断腸亭料理日記2005

箱根・塔ノ沢・福住楼 2005 その2

年に一度の箱根。

昨日は、宿についたところ、まで。

ビールを呑んで、早速、風呂に行く。

ここ、福住楼には、風呂は二ヶ所。
木造の浴室に円い浴槽の風呂と、岩風呂で、ある。
時間によって、女湯と男湯が入れ代わる。

この時間は、男は円い方であった。
まだ、他の客はいない。

籐製の脱衣籠に丹前を脱いで、風呂場に入る。
(籠が、プラスチックではない、というのは、大事なところである。)

風呂場は床、壁、天井ともに木造で、欄間、などもある。
早川に向いたガラス窓は大きい。



湯船は、円形。縁は赤く光る、銅製。
中は、木製。
湯と水は、窓側の壁の蛇口から、太い竹筒で湯船まで引かれている。

木製の桶で湯船から湯を汲み、身体にかける。
冷えた身体で、熱いが、我慢して、湯に飛び込む。

慣れると、さほど熱くはない。
東京人のせいであろう。
ご多分に漏れず、湯は熱くないと、だめ、で、ある。
誰もいないので、勝手に、湯の蛇口を開け熱くする。

手足を思う様、伸ばし、この風呂を独り占めできるのは、うれしい。

熱い湯は、そうは、長く入っていられない。
烏(からす)の行水、とまではいかないが、出るのは速い。

18:00から、夕食、で、ある。

純和風の旅館である。食事は、当然であるが、和食のコース。
お通し、前菜、お造り、煮物、焼き物、揚げ物、鍋物、などなど。

この福住楼に最初に来た頃は、何年前であったろうか。
10年以上前。年も30そこそこであったのではなかろうか。
こうした、会席風の和食など食べたこともなかったので
随分と、感動したものである。

しかし、今、ここの1泊¥20,000程度と、いう金額は、
考えてみると、超高級、という金額でもない。
上には上が、まだまだある。

これを考え合わせると、ベラボウに、高級で、非の打ち所のない、
手の込んだ、料理が出るわけではない。
筆者も年をとり、最初の感動はないし、細かいことをいいだすと
切がないが、平均値をとれば、それぞれにそこそこ、
工夫も凝らされ、充分にうまい料理である。

これは、二日目のものであるが、献立を書き出してみる。

・お通し 鮟肝(あんきも)豆腐 浅葱(あさつき)割ポンズ
・前菜 海老黄身寿司 子持ち昆布 ばい貝土砂煮 鶏松風焼き 細根大根
・中皿 雲子みぞれ蒸 薄餡
・揚げ物 ずわい蟹湯葉巻揚げ 青唐(ししとう) 酢橘(すだち)
・煮物 鰤(ぶり)大根 小松菜 辛子(からし)
・刺身 まぐろ いさき 寒鰤 五味菜
・焼き物 目鯛西京焼 はじかみ 辛煮
・鍋物 足柄牛すき焼き 白菜 葱 春菊 焼き豆腐 椎茸 白滝 玉子
・飯 香の物三種 汁:牡蠣 赤根草 七味
・デザート いちご 生クリーム

中で最も目を惹いたものを挙げると、「雲子みぞれ蒸」というもの。


雲子は、白子のこと、で、ある。
オレンジの中身をくり抜き、そこに、白子を入れ、
おろした蕪(?、、ひょっとすると、大根)で包み、
蒸し、オレンジ風味の葛餡がかけられている。
奇を衒っているようだが、どうしてどうして、なかなかうまかった。

また、毎年来ていると、料理の傾向が違うことに気付く。
聞いてみると、昨年もそうであったが、
今年も、板長が、変わっているようで、ある。

食事が終わると、番頭さんが来て、布団を敷いてくれる。
毎度思うが、シーツの広げ方が、芸術的で気持ちがいい。
しわ一つなく、ピーンと広げ、瞬く間に敷き終わる。
さすが、老舗の日本旅館、プロの仕事、であると感心する。

さて、今年も、二泊、で、ある。

本当によい日本旅館には、絶対に、二泊以上するべき、で、ある。

筆者達は、年賀状を書きにくるため、
翌日は昼飯を食べに出る以外は、部屋にいる。

これを許してくれるのは、日本旅館ならでは、で、ある。

もちろん、なにもしなくともよい。
朝起きて、湯豆腐などの出る、朝飯で、一杯やり、
そのまま、また寝てしまっても、一向にかまわぬ。

そして、もちろん、掃除をしている時間以外は、
早朝でも、昼でも、いつでも、風呂に入れる。

これは、13:00頃、で、ある。

誰もいない、明るい風呂場。
天気のよい青空と、冬枯れの山の木々を見ながら、
大きな浴槽を独り占めできるのは、
まさに、極楽、で、ある。

もう一日、つづく。

福住楼



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