間、が付いていた、のである。

福住楼もすべてではないが、よい部屋は次の間付き。

今回の、桜の一、は、次の間付だが、変形で、廊下の戸を開けると、
いきなり部屋、次の間は、その奥。そこで、入り口の戸の前には
屏風が立ててあり、中がすぐに見えないようになってはいる。

この奥の、次の間は早川に面した角部屋で、
二方すべてが窓。
川と、山の眺めが素晴らしい。

主室は、十畳ほどであろうか。
毎度思うのだが、こうした、ちゃんとした日本旅館の部屋の造りは
本当に美しい。

床の間、掛け軸、花が生けてあり、違い棚、、、


障子の格子、欄間、そして飾り窓というのであろうか、
次の間との間(あいだ)の障子。

この福住楼は、建物が、国指定の有形文化財になっている。
現代において、こうした細工と造形(デザイン)のできる職人は
どれだけいるのであろうか。

筆者は、このような部屋に手足を伸ばして寝られるだけで、
幸せ、で、ある。

(ついでだが、この前にある、衣桁のこと。
イコウ、と、読む。

同世代以上の方はご存知であろう。
衣桁掛け、衣文(エモン)掛け、などともいうが、着物を掛けるもの。
筆者などの子供の頃にも、まだどこの家にも、
あったものだったことを思い出す。
現在の拙亭には、着物はあるが、衣桁は、ない。
白状をすると、本来、ズボラな筆者は、脱いだ着物は、
サッシのカーテンレールに針金のハンガーなどで引っ掛けている。
本当は、こうしたものに掛けなければいけない。
買わなくてはいけなかろうが、マンションのフローリングの部屋には
置く場所もない、というところか、、。)


さて、さて、
若い頃は仕事が終わって、夜通し走って、スキーへ出かける、
というのようなこともやっていたが、もうだめ、で、ある。

福住楼に着き、「疲れた、疲れた」、を連発し、
ビールを呑んで、浴衣に着替え、風呂へ行く。

出、少し落ち着いて、部屋を眺めながら、もう一度、ビール。

11時過ぎに布団にもぐり込み、すぐに寝てしまう。


この項、つづく。



福住楼


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