断腸亭料理日記2023

すき焼き・人形町今半・上野広小路店 その2

4437号

引き続き[人形町今半]の上野広小路店。
すき焼きのコース。

昨日は、前菜、お造りまで。

もう一度、肉。

素晴らしい霜降り。

これはしのばずコースというものの、特上。
さらにこの上に、3000円高い、極上というのがある。

皿数は同じで、おそらく肉の違い、なのであろう。

最近、和牛を出すところでは、産地を特定しない
ことも多い。
店の目利きでよいもの、見合ったものを都度
選んで出す。
鮨やなどの魚介もそうだが、私はむしろこの方が
よいのではとも考える。

グルメマスコミの影響が大きいと思うが、ともすると
産地ブランドが、一人歩きする。
そのものの品質ではなく、○○産だから盲目的に
うまいということになりかねない。
もちろん、有名産地のものでも凸凹はあろう。
実質以上に値が上がるということも起こってこよう。

産地ブランドではなく、店やそこの料理人を信用すると
いうことになるのだが、この方が健全ではなかろうか。

野菜。

野菜というよりは、肉以外といった方がよいか。
これも彩りを含めきれいに盛り付けるものである。

焼き豆腐、今半の名入りの麩、ゆでた南瓜、包丁目の
入った長ねぎ、蓮根これも火が通っているか、
楊枝を刺した銀杏、椎茸、紅葉に切られたにんじん、
春菊、そして白滝。

この白滝は、細いもの。
毎度書いているが、私は白滝は細いものが
よいと考えている。
食感もよいし、なにより味が染みやすい。
東京の鍋料理やで、この細さのものを使って
いるところが、すべてではないが、多い。
(雷門の牛肉や[松喜]で手に入る。)

一般的にすき焼きやでは、最初はお姐さんが
よい塩梅に焼いてくれて、後はどうぞ、
というところが多いが、ここは最初から
最後まで、肉も野菜も全部お姐さんが焼いて
くれて、溶いた玉子の小鉢に取ってくれる。
フルサービス!。

最初の肉。

やっぱりプロの仕事、で、ある。
甘辛味の塩梅、肉の火の通し具合、柔らかさ。
お姐さんが立派な料理人なのである。

見た目、あれだけの霜降りだが、脂は強すぎぬ。

まさに堪えられぬうまさ。
これが、すき焼きというもの。

二回目。

この小皿への盛り付けもテキトウではない。

肉、細い白滝。
その上に、ねぎで挟んだ麩。
手前に銀杏。

バランスよく、立体的。

三回目。

やはり、下に焼き豆腐と肉、白滝、レンコン、
ねぎ、椎茸。

蛇足だが、フルサービスのよさはもう一つ。
溶き玉子が減ってくると、言わずとも新しい
溶き玉子の小鉢にしてくれる。
いつも玉子一つでは足らぬ、うちの内儀さんなどは、
小躍り。

さらになん回かあって、最後のご飯。

これもお姐さんの技。
ここ看板の、ふわ玉ご飯。

鍋でふわとろの甘辛オムレツにしてくれて、
これを白いご飯にのせる。

私は、さらに残っていた溶き玉子を加えた。

客の目の前だが、まったく、きれいなふわとろに
作るものである。
流石の、お姐さん料理人。

これがまずかろうはずがない。

お椀は、赤だし。
入っているのは、麩。

漬物はきゅうりと、なんであったか。
なにかの葉っぱのようだが、もしかして
京都のすぐきを細かく刻んだものであった。

デザート。

アイスは、ゆずであったか。
左は、抹茶ミルクのババロアに甘い栗。

ここまで。

量も我々ぐらいの年の者にも多すぎない。

牛すき焼き、それ以外の料理の味のレベル。
彩り。きれいで適切な目の前の調理と盛り付け。

値段もそれなりだが、やはり他店を圧している
といってよろしかろう。

明治の初めに牛鍋として生まれ、ご存知の通り、
大流行し、ご馳走の一つとして定着していった。
当初は在来の使役牛を食べており、硬く、匂いも
それなりだったよう。だが、次第に食用に改良され、
今の黒毛和牛になっていった。

もちろん、関西にもあるが、すき焼きも
東京の料理といってよいのでは、なかろうか。
浅草のすき焼きやの多さ。

座敷で、会計。
38,632円也。

お姐さんに店長さんなのか、お兄さんも
エレベーターまで、見送ってくれる。

ご馳走様でした。
おいしかったです。

 


人形町今半

 

 

 

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