断腸亭料理日記2004

※移転されているようです。
台東区西浅草2-25-15
TELは変わらず。

稲荷町・手打ちそば・おざわ

12月17日(金)夜
例によって、夕方、吾妻橋の得意先。
かねて、懸案の稲荷町のそば屋、おざわ、である。

下谷稲荷町。地下鉄銀座線、稲荷町駅である。

稲荷町の由来は、近くにある、下谷神社。
この神社は、今は名前には出ていないが、お稲荷さんである。
正確には、下谷稲荷神社。
そこで稲荷町である。
(ちなみに、稲荷町は、正式な町名には、残っていない。東上野五丁目である。
もうそろそろ、こんな野暮な町名、やめてもいい頃ではないだろうか。
東京ほど、歴史を大切にしない都市は、他にないのではなかろうか。)

一度書いていた。

営業日が比較的不規則であったり、夜が早かったりで、
近所であるのに、最近はご無沙汰であった。

店は、間口一間(いっけん)ほど。
テーブル2〜3卓と、カウンターのみ。

無口なご亭主と、娘さんかと思うほど若い、お内儀(かみ)さん
お二人でやられている。

店内には、ジャズが流れている。

見た感じは、筆者の嫌いな、「脱サラ修行」系、「つまみもうまい」系、、
そば屋である。
(こちら「おざわ」さんが、脱サラなのかどうかは、不明。
断っておくが、筆者、ジャズが嫌いなのでもない。)

前にも書いたが、ここは、そのなかでも、唯一の例外。

筆者のツボに、はまる、からであろうか。
稲荷町、という場所もよい。

まずお酒、お燗で。

つまみは、壁に張り紙のあった、卵黄味噌漬け、と、百合根天ぷら。

筆者は、開店後すぐの一番乗りであった。
その後に、近所のサラリーマンとおぼしき、おじさんの四人組。
そして、年配の女性のお一人がカウンターに。

料理は、ほぼ、お一人で作られているため、
これだけ入ると、なかなか、時間がかかる。

卵黄味噌漬けで、燗酒をなめながら、
例によって、剣客商売を読む。

卵黄の味噌漬けは、飴色になった、卵黄。
味はかなり濃い、甘辛である。
味噌の風味はさほど強くはない。赤味噌(八丁味噌)ではないだろうか。

百合根天ぷらが出たところで、
「鴨ざる(せいろ)」太打ちそば、を頼んでおく。

(こちらのメニュー名は、鴨ざる、かと思うが、
ここでは、せいろ、で統一させていただく。)

百合根は、レモンを絞り、塩で食べる。
ホクホクで、うまい。

以前書いていたものも、鴨せいろ、のことであった。
このとき食べていたのは、正確には、鴨せいろではなく、
「鴨汁」、という、メニュー名で、鴨せいろとは、別のものである。

鴨汁の方は、鴨の脂のみを煮出し、鴨肉のつくねが、入っており
若干安い。

しかし、以前書いているように、これでも、一級品である。

さて、鴨せいろ。

つゆは、比較的深めの器に入っている。
三つ葉、焼きねぎ、焼き鴨肉、

そして、珍しいのは、椎茸スライスが入っている。
初めてである。乾燥ものではなく、生であろうかと思う。

実にどうも、堪(こた)えられない、うまさである。
(改めて書くほどではないが、当然、関東風の濃いつゆである。)

ねぎも、鴨肉も当然、別に焼いてから、合わせてある。

だし用の脂身は、つゆの中に、見あたらない。

しかし、脂もたっぷり出ているところを見ると、
脂身を煮出し、後から引き上げているのであろう。
細かい気の使い方、である。

このあたりが、この方の端倪すべからざる、ところなのである。

そばは、太打ちのため、すする、というよりは、
ちぎって、つゆにひたして、頬張る、という感じである。

そばの、そば、らしい味を噛みしめる。

まったくもって、久しぶりに、堪能させていただいた。

ぶらぶら歩いて、帰宅。




3月末から始め、200回になりました。ご愛読ありがとうございます。
最近は、ネタの宝庫、路麺や、牛込ビストロランチなどもあり、
ネタ切れの心配はあまりないのですが、
毎年のことですが、風邪なんぞを、よく引いて、四苦八苦。
今後ともよろしくお願いいたします。
これから、本格的に寒くなってきますが、
皆様も、風邪にはご注意。

                                    断腸亭錠志


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