断腸亭料理日記

名古屋栄 みそかつ「叶」

これは12月のはなし。

名古屋と言えば前に書いた味噌煮込みうどんと味噌カツ。
前に味噌煮込みは書いた。まあ、うまいもの。
名古屋に来て1年が過ぎたが
味噌カツの方はこちらへ来た当初1度試して懲りていた。

食べた店が悪かったのか、とにかく甘い。ベトベトに甘い。
とても、東京人の味覚には合わない。
味噌田楽の甘い赤味噌がとんかつにかかっているのである。
とにかく、名古屋はなにかというと甘い。
煮ものが甘い、寿司が甘い。

そこで、元祖味噌カツという店へ行ってみた。
ここはなしでは、さっぱりしてる、という。
名古屋一の繁華街「栄」の裏通りにある。
「叶(かのう)」という店。
カウンターと小さなテーブル2つ程度のほんの小さな店。
作っているのは親爺一人。
背が高く、天井が低いからか、
いつも鍋を覗き込んでいるせいか
たいへんな猫背。
というよりも背中が曲がっていると言った方がいいか。
みんなが頼む「味噌カツセット」を黙々と作っている。
「セット」いうのは味噌カツどんに
味噌汁(当然赤だし)とおしんこ付き。

まず変わってるのが
注文が入るとカツと生卵を味噌だれの中に入れる。
このたれは常に火にかかっており、
カツと卵を味噌だれの中で煮込むことになる。
時間差で注文が入るとこの鍋のなかで
別の注文のカツと卵が同居する。
どろどろの味噌だれの中で
どのように区別しているのかはわからないが
それぞれ時間差で引き上げる。

これを、飯を盛ったどんぶりに
味噌だれとともにカツを先にのせ、
中央に半熟となった卵をのせる。

食べる。

ここまで見てくるとうまそうである。
確かに甘みはあるにはあるが
控えてあってさっぱりしている。
しかし、どうも違う。
この取り合わせには甘い方が合う。
しかし、それは私の口には合わない。

味噌煮込みうどんにある「うまみ」がないのである。
甘みを控えるのであればなにかの「うまみ」が必要なのではないか。

東京者なんぞに言われたかない、だろうな。
名古屋は独立国だから。

ふと、日本橋 人形町のカツレツ屋・キラクの親爺を思い出した。

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