断腸亭料理日記2021

鴨鍋

1月1日(金)第二食

元日の夜。

昨年もそうであったが、我が家では、いつの間にか
正月は鴨鍋になっている。

鴨鍋はもともとは池波レシピ。

作品は「剣客商売」で、二つある。

一つは「剣客商売 二 辻斬り (新潮文庫)」

これはねぎのみで、しょうゆで。

もう一つは「剣客商売 四 天魔 (同)」

これは芹。
味付けは作品中には触れられていないが
甘辛ではないか、というのが私の推測。

軍鶏鍋や牛すき焼きでお馴染みの
甘辛しょうゆ味。

鴨というのは、うまいものである。

最近であれば、11月に鴨せいろを作った。

あれは、冷凍のタイ産合鴨。

今日の正月用のものは暮れに内儀(かみ)さんが
近くの鶏やで、雑煮用の鶏肉とともに
買ってきていた。

全国的にあるのか、わからぬが、東京では
今も牛豚を置かない鶏肉店がある。

値段は5倍。国産、生。
タイ産は、ハナマサだが、安すぎるのか。
正月用で、プレミアが付いていたのかもしれぬ。

先に書いたように、池波レシピでは、
鴨鍋は二種類ある。

甘辛もよいが、やはりねぎで、しょうゆだけ。
鴨鍋はこれにとどめを刺す。

鴨肉は、そばでも、フレンチでも
たくさんの料理があるが、もしかすると
これが一番うまいのではないか、
と、思うほど。

また、鴨ねぎ、とはよく言ったもので、
実のところ、鴨以上にねぎがうまい。

ねぎはもちろん、東日本の白ねぎだが、
青ねぎでも、うまいのではなかろうか。

薄めに斜め切り。

鴨肉。

国産の上に、生、で、ある。

タイ産よりも、赤いように感じる。

脂は別に切っておく。

火鉢の炭では火力が足らないので、カセットコンロ。

鉄鍋。

脂身から入れる。

脂を十分に出して、鴨肉と、ねぎ。

鴨肉は、絶対に焼きすぎてはいけない。

このくらいでもよい。
ここから先、硬くなり、
どんどん小さくなっていく。

ねぎは、鴨の脂をたっぷり吸わせる。

ビールを開ける。

しょうゆを垂らして、食べる。

しょうゆは生しょうゆ。

「剣客商売」では「酒をふくませた醤油につけて」
とある。これは鮨やでにぎり鮨を客に出す前に
塗る、しょうゆを酒で割って加熱しアルコールを
飛ばした、ニキリを念頭に置いていると
思われる。
最近自分でにぎる鮨にも生しょうゆを垂らしているが
空気に触れない生しょうゆは、酸化もせず、
水分も飛ばない。これでちょうどよい。

国産の生の鴨肉、さすがに違う。
色も濃いが、味が濃い。
タイ産の冷凍ものばかり食べているので
ほう、こんな味だったのか、と驚くほど。

そして、やっぱりねぎ。
鴨からは脂が大量に出る。
甘辛に芹もよいのだが、芹は脂を全部取り切れない。
この脂を最もうまく食べるのに
薄く切ったねぎは、最適である。

また、この脂の染みたねぎに、
しょうゆが、格別に合う。

ただの、濃口しょうゆ。
薄口でも、たまり、でもなく、濃口しょうゆ
だから、うまいようにも思う。

白い千住ねぎと濃口しょうゆと、鴨の脂。

昔、庶民は鴨など、めったに食べられなかったはず。

だがこれも、まぎれもなく、江戸の味
なのではなかろうか。

 

 

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