断腸亭料理日記2020
2月10日(月)第一食
さて。
シューマイ、で、ある。
シウマイだと横浜[崎陽軒]だが、
一般には、焼売でもいいし、シュウマイでもいい。
の池波正太郎表記、で、ある。
他の著作は調べていないが「銀座日記」ではすべて
表記ユレなく、シューマイである。
ともあれ。
シューマイが食べたくなった。
シューマイであれば、浅草の[セキネ]へ買いに行っても
よいのだが、今日は、神保町の[揚子江菜館]へ
行ってみることにした。(ちなみに[セキネ]もシューマイ。)
むろん[揚子江菜館]は「銀座日記」に頻繁に登場する
池波レシピ。
このところ、寒くてどうも出るのに決心がいる。
自転車というのもある。
もちろん、風を切るので寒い。
特に神保町は元浅草から地下鉄では行きずらい、
のである。
13時頃、着込んで、エイヤっ、と出る。
秋葉原へ出て、須田町から靖国通り。
駿河台下からすずらん通り。
[揚子江菜館]到着。
入ると、一階は一杯、二階へ。
一人でテーブルに掛け、
迷わず、シューマイと上海焼きそば。
店の外の看板にも、店の中の壁にも先生の「銀座日記」と
佐藤隆介氏の「池波正太郎の食まんだら」
の表紙のコピーと、この店のことが書かれている
部分を書き出してある。
これだけ出されれば、上海焼きそばとシューマイを
頼まなくてはいけなくなる。
まあ、もちろん、ここに着く前から私自身は
決めてきた。
上海焼きそばとシューマイは、池波先生のお決まりの
セット、で、あったわけである。シューマイは箱で持ち帰る
こともあった。
私の直後に二階に入ってきた、年配の男性の一人客も
まったく同じ、上海焼きそばとシューマイを
頼んでいた。
シューマイがきた。
あ、そうであった。
二個のシューマイは付くのであった。
別段、一品料理のものでもよかったのであるが。
先に一つ、食べる。
見た目にもわかる、この縦長。
そうそう。
なぜかここは、この形。
この細長いのは、他ではまず見たことがない。
形もさることながら、うまみが実に濃厚。
シューマイというのは、ぼんやり食べていると
気が付かないまま食べ終わってしまうのだが、
よくよく味わうと、店によってかなり味が違う。
ここはこんな小ぶりであるが、濃厚である。
上海焼きそばもきた。
やはり、ここ、久しぶりであった。
上海焼きそば、こんなであったか。
焦げ目の入った柔らかめの細麺。
具のもやし、玉ねぎ、肉などは、一緒に炒めてあるというよりは
のせてあるよう。
味はもちろん、うまい。
日比谷[慶楽]
が閉店してしまった。
もちろん[慶楽]も池波レシピ。
私は、あちらへ行く方が多かった。
中華の池波レシピは他にもあるが、
個人営業の店は、ここを残すだけになってしまったのでは
なかろうか。
最近私も意識して書いている町中華とも一線を画す。
[慶楽]とここの共通点は、中国人経営の老舗である
ということ。
最近のネイティブに近い中国人経営の味とは
180度といってよいほど違う。
日本人の舌に合わせてあるのだが、
中国人の味のセンスと調理の技がちゃんと
入っているといってよいのでは、なかろうか。
ここや[慶楽]にあった麺に焦げ目の入った焼きそばなどは、
町中華には決してない。
池波レシピの店以外でも、都心には、こんな中国人
経営の老舗中華がもう少し以前はあったと思うが、
やはり、どんどんなくなっていく。
横浜中華街や銀座の老舗へ行くしかないかもしれぬ。
新しくなくてよい。流行りでなくてよい。
餃子でもない。うまい焼きそばや、春巻き、シューマイが
食べたい時がある。
千代田区神田神保町1−11−3
03−3291−0218
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