断腸亭料理日記2004

鱸(すずき)塩焼き・青柳ぬた

7月19日(月)海の日・振替休日・第三食
御徒町に出たついでに、吉池に寄ってみる。
魚を買おう。

鯵、鰯、とも思ったが、安くもない。

鱸(すずき)があった。富津であるという。
そろそろ、鱸の季節であろう。
塩焼きである。
鱸の塩焼きは、池波正太郎先生の好物でもあった。

筆者など、子供の頃は食べた記憶もあまりない。
もはや、高級魚であったのか、食べてはいても子供には味がわからなかったのか。

江戸前である。

名古屋にいた時分には、東京より安かったため、よく食べた。
夏からは脂があって、うまい。

また、今は、輸入ものも多く出回っているようである。

一切れ¥250。

青柳。これも、江戸前。
これで、ぬた、を作ろう。

ついでだが、江戸前とは今は東京湾のものを
江戸前と呼んでいるが、本来は文字通り
江戸城の前の海で取れたもの、という意味であったという。

真昼の炎天下。自転車を飛ばして帰宅する。

暗くなってから、作り始める。

鱸は塩をして、焼くだけ。

青柳は、袋状になっているので、包丁を入れ開き
きれいに洗い、さらに、酢で軽く洗う。

酢味噌を作っておく。
赤味噌と白味噌を1:1。酢は適量。砂糖は入れない。

何軒か廻ったが、今日はなぜか、わけぎが見当たらなかった。
普通の長ねぎで作る。

3cm程度に切り、さらに、縦に1/4に切る。

湯を沸かし、同時に冷水も用意。
沸騰して、入れて10秒弱程度。
笊にあけて、すぐに、冷水に放す。

水を切り、ペーパータオルでよく水分を取る。

鱸は身が厚いため、弱火で丹念に焼く。

完成。

ビールを開けて、食べる。

鱸。
今日のものも、そこそこ脂があって、うまい。
この魚、独特の風味がある。
白身であるが、あま味というのか、うま味というのか
香りもまた、特有のものがある。

河口付近の喫水域の水底にいるため、ものによっては、泥臭いものもある。

青柳ぬた。ねぎはやはり、わけぎの方がうまい。
しかし、まあまあ。

青柳もまた江戸前である。

先日、太助で食べた新子も江戸前。

鱸や、青柳が住む、東京湾の泥というと、
だいぶきれいになったとはいえ、気味が悪いような気もする。
(環境ホルモンのことなど、考えれば切りがないが、、。)

水中写真家、中村征夫先生はここに潜られて、写真をとられている。

穴子なども、江戸前、羽田沖をよく食べている。

今更、気にしてみても、はじまらないが
東京に育ち、今も住み暮す者としては、複雑ではある。

昔、佃島の白魚は将軍様に献上された、
などという話を思い出してみても、今は昔。

筆者の父の子供の頃でも、
大井町付近の海岸でよく蟹を獲って食べた、とも言っていた。

少しでも、きれいになってくれるに越したことはない。
石原さんも、松沢さんも、堂本さんも、東京湾の魚を胸を張って
食べられるように、考えてくれないものであろうか?
我々にとっては、郷土の海なのである。

しかし、一方、東京の街に住み暮らし、喰いたいものを喰って
死んでいくのであれば、それはそれで御の字であるのかも知れないとも、思う。

過去・名古屋時代の鱸塩焼き

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