断腸亭料理日記2006

浅利と大根の鍋

4月11日(火)夜

桜花はわずかに残っているが、大部分が散ってしまった。
雨がしょぼしょぼ降って、薄ら寒い。

なにを食べようか。
温かいもの、がよい。

池波正太郎作品に登場する料理、この日記では、池波レシピ、と、
呼んでいるが、の中で、よく登場するが、まだ作っていないもの。
浅利むきみと、大根の鍋。
(梅安最合傘 ―仕掛人・藤枝梅安3  講談社文庫 池波正太郎著)

今日は、これで行ってみようか。

深川飯、などはよく知られているが、浅利のむきみ、は
江戸、東京の庶民の食卓には、なくてはならぬものであった。
筆者の家でも、浅利むきみと小松菜の煮びたし、なんぞは、定番の惣菜、
父、祖父、祖母など、皆、好きなものであった。
これは、取りも直さず、昔は安かった、と、いうことである。

しかし、今、どうであろうか。
殻付きのものと比べて、高い(ように思われる)。
(む)いてしまうと、当然ながら、嵩(かさ)が減る。
実際に浅利いくつ分で、いくら、なのか、数えてみたことはないが、
ちっちゃなパック一つで、¥300程度はする。
かき揚げにしても煮びたしにしても、沢山使った方が、うまい。
ボイルのものであれば、かなり安く売られているが、これではだめである。
生とボイルでは、まったく違う。
貝などは、半生程度が最もうまい。
茹でてしまうと、旨みのつゆが、おおかた出てしまうのである。

そんなことで、この浅利と大根の鍋は、未体験であった。

会社帰り、スーパーに寄る。
思い切って、むきみのパック¥300を二つ。
豆腐も入れようと思い、いつも買っている、例の富士山のものを買う。
大根は買い置きがある。

帰宅。

まずは、大根。
これは千六本。

むきみは軽く洗う。
豆腐を切る。

これでおしまい。大皿に盛る。

2パック使うと、存在感がある。

梅安最合傘にも
「浅利のむきみも、たっぷりと用意してある。」
と、ある。

やはり、“たっぷり”がポイントである。

小鍋を用意し、カセットコンロを食卓に置く。

小鍋には、薄く、しょうゆと酒。
(本文は「鍋へ、うす味の出汁を張って、、、」

点火し、「手づかみ」で大根と、豆腐を入れる。
千六本といっても、浅利よりは、火が通るのには時間がかかる。
浅利を煮すぎてはいけなかろう。

沸騰し、大根が煮えてくる。

むきみを入れる。

軽く火が通ればよかろう。

ビールを抜いて、食べる。


これは、なにがうまいのかというと、上の写真には写っていないが、
つゆ、で、ある。

浅利は浅利、大根は大根。
それぞれは、別段、なんということもないものである。
大根と、浅利から出た出汁が、命。

大根と浅利を入れては食べ、食べては入れ、つゆを飲む。
豆腐もまた、うまい。

小鍋で始めたため、つゆがすぐになくなってしまい、
途中で、湯を足さねばならなかった。
大き目の土鍋でやった方がよかった。

ともあれ、浅利と大根の鍋、同じ池波レシピでも、蛤の湯豆腐

ほどの、驚きはなかったが、庶民の味。
これを、飯にかければ、深川飯になるのであろう。
なかなかうまいものである。


P.S.粉山椒をかけるのを忘れた、、、

浅利は、独特の苦味ようなものがある。味噌味であれば問題はない、
かもしれぬが、うすい出汁では、やはり粉山椒はあった方がよかった。



池波正太郎レシピ



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