断腸亭料理日記2020
12月1日(火)第二食
さて。
上野のとんかつ[蓬莱屋]
、で、ある。
実は[ぽん多本家]
へ、蛤のバタ焼きを食べに行こうと思ったのだが、
珍しく、18時から貸し切りで、断念。
次善ということで松坂屋裏の[蓬莱屋]。
とんかつの頭ではなかった、
切り替え、切り替え。
脇の路地に自転車をとめて、戸を開けて入る。
戸は、自動ドア。
くの字のカウンター。
お客は、二組。
芸術家風の白髪の初老の男性が奥。
芸大の先生であろうか、なにやら楽譜を広げている。
入口側の奥に、老夫婦。
さらに高齢に見える。
カウンター手前に掛ける。
コートを脱いで、後ろの椅子へ。
お姐さんが品書きを持ってくる。
やっぱりビール。
大びん、中びん、小びん?と、お姐さんが
ちょっと片言の日本語。
ここはエビスであった。
大びんを置いているのは珍しい。
いや、エビスの大びんは見たことがない。
あるんだ。
中びんを頼む。
さて、なににしよう。
ここは、ひれかつ専門。
これも珍しい。
私自身は脂身が好きなので、ここ以外では
ひれかつは食べない。ロースのみ。
いつもノーマルな長いひれを一本で
揚げたものを食べている。
それ以外に、ここには一口かつ、串かつ、
そしていろいろ入った、東京物語御前、
というのがある。
これにしようか。
食べたことはあったと思う。
東京物語御膳、2800円也。
ひれかつ、一口かつが3300円なのに対して
ちょっと安い。
これ、そう。
この店、行きつけであった小津安二郎監督に
ちなんだもの。
「東京物語」とは、昭和の日本映画の巨匠、
小津安二郎監督の、代表作といってよいだろう。
昭和28年(1953年)公開、笠智衆、原節子主演。松竹。
なん度も観ている。原節子もよいが、笠智衆の旧友役
(戦友であったか)の東野英治郎がいい。
この人、ご存知水戸黄門であるが、この頃から老け役。
きたない爺さんが実によい。
ビールがくる。
お通しはいつも変わらないと思うが、
ひたし豆、でよいのか。
枝豆をしょうゆのつゆに漬けたもの。
カウンターの前はすぐに調理場。
さほど広くない。
揚げているのは、若い料理人。
壁側の揚げ油を見ていると、
煙が出ている。
三度揚げ、というが、かなりの高温のものも
あるようである。
きた、東京物語御膳。
ノーマルなひれかつ同様、濃い揚げ色。
右上が串は抜いてあるが、串かつ。
キャベツ。
左下、丸いのがひれのメンチかつ。
その上がひれの一口かつ。
漬物は高菜。
味噌汁の器がここ独自。そば猪口のよう。
具はいんげん。
ソースをかけて、食べる。
シャバシャバのウスターソース。
甘めが、懐かしい。
衣はどれもかなりしっかりしている。
串かつは、ねぎのあまみがよい。
それから、メンチかつが特徴的。
かなり細かく挽いた肉のようで、
ナツメグを強く感じる。
うまい。
ペロッと食べ終わり、会計。
ご馳走様でした。
うまかった。
台東区上野3−28−5
03−3831−5783
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