断腸亭料理日記2004

箱根・塔ノ沢・福住楼 2004

12月25日(土)夕食他

このところ、毎年、暮れの恒例になっている、箱根。

一年の骨休めと、年賀状書きである。

家にいると、なかなか、年賀状も書けない。

また、来る宿も、ここ、箱根・塔ノ沢の
福住楼(ふくずみろう)に決めている。

ここに初めて来たのは、何年前であろうか。
10年にはならぬとは思うが、7〜8回は来ている。
この日記でも二回、書いている。

98年 99年

塔ノ沢とは、箱根湯本から早川沿いに上がった一つ目の、温泉郷である。
福住楼は、その早川の渓谷に接してに建つ。

今年は、紅葉が遅く、部屋から、落ち残ったもみじも見えた。

純和風の歴史のある本物の温泉旅館、というものは、よいものである。

建物、風呂、廊下、階段、障子、襖、欄間、床の間、屏風、
掛け軸、、、便所に至るまで、もちろん新しくはないが、
実に、よい。

平成14年、国の有形文化財に指定されている。

筆者そういうものの、目利きはできないが、
明治、大正、昭和の本物の、落ち着き、というようなものは、
わかるような気がする。また、それぞれがみな、粋、なこと。

また、ご主人、女将さん、番頭さん、仲居さん、
それぞれの客あしらいが、よい。

老舗にありがちな、敷居の高さや、
押し付けがましさなどは、もちろん皆無。

さりげなく、きちんとした、心遣い。

そして、番頭さんの布団の敷き方の鮮やかさ。
プロの仕事である。

また、ありがちな、○○プラン、お好きな浴衣を選んでいただけます、
女将の生けた花が自慢です、板長の工夫で、フランス料理をアレンジした
、、などなど、筆者の逃げ出したくなる、企画もの、もない。
(女将が花を生けるのは、あたりまえである。自慢ではない。
また、アレンジなど、しなくてよい。本物が食べたい。)

さほどに有名でもなく、また、17室と、大きくもない。
それがよいのかも知れない。

文豪○○さんが○○を書いた宿、小説○○の舞台、など、よくあるが、
そのなれの果て、とまでいうのは、言い過ぎではあるが、
酷いところも、経験している。

料理もなかなか、よい。
いわゆる、割烹料理である。

今回、うまかったものを少し。
(今年、板長が変わられたようである。)

お造りの、みる貝刺身。

煮物の、牛肉の根深巻き。
根深とは、ねぎのことである。
(池波作品などには、「熱い、根深汁、、」などという描写で使われる。)

太いねぎの、白い部分を3cm程度に切り、牛肉を巻いて、煮てある。
ねぎの甘味が堪能できた。

また、細かいことであるが、朝食の定番、鯵の干物。
この、皿が、温められている。

冬の朝食、冷たい鯵の干物、誰しも、経験があるであろう。

温かいものは温かいまま、冷たいものは冷たいまま。

あたりまえのことかも知れぬが、これだけで、
料理人の、姿勢のようなものが、わかるような気がする。

食い物屋でも、旅館でも、気に入ったら、
徹底的に通う。これでなくてはならない。

箱根・塔ノ沢・福住楼
よい温泉旅館である。


★明日は、富士屋ホテルでランチ。

福住楼HP


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