断腸亭料理日記2004

浅草・駒形・むぎとろ

12月12日(日)夜
浅草・駒形である。

駒形橋西詰。

拙亭からは、自転車で5〜6分。
やっと12月らしく、寒くなってきた。

駒形堂は、しばらく、工事をしていたが、きれいになり、。
夜には、ライトアップされている。

以前は、ホームレスなどが入り込み、
正直のところ、あまりきれいではなかった。
真新しい、朱色や、緑のいわゆる、お堂の彩色になってしまうと
それはそれで、らしくない、と、思ってしまうのは、
見るものの勝手な思いである。

駒形堂の隣に、「むぎとろ」は、ある。

創業は、昭和四年という。
江戸創業が、ごろごろしている界隈の老舗のなかでは、古くもない。
しかし、浅草では、名物、有名店といってよいであろう。
また、安くもない。
宴会などにもよく使われるところでもある。

店名の「むぎとろ」。メニュー名が先か、店名が先か、
どちらが先にできたのかわからないが、
いずれにしても、代名詞になっている。
(商品名などが、カテゴリー名になった場合、マーケティング的には、
不動の地位を築いていると、いえる。
カップヌードル(カップ麺)、宅急便(宅配便)
ウォークマン(ヘッドフォンステレオ)などが好例。
多くは、先発商品である。)

麦飯にとろろである。

とろろ、といえば、江戸の頃、東海道、丸子宿(まりこ)
(現、静岡市の内)の名物であった。

安藤広重の東海道五十三次には、丁子屋という、現在も続く店が
描かれている。


この頃は、むぎとろ、という言い方ではなく、とろろ汁。
やはり、この、とろろ汁、という言い方の方が、古いのであろう。

なぜ麦飯なのか。
まあ、麦飯も、とろろも、もともとは田舎料理であろうが、
麦飯は、食感がつるつるとし、とろろと合う、ということから、
決まり物、になっていったのであろう。

筆者もこの店には、年に何回かは、来る。

昼は、お得なランチバイキングがあるようであるが、
いつも、週末の夜。

会席風のコース料理もあり、こちらは、値が張る。
山芋づくし、というのも、あまり趣味ではないので、
いつも、酒と、つまみに、¥1500のむぎとろを付ける。

今日は、まぐろ山かけ、と、甘鯛塩焼き。

まぐろ山かけ、は、さすがに、うまい。
変わっているのは、大根おろしが入ること。

一番下に、まぐろ。これは、ヅケ(しょうゆ漬け)になっており、
その上に、おろし。そして、とろろ、がかけられ、
一番上に、わさびである。

ここのとろろは、粘りがとても強く、おろしと合わせた方が
さっぱりと食えるのであろう。

甘鯛は時間がかかる、というので、つなぎに、
むぎとろのセットに付いている、卵焼きを先に、
つまみとして、持ってきてくれた。
このへんが、ちょっと、よい気遣いである。
なかなか、できるところは少ない。

甘鯛もなかなか、うまかった。

むぎとろセットは、蒸篭風の容器に盛られた麦飯と
すり鉢のとろろ(すいとろ)、味噌汁、お新香、(と、先ほどの卵焼き)。

これは、もう、いうまでもなく、うまい。

もともと、筆者、やまいもは、アレルギーがあって、
食べられなかったのであるが、慣れなのか、体質の変化か

最近、食べられるようになった。
このため、あまり、とろろの味について、語れるものがあるわけではない、
が、とても、うまい。
もともと、ものは、一級のもので、濃厚で、硬めなのであろうが、
硬過ぎず、柔らか過ぎず。味付けも、濃過ぎず、薄過ぎず、よい加減。

こうしたものを、いくらでも食べられるもの、というのであろう。
するすると、腹へ入っていく。

実に、満腹。うまかった。

店舗HP


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