断腸亭料理日記2004

牛込払方町・そば・蕎楽亭

12月7日(火)昼食
牛込ビストロではないが、今日は、そばである。

そば。

筆者のオフィスのある牛込界隈、ここ、蕎楽亭(きょうらくてい)も含めて、
いわゆる、町のそば屋ではない、何軒かのそば屋がある。

表現は、いささか、妙であるが、どうも、そんなことになってしまう。

東京のそば屋は、藪、砂場、更科、長寿庵などなどの、
老舗と、その暖簾分け。

と、新進気鋭、脱サラで、修行し、こだわりました、という看板の店。
場合によってはこれに、夜はつまみも充実、というおまけも付く。

ここ数年、ますます増えている。

大方は食わず嫌いなのであるが、
この手のそば屋、筆者は、苦手である。
(唯一の例外は、稲荷町・おざわである。
このところ行けていないのが残念である。)

それなりに、一代でも歴史を重ね、こだわりぬいて(?)有名になり、
支店を出すまでになったり、
あるいは、店を閉めて、八ヶ岳に篭り、自家栽培のそば粉にまで
いってしまったり、いろいろ、である。
好きな人がいて、作る人がいて、

否定をするつもりもさらさらないのだが、惹かれない。

呑むにしても、そばを喰うにしても、東京では、
池之端藪でよいのではないか、と思ってしまうのである。

東京人は濃いつゆしか、認めない?
そう、それもある。

地方のそばどころ、は、もちろん、いくらもある。
もちろん、うまいものも、随分ある。

筆者の名古屋時代、豊橋にはうまいそば屋が、何軒かあった。
太打ちのそばで、切り胡麻や、うずらの卵をつゆに落し、
田舎そばだが、それが、うまかった記憶がある。

ともあれ、蕎楽亭である。
平成10年開店であった。もう6年にもなるか。
近所のため、開店当初を含め、何回か行っている。
また、このところ、様々なメディアにも採り上げられている。

神田神保町の有名店「松翁」で修行された方という。
筆者、前記のようなわけで、「松翁」にも行ったことはない。
(松翁には、真偽は定かではないが、一部の情報によると、
池波先生も行っていた、ということでは、ある。)

店先に石臼があり、自家製粉。

生の才巻海老を使った、天ぷらセット、も多少惹かれたが、
野菜が入っているところで、やめる。
(蔵前いせやの親爺ではないが、
江戸っ子は魚介類以外は天ぷらと認めない、という定義のもとである。
しかし、これ、野菜天が嫌いなわけでもなく、
まったく食わず嫌いであり、、自覚はしている。
野菜の入った天ぷらセット、などと、いわれると、
半端な地方の街道沿いのドライブインの天ざる定食、などを、
想起してしまうのである。)

ともあれ、

今日は、本気である、という気持ちで、
鴨せいろと、花巻の二品を頼む。

鴨せいろから。

鴨の脂身をみじん切りし、煮出し、脂の層が、ベットリとできたつゆに、
三つ葉が大量に入っている。

猪口に、このつゆを分けて、そばをつけて、啜る。
やはり、つゆは、色が薄く、若干物足りない。
松翁は濃い口もあるらしいが、ここには、特にそういう表示はない。

肉ではなく、脂身のみを、煮出してあるのは、よいが、少し、多過ぎか、、。

そば自体は、なるほど、うまい。
量もそこそこ。

さて、今度は、花巻。
花巻とは、海苔をかけものである。

普通は、いわゆる、乾燥した一般の、もみ海苔をかけたものである。

店先に貼り紙もしてあったが、生海苔、であるという。
筆者、知らなかったが、花巻の薬味は、ねぎではなく、わさびが決まりであるようだ。
わさびが出てきた。

どうなのであろうか。

これ、やはり、普通の海苔の方が、うまいのではなかろうか。
生海苔で、ものは、よいものなのであろうが、
しっかりと歯ごたえがあり過ぎてヘビーに感じる。

そば屋というもの、味もあるが、形(スタイル)で食わせるものである。
くどいようだが、好きな人もおり、否定するつもりは、ない。

最初に述べた、昨日今日できたばかりの、素人に毛の生えた
修行したての、脱サラそば屋の、レベルの低さ、のなかでは、
公平に見て、この店の味のレベルは、決して低くないと思われる。

ご興味のある方は、ご自分の舌で確かめられたい。

店舗HP



今回、少し迷ったのであるが、こうした内容もたまにはよいかと、
若干、ネガティブな内容であるが、書かせていただいた。


断腸亭料理日記トップ | 2004日記リスト1 | 2004日記リスト2 | 2004日記リスト3 | 2004日記リスト4 |

2004日記リスト5 | 2004 日記リスト6 | 2004 日記リスト7 | 2004 日記リスト8 |2004 日記リスト9 |

BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2004