断腸亭料理日記2020
引き続き、白魚。
2月4日(火)第二食
白魚といえば、天ぷらとい思い、まずは昨日、
天ぷらにした。
まだ、半分残っている。
天ぷらもよいのだが、最もうまいのは、やはり生。
それも、そのままで刺身、ではなく鮨。
鮨というのは、刺身と酢飯の組み合わせで、別々に食べるとは
別の味。うまさが生まれる、というのはご理解いただけよう。
フレンチでいうような、組み合わせ、ということもあると
思うのだが、実際に酢飯とにぎることで、即席であっても
アミノ酸が増えるという科学的なデータもあるよう。
白魚も江戸前を代表する魚なので、古くから鮨としてにぎる。
古い形は、生ではなく茹でたものを数匹並べてにぎりっていた。
今、鮨やで白魚をにぎるとすると、生を軍艦にする。
食べくらべると、生の軍艦の方が勝る。
白魚というのは火を通すと、どうしても淡泊になるのである。
飯を炊く。
今日は赤酢も使うが、半々よりも透明な穀物酢を多くする。
これは今まで赤酢のにぎり鮨を作ってきた経験からである。
赤酢の酢飯はより加工度の高い、〆たり、煮たりした
いわゆる仕事をした種に合っていることがわかってきた。
白魚は生なので、赤酢を少なく、2:8くらい。
透明な酢、100%ではない理由は、これも経験上だが
赤酢が入った方が、日持ちがするようなのである。
布巾をかけて飯台に入れておいて、一日たっても食べられる。
(レンジ加熱をして蒸しずしにしている。)
炊けたら、混ぜ込む。
軍艦用の海苔は、海苔全型を縦に置き、横に四分割。
前回これを反対にしてしまったので、幅が広くなってしまっていた。
横に四等分が正しかった。
しょうがをおろす。
酢飯をにぎり、海苔を巻き付け、白魚をのせ、しょうがを
のせる。
海苔を巻き付ける向きも揃えなくてはいけなかった。
あっちゃこっちゃになってしまった。
ビールを開ける。
しょうゆ(キッコーマンしぼりたて生しょうゆ)を一たらし。
やっぱり、白魚は生の軍艦が最もうまい。
もっと食べたいのだが、今日はもう一つの料理を考えているので
切った海苔がもう一枚だけあるので、あと一つだけ
にぎって食べる。
もう一品。
白魚といえば、これもやらなければ。
なにかというと玉子とじ。
池波流にいえば、小鍋立て。
池波作品では例えば、鬼平犯科帳(一)「暗剣白梅香」
などに出てくる。
これは玉子とじではなさそうで、豆腐入り。
今までなん回も私もしている。
三つ葉に豆腐も入れたりしていたが、豆腐はやめて、
三つ葉のみ。
そのかわり、三つ葉は一把(二株)全部。
書いている通り、火を通すと白魚は淡泊さが増すので、
つゆは濃くすることにした。
いつもの桃屋のつゆ。
気持ち水で薄め、酒としょうゆを足す。
桃屋のつゆは、そばつゆや天つゆにはちょうどよいが、
煮物には、甘みが強い。もちろん、これは私の好み。
標準ではない。
溶き玉子は二個分用意。
小鍋につゆ、三つ葉から入れ、白魚、玉子の順。
玉子が軽く固まるまで。
出来た。
淡泊な白魚。
今まで、ちゃんと出汁を取り、薄口しょうゆで
関西風というのか、割烹風な味付けにしていた。
だがもう、やめた。
やっぱり私が作るのであるから、濃口しょうゆの勝った
東京下町風。
(並木藪蕎麦のかけそばのつゆを想像していただければよい。)
白魚に合っているかどうかは別だが、
私にはこれが、うまい。
以前、例えば、明治大正あたり。
東京で、白魚の玉子とじは定番であった。
その味付けは、むろん店によって違っていようが、
例えば、浅草あたり、あるいは、須田町の[いせ源]。
([いせ源]は、鮟鱇以外の鍋も以前はやっていた
のである。)
こんなところでは、このくらいの濃いものも
あったはず。
江戸前の白魚。
古くは、家康の好物。
それで、真偽のほどは定かではないが三河の海から移入した、
とまで言われている。
将軍家御用であり江戸前を代表し、また、象徴する魚といってよい。
大川端で、篝火(かがりび)を焚く漁の情趣、文化的には
とても、とても重要な魚である。
生で、軍艦のにぎりにするのが、もっともうまい。
火を通せばとても淡泊。
風物詩、以上のものではないと私は思う。
だが、それでも東京湾最奥、隅田川河口に白魚を復活させたいと
私は思うのであるが。
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