断腸亭料理日記2023
4315号
引き続き、浅草[弁天山美家古鮨]。
つまみ、たこと鰹。
にぎりに入り、すみいか、平目昆布〆。
そして、鯛。
皮付き。
皮を付けたまま、皮側に熱湯を掛け、
すぐに冷水で熱が入るのを止め、洗う。
霜降り、あるいは湯引きともいうのか。
鯛では比較的よく使う手法であろう。
やはり日持ちをよくする、微妙に熱が入り、
歯応えもよくなる、そして、うまくなる。
次は、好物、光物。
まずは、小肌。
もうだいぶ大きいので、半身でにぎる。
そういえば、昨年放送されたNHK「美の壺」の
江戸前ずし、若親方が新子を仕込んでいるのが
収録されている。つい最近も再放送を視た。
やはり、仕事をした江戸前鮨を代表する種であろう。
毎度書いているが、私は、No.1に推したい。
この皮目の美しさ。
様子(ようす)がいいという表現が江戸弁にあるが
まさしくそうであろう。
小肌というのは、身が薄いのが身上。
厚く(おおきく)なっては、だめである。
だから、なのか、酸っぱすぎるのもうまくない。
絶妙の塩梅。
脂ものりすぎない。にしん科の魚なのでにしんにも
味は近いのだが、ほんのり、程度。
そして、皮。
そう、身が薄い分、皮も味のポイント
なのかもしれない。
光物、次は、さより。
さよりは、光物でも限りなく白身に近かろう。
生でも十分うまいが、ここではやっぱり〆る。
淡泊だが、うまい。
最近、ここではちょっと見かけないが、
江戸前鮨では、きすも〆て、にぎる。
さよりはこの〆たきすにちょっと近いかもしれぬ。
次は、小鯛、春子(かすご)。
開いた一匹でにぎっている。
文字通り、春のもの、でよいのか。
しかし、春子とはよく付けた名前であろう。
春の子供。
小鯛は光物に入れて、〆てにぎる。
うまいもんである。
江戸前に限らず、若狭小浜の小鯛ささ漬、
というのがあるが、あれも同じものであろう。
池波先生の好物であったと記憶している。
小肌もそうだが、これだけ小さいと、
さばくのもたいへんであろう。
私などとても真似できぬ。
海老の小さな味噌汁が出た。
海老の頭の出汁だが、ちゃんと味噌汁
としての出汁も取ってあるのが、わかる。
濃厚で、うまい。
次。
しまあじか、かんぱちがあるかと聞くと、
しまあじがある、とのこと。
そして、かじきの昆布〆がありますよ、と
若親方。
え?!、かじきの昆布〆?。
北陸、富山、金沢ではよく見る、定番のもの。
あちらの方は、好きらしい。
江戸前鮨では、あったのか、まず見たことはない。
もちろん、もらおう。
しまあじから。
ん!、これ、すごい、のでは!?。
しまあじというのは、ご存知の通り、うまい。
うまい、というのは、あまりものによる差が
少なく、いつもそこそこ、うまい。
天然でも養殖でもあまり差がないともいう。
が、これ、どういうことなのか。
錯覚?、わからぬが、かなりあまく、段違いに
うまい。
うーむ。
ものがちがう?。
熟成?。
そして、かじき昆布〆。
聞かなかったので、わからぬが、ここでは
初めてなのでは?。(宗旨替え?)
そもそも、かじきは東京では刺身ではまあ、
ほぼ食べなかろう。
今はもちろん、刺身で食べられるものは、入荷している
のであろうが、やっぱり食べない。
長年の習慣なのであろう。
まぐろでさえ、江戸の頃は刺身は食べなかった。
(まぐろは脂が多すぎるから、と説明されるが、実際は
足が速くすぐに食べられなくなったというべきだと
考えている。揚がった場合は塩漬けにしていた。
それで、積極的には獲らなかった、と。)
富山湾はまぐろがあがる。
おそらく、かじきもあがる、あがった?。
わからぬが、かじきを昔から刺身で食べる
習慣があったのであろう。
それで、北陸お得意の昆布〆をして食べてきた。
かじきというのは、三陸産などはなかなか高価。
私は、毎度お馴染み、カジバタにするが、
もちろん、ものによろうが、脂があるものもあり、
刺身でもうまい。
昆布〆はより、濃厚。
つづく
台東区浅草2-1-16
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