断腸亭料理日記

鴨とクレソンの鍋
 
   1月2日(土)
   高校時代よりの友人Y夫婦が来て宴会。
   毎年正月は行ったり来たりしている。
   今年は、拙亭(私の家)へ。

   以前に「失楽園」という映画があったがあれで
   森田芳光は「鴨とクレソンの鍋」なるものを登場させていた。
   そのインパクトに映画を見ながら失笑してしまった。

   「鴨といえばねぎ」に決まっている、と思っていた。
   鴨鍋ならなおさらねぎ。

   しかし、やはり池波正太郎のなにかを読んでいて
   鴨鍋に芹(せり)を入れるのも当時(江戸から)
   あたりまえであったという。
   これは知らなかった。

   クレソンと芹は近い。

   してみると「鴨とクレソンの鍋」もあながち笑えない。
   ちゃんとしたものが出来上がるかも知れぬ、と考えていた。

   鴨は好物の一つ。
   鴨鍋に限らず、ロースト、北京ダック、鴨なんばん
   鴨せいろなどなど。
   焼いたものに例の穴子の甘いたれをかけて
   どんぶりにするのもうまい。
   中でもとくに鴨せいろは好物。
   鴨とねぎを入れて煮立てたそばつゆにざるのそばをつけて食う。
   夏の少し元気を付けたいときには最高。

   正月にも鴨は拙亭ではよく登場するご馳走。

   今年はその「鴨とクレソンの鍋」なるものを。

   鴨(合鴨)は毎年、
   暮れに築地に買い出しに行く際にまとめて買う。

   どんな鍋にするのがいいのか、サンプルがあるわけではない。
   映画「失楽園」を見ていると
   役所広司、黒木瞳の食べている雰囲気から
   しゃぶしゃぶ、若しくは水炊き風のものが想像されていた。

   しかし、ここは、甘辛のしょうゆ味ですき焼き風に。

   あらかじめ、しょうゆ、出汁、酒、みりんを煮立て
   割り下を用意する。
   クレソンに芹も半分ずつ用意。
   鴨は胸肉(脂のぶ厚い部分)を削ぎ切りにする。

   作る。

   卓上コンロに鉄鍋(すき焼きなどに使うもの)を熱し脂身を溶かす。
   肉、芹(クレソン)に割り下をかけ、じゅうじゅう と焼く。
   割りほぐした卵につけて食う。

   クレソンも芹もこうして食べるとほとんど違いはないが
   うまい。
   鴨肉も当然にうまい。
   脂がたいへんに強いが、芹がさっぱりと緩和する。

   ビールに酒。
   酒は手取川の大吟醸吉田蔵と燗用に大七。
   チリの赤ワインサンライズ。

   すき焼き風にした「鴨とクレソンの鍋」は成功。

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