断腸亭料理日記2006

鴨鍋と鴨飯

1月1日(日)元旦 夜

さて、元旦の夜、である。

これも、もう何年も続いた習慣。
拙亭では、正月の決まった食事、で、ある。

鴨鍋。

この日記でも何度も書いている。

昨年

一昨年、鴨鍋と鴨飯

昨夜の深夜の初詣で、今日は、風邪っぽい。
微熱であるが、午後になって、ちょっと、発熱。
解熱剤を飲んだり、また、ビールを呑んだり。

正月である。まあ、よいか。

鴨鍋、である。

鴨肉は胸肉(ロース、冷凍)、ハナマサで購入。
1枚、¥700程度。それから、芹、2把。
年末に買っておく。

鴨というと、すぐに思い浮かぶのは、ねぎ、
かも知れぬ。
もちろん、ねぎ、も、うまいが、
芹も、よい。

芹は、拙亭では使わないが、雑煮に使う家もあるという。
正月用にも、けっこう売っている。

準備、といっても、肉を解凍しておくだけ。

鍋の用意。すき焼き用の鉄鍋。

拙亭の鴨鍋は、甘辛の割り下で煮る。
すき焼き、の、ようなもの、である。
江戸・東京の鴨鍋は、これが正しいように思う。

鴨鍋に限らぬが、江戸の鍋は、軍鶏鍋、あんこう鍋、
どじょう鍋、などなど、みな、
今、普通にある、つゆで煮込む鍋ではなく、
しょうゆの甘辛での、炒め煮。
考えてみれば、たいした芸もなく、自慢できるものでもないが、
やはり、安心できる味である。

玉子を用意。

鍋を熱し、たっぷりある脂を敷く、、、。

おっと、忘れていた。
鴨飯、を、作るのであった。
鍋は、ちょっと、中断。

鴨鍋には、鴨飯。これを忘れてはダイナシ、で、ある。

まずは脂を細かく切り、煮出す。
これを出汁に、米を炊く。
味付けは、酒と、薄くしょうゆ。

飯の上にかける肉と、芹の用意も忘れてはいけない。

肉を2〜3切れ、細かく切って、
鍋同様の味付け、しょうゆ、酒、砂糖で、甘辛に炒め、取っておく。
また、これも肝心。
毎度忘れてしまうのだが、芹のみじん切り。

さて、準備完了。

やっと、鍋にかかる。
すき焼き同様、筆者は、酒、しょうゆ、砂糖を直に、鍋に入れ、
炒め煮にしてしまう。

たいしたことはないが、コツは、煮過ぎないこと。
肉が堅くなっては、いけない。
レア、でよい。
火が通ると、堅くなり、身がどんどん縮む。
こうなると、ほとんど、脂身だけになってしまい、
なにを食べているのか、わからなくなる。

軽く火が通れば、芹とともに、溶き玉子をくぐらせて、
食べる。


これは、もう、言葉もない。
うまい、なんというものではない。
べらぼうに、うまい。

まさに、堪えられないうまさ、で、ある。
鴨鍋を食える正月を迎えられた幸せ、を感じる瞬間で、ある。

鴨はとにかく脂が多い。
これを緩和するのが、芹、で、ある。
絶妙の相性である。

また、今日は、芹を食べ尽くし、
ねぎ、も、追加した。
ねぎはねぎでまた、うまい。
ねぎは、甘辛のしょうゆと、鴨の脂と、また、よい相性。

さて、食い終わり。

鴨飯。
炊き上がった飯に、先の肉と、芹のみじん切りをのせる。


これもまた、なにもいうことがない。
脂で炊き込んであるため、飯はちょうど、炊き込みの
ピラフのようで、ちょっとパラっとした感じになる。

うまい、うまい。


よい正月、で、ある。



よい正月ついでに、少し、引用させていただく。
これも、池波先生レシピ。剣客商売である。


 おはるは、父親が持たせてよこした鴨の肉と、見事な葱を一束と、

芹と、手打ちの饂飩を小兵衛の前へひろげ、

「お父つあん、今日は、これをとどけに来るつもりでいたんだとよ、先生」

「なによりのご馳走だ」

 小兵衛は、おはるに命じ、鉄鍋(かななべ)で葱とともに焼き、

酒をふくませた醤油につけて、食べることにした。

「池波正太郎著・剣客商売-辻斬り・新潮文庫」  から「老虎」。



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