断腸亭料理日記2020

鱸塩焼き

2月1日(土)第二食

午後、御徒町の吉池にまわる。

さて、今日はどんなものがあるか。

鯖。
今年は安くて脂がのっているようである。
〆て、例によって赤酢の鮨にしてもよいが、
この前、鰯でやったばかりである。

だが、なにかかわったものはないか?。

ん!。

鱸(すずき)の切り身。

京都産。
丹後であろう。

二切れで、680円。

よい値段である。

もちろん、塩焼き。

久しぶりに食べてみようか。

秋の終わりから初冬あたりであろうか、
「落ち鱸」といって、脂がのっている。

「落ち鱸」は池波レシピ。
池波先生自身もお好きであったようである。

例えば、鬼平犯科帳。

役宅に平蔵行き付けの本所の軍鶏鍋や[五鉄]が届けてくれて、
奥方が塩焼きを酒とともに出す、なんという場面がある。
(鬼平犯科帳15 特別長編「雲龍剣」)

江戸前を代表する魚である。

私は、好きなのだが最近はあまり食べていなかった。

鱸というのは、アメ横の例の格安の魚やによく
置いていた。おそらく今もあるだろう。
中型のもので、一本、500円〜800円ほど。
東京湾産。
江戸前、といってよいものだろう。

東京湾には、以前は定番であった魚の多くが獲れなく
なっている。
大川(隅田川)の河口ではちょうど今の時期、篝火(かがりび)を
燃やして夜獲っていた白魚、あるいは、江戸前鮨では
定番のすみいか。これはいることはいるようだが、流通する
ほどは獲れていない。最近まで羽田沖などで獲れていた
のだが、今はほぼ聞かなくなった、穴子。

だが、鱸については今でもたくさんいるようである。
強いのか。

ただ、先日のあん肝ではないが、原因はわからないが、
かなりの割合で、東京湾産は、匂いが強い。
ひょっとすると泥くさい、という表現を越えて、
とても食べられないというものもある。
よい場合もあるのだが、やはり一度でもこんなのがあると、
買えなくなるではないか。

すべて、ではないのだろう、私ははずれくじばかり
引いていたのかもしれぬ。

江戸前の鮨やでも、季節には鱸は必ずある。
鮨やでは、常磐から三陸などが多いようである。
うまいし、おつで、粋な江戸前のねた、であろう。

吉池の京都産で、この値段であれば、うまいものであろう。

もう一品。

鱈の白子。

寒いこの時期、まさに旬。
吉池にも定番でたくさん置かれている。

実のところ、白子の類は、あまり得意ではなかった。

ものが少しでもわるいと、生ぐさい。
おそらく、外でそんなものばかりに
ぶつかっていたのであろう。
だが、そこそこ以上の鮨やで食べれば、かなりうまいもの
であることがわかった。
だが、今もあまり積極的には自分では買わないものである。

北海道産、小さいパック、510円を購入。

帰宅。

鱸。

白子。

鱸は塩をしてガスレンジで焼くだけ。

白子は、軽く茹でて、ぽん酢しょうゆをかけるだけ。

どちらも簡単。

鱸の塩焼き。

大きさが随分違う。二人で食べたら喧嘩になりそうである。

だが鱸、というのは、うまいもんである。

白身、といってよいのだが、他に似たものを
あまり思い浮かばない。

独特の香りと、切れのよいうまみ。
乙、であり、粋な魚である。

鱈の白子ぽん酢しょうゆ。

これも、文句はない。

生ぐささなどとは一切無縁。

まさにとろける。

東北から北海道の海辺で育たれた方にとっては
冬の風物詩、毎日でも食卓に上るもの、と
聞いたことがある。
きっと新鮮なものしか出回らないのであろう。
うらやましい限り、で、ある。

だが、あまりたくさん食べるものではない。

余ってしまったが、どうしようか。

 

 

 

 

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