断腸亭料理日記

■うなぎ やしま

このページでもっとも拙亭に近い店のうちの一つである。

営業は日曜を除く昼と夜。夜も8時までであったか、正直のところ
なかなか行く機会がないのが残念である。

そんなわけで、行けるのは土曜日か早く帰ってきた夜だけである。

場所は春日通りと、左衛門橋通りの交叉点、小島町交番の隣である。
最寄駅は大江戸線・新御徒町。

営業時間が短いせいか場所が中途半端なせいか、
あまり商売っ気がないのが、なにか、ほほえましい気もする。

もっとも、ご主人と女将さん、他に一人ぐらいでやっているため
それほど、お客に来られても困るのかも知れない。

初めて入ったのは雨の降る、寒い晩秋であったかと思う。
6時頃、仕事を切り上げぶらぶらと、覗いてみた。
他に客は一組程度であったかと思う。
静かである。テレビもなければ、有線の音楽もない。

中は意外に広く、テーブル席3、4と座敷。

ビール(またはお酒)。鰻重。
お通しとして運ばれてくるのが「味噌豆」である。

落語(小噺)にもある。(食べ始めると止まらなくなるという、たわいない噺だが
大豆を戻して、白茹でにしただけのものである。
このため、これだけでは、なんの味もない。
これから味噌を作るため、味噌豆というようである。
普通はしょうゆをかけて食べる。

やしまでは、からしじょうゆに青海苔を掛けて出てくる。
まあ、素朴なつまみ、である。

うなぎを待つ間、味噌豆をつまむ。

鰻重。
ここの蒲焼は、いわゆる、東京の蒲焼としては色が薄い。
このため、非常にさっぱりとしている。
かといって、味が薄いわけではない。
東京人が満足する味の濃さはしっかりある。

これを食べていて、浅草雷門の「初小川」の蒲焼を思い出した。
何回か通ううちに店内に、初小川から贈られた色紙が掛けられているのに
気が付いた。

初小川の方がだんぜん古いため、やしまの店主が初小川で修業をされたのであろうか。
初小川は予約も必須、人気店である。

同じ味がしみじみと、ゆっくり食べられる、こちら、やしま。

(はっきり言って、敷居ばかり高く、うなぎ割烹などと称した、
どこぞの名前だけの老舗などより、蒲焼の品質はかなり高い。)

おすすめである。

電話番号:03-3851-2108

住所: 東京都台東区小島2丁目18−19

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