断腸亭料理日記2006

神田須田町・あんこう鍋

いせ源・その2

雪の中の、あんこう鍋。
神田須田町、いせ源。昨日は、注文まで。

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燗酒が来た。

菊正宗。

あれまあ。お通しは、芋茎と油揚げの煮たもの。


食べてみると、なかなか、悪くない。
色は、先日、筆者が作ったものとは、違う。
青みを帯びている。
芋茎にも、鮮度があったのであろうか。

しかしまあ、どちらかといえば、食感、の食い物である、
と、いうことは、間違いはないのであろう。

そしてもう一点。
芋茎と油揚げの煮物、という、気取らないつまみを、
お通しに出す、気取らない店、と、いうことであろう。

さて、鍋が来た。

きも刺し、も来た。

鍋に入っているのは、あんこうの身、きも(一人前一切れ)。
うど、きぬさや、白滝(かなり細いもの)、銀杏、しいたけ、
三つ葉、豆腐、といったところ。
つゆは、しょうゆベースで、少し薄めの甘辛。
ほとんどのものが、下茹でなど、下ごしらえがしてあるので、
基本的には、煮え立ってくれば、食べられる。

あんこう鍋を名物にしているのは、関東では
水戸、大洗、なんというところであろう。
筆者は、食べたことはないが、このあたりのものは、
きも、を溶かし込んだ味噌仕立てで、あるという。

これに対して、いせ源のものは、やはり、江戸前の味付け、
さっぱりと、ということであろう。

煮えるまで、きも刺しで、呑んで待つ。

煮えてきた。

身と皮。コラーゲンのプリプリ感が身上である。

また、うど、が、よい。
うどは、東京特産の野菜である。
三鷹、立川などで、今でも盛んに作られている。

うまい、うまい。
お銚子も追加、追加。
呑んで、食って。

3人前、を二人で食べ終わる。

二人前では、ちょっと足らないのである。
どうせ食べるのであれば、たっぷり、食べたい。

食べ終わると、おじや、で、ある。
仲居さんが聞きに来る。来なければ、催促すればよい。
おじやは、一人前。

仲居さんが、ご飯を入れ、
例によって「触らないでくださいね」と、いい含められる。

おとなしく待っていると、煮詰まってきた。
これも例によって、忘れられた。

「すいませーん!、煮詰まってきたんですけどぉー」

火を止め、生卵を割りほぐし、軽く、混ぜ、
あさつき、を散らし、完成。

おじやは、玉子を入れてから、かき混ぜない、
のが、うまく作るコツ、である。
ふんわりと、仕上がる。
このため、「触らないでくださいね」と、いうことになるのだが、
忘れられたのでは、話にならない。

煮詰まって、甘辛が濃くなった。
これはこれで、怪我の功名、うまい。

あんこう鍋のいせ源。
そう頻繁に食べたい、というものでもないが、
やはり、季節には一度は来たいものではある。

今日のような、雪の日には、また、絶好である。
本当であれば、土曜出勤で会社から、なんぞではなく、
着物を着て、コートかマントでも羽織って、
足駄を履いて、番傘を差して、銀座線に乗って、来たい。

そういった風情を含めて、好きな店である。

まあ、欲をいえば、もう少し、客扱いを
なんとかしてもらいたいところではある。

あんこう鍋は一人前¥3000超。
今日のお勘定、二人で¥16,000。

いせ源



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