断腸亭料理日記2005

浅草・寿・とんかつ・すぎ田

7月16日(土)夜

さて、ここ、ちょっと、久し振りである。

振り返ってみると、ちょうど一年前

夏になると、食いたくなるものなのであろうか。

浅草寿町。最寄駅としては大江戸線の蔵前。
春日通りと、国際通りの交差点から、北、田原町方向、へ向かって
右側、数軒目である。

ここ、閉店が20時過ぎ、と、早い。
いくら近所とはいえ、ボヤボヤしていると、終わってしまう。
拙亭からは自転車で、数分。
今日は妻が、ポークソテーを食べたい、というので、
自転車をギコギコ、こぎ、来てみた。

カウンターに座る。

いつものように、シェフの親爺さんが、二つの揚げ鍋の前に陣取っている。

ビール。
アサヒのプレミアム。
浅草はお膝元、プレミアムもヱビスではなく、この店はアサヒ。
これもなかなか、うまい。

お通しは、いつ来ても変わらない。
いかとトビコを、梅肉風味で和えたもの。
(呑みに来ているわけではないが、左程、うまいとも思えぬ。
これ、お気に入りなのであろうか。)

さて、筆者は、ロースのとんかつに決まっている。
妻は予定通り、ポークソテー。
ご飯と、豚汁も付ける。

店に入ったときからなにか、感じが違う、と、思っていたのである。

二代目さんであろう。ポークソテーは若い方が作られている。
頑固親爺の許可が出たのだ。

感じが違うと、思ったのは、二代目さんがちょっと、
生き生きしていたのである。

この店は、親爺さん、女将さん、二代目さんと、
もう一人でやられているのであるが、
親爺さんが、なかなかすごい、のである。

前回も書いているが、立て込んできて段取りが悪かったりすると、
親爺さんは切れて、(主に女将さんへ)怒鳴るのである。

女将さんがまた、おとなしそうな方で、知らない、
初めて来たお客さんなどは“だいじょうぶであろうか”と、
心配になってしまう程ではなかろうか。

しかし、大方、この親爺さんの切れ方、は、いかにも江戸っ子のもので
すぐに、けろっとするものでは、あろうかと思う。
それも含めて、筆者などは、微笑ましく見ていたりするのである。

それが、今日は二代目さんが、親爺さんほど大きな声ではないが、
女将さんに怒鳴っていた、ようなのである。
これは、まず、妻が気が付いていた。(さすがに女性、敏感である。)

調理の腕と、こんなところも受け継ぐ、、。
人間、そんなもの、である。
筆者、自分のことを振り返り、少し、苦笑いである。
(二代目さんは、奥さんはいないのであろうか。早く、若女将をもらって、
自分の女将さんに怒鳴った方が、まだよい、、、
と、考えたが、これも、自分のことを思い、苦笑いである。)

さて、肝心のとんかつ。
15mmはあろうかという、ぶ厚いもの。二度揚げ。

しっかりとし、パリっとした、衣。

それから。

最近、思うようになったのだが、とんかつは、なにがうまいのか、
と、いうことである。

とんかつでは、よく、柔らかく、肉の中心は少しピンク色、が、よい、
などと、柔らかさのことが、いわれる。
これはこれで、堅いよりは柔らかい方が、よく、間違ってはいなかろう。
ここ、すぎ田の、ぶ厚い肉を柔らかく、よいかげんに揚げる技は
他にないものである。

しかし、本来、とんかつは、脂身、がうまい、のである。
豚のうまみ成分のほとんどは、脂身に含まれているのであると、聞く

炒め物などにラードを使うとうまい、のも、そうであろう。

しかし、多過ぎれば、ひつっこく、また、身体にもよくない。

なにかで、とんかつの、からし、は、脂身に付けて食べる、と、
いうのを読んで、やってみているのであるが、これは脂身が
随分と、うまく食べられる。

そんな思いで、ここのとんかつを食べてみると、ロースでも
脂身はさほど、多くはないが、少なくもない。
このバランスが、絶妙であることに気が付いたのである。
くど過ぎず、上品だが、それでも存在感のある脂身。

やはり、親爺さん、ただ者ではない。

毎度のことだが、ご飯の炊き具合、濃い目の豚汁の味かげんも、
神経が行き届き、これらもみな、親爺さんの作品である。

うまかった。


(親爺さん、職人、なのである。
そういえば、最近行っていないが、色川の親爺さんは元気であろうか。)

すぎ田
TEL 03-3844-5529
〒111-0042 東京都台東区寿3丁目8−3 

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