断腸亭料理日記2019
引き続き、三代目金馬師「居酒屋」。
〜〜〜〜〜
小「いの字は打てないんです〜。」
客「そんなこと言わないで打ってくれよ〜。
試しに打ってみろよ〜。」
小「打てませんよ〜。」
客「じゃ、その次のろの字は?。」
小「ろへ打ちますと、、
〇▽※〜〜〜。」
客「ゴロゴロ〜〜つったな。」
小「ろは打てません。」
客「じゃ、ま、は?」
小「えー?
・・・、、。
まは打てないんです。」
客「じゃ、ぬ、だ。」
小「※×▽・・・。」
あんた、打てないの選(よ)ってるんですよ〜。」
客「あ、は、は、は、はー。
ざま〜〜みろ。
なんでも打てますったろ。
打てねえもんがあんだろ?!。
一生懸命無理に打とうとツラぁ伸ばして、こんな顔しやがって。
は、は、は、は。
バナの頭へ汗かいてやがんな〜。」
小「なんです?、そのバナって?。」
客「お前(めえ)の顔の真ん中のこんもり高いもん、なんだ?。」
小「こりゃ、鼻でございます。」
客「濁りが打ってあんじゃないか。」
小「こりゃ、ほくろですよー、あんた。」
客「あ、は、は、はー。
ほくろかー。
うまく二つあるなー。
俺ぁ、濁り打ったのかと思ったー。」
小「顔へ濁り打つ人ありませんよー。」
客「そーだろー。んなら横っちょにあるのはぼっぺただな?!。
上にあんのは、びたいだ。
お前(めえ)なぁ、顔じぇねーや、がおだ。そりゃ。
濁りだらけだ。
おもしろい、がおだなー。
元方(もとかた)現金に付き貸し売りお断り申し候、と
きたなー。
これ一人前持ってこい。」
小「そーーんなもんできませんよー。」
客「俺の喰いてえもの、みーんなできねえんだなー。
不自由な家飛び込んじゃったよ!。
酒の替わりだよ。」
小「ご酒替わり、いちぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
客「おい。ちょいとここへ来い。
帯ほどいて、裸んなって見せろ。
どっか、パンクしてるぞ。
へそがよく閉まってねーんじゃねーかなー。
空気が漏るよ、お前。
プシュ〜〜〜〜って、いうじゃねーか。
さっきの肴も一遍やってくれ。
ゴチョ、ゴチョ、ゴチョ、ピ〜〜〜〜〜っての。
あれ、なん度聞いてもおもしろいからよ。」
小「突き当りの棚にも肴が並んでますから、ご覧なすって下さい。」
客「どこだい?。」
小「あすこの棚に。」
客「あすこ?
あんなとこまで行くのめんどくせえじゃねーか。
じゃー。あの棚、ここへ持ってこい。」
小「持ってこられやしませんよ。そんなもん。
そっから、ご覧なすって下さい。」
客「おい!。右上の真っ赤になって、ぶる下がってるのはなんだ?。」
小「どれです?」
客「右の隅っこに赤ぁーくなってぶる下がってるの。」
小「ありゃ、たこです。」
客「あのたこ生きてんのか?。」
小「いやー、生きてやしませんよ。」
客「死んじゃったのか。」
小「さよでございます。」
客「んー。気の毒な事したなー。
ちっとも知らなかった。
いつ死んだよ。」
小「わかりませんよー!。
たこの死んだんなんて。」
客「はがきの一本でもくれれば、お通夜に行ってやったのに。
とんだことしちゃったなー。
老少不定(ろうしょうふじょう、老人でも子供でも誰が死ぬか
まったくわからないこと)であきらめるんだなー。
真っ赤だなー。」
小「う(茹)でたんです。」
客「うでると、あーいう風に赤くなんのか?。」
小「海老でも蟹でもたこでも蝦蛄でも赤いものは、なんでも
うでたんです。」
客「赤い物は、なんでも?。
猿のケツはうでたのか?。」
小「あんなもの、うでる人ありませんよ。」
客「赤い物はなんでも、って言うから聞きてえんだよ。
電車の停留所の柱、誰がうでたんだ?。
小「あんなもの茹でられるものですか。」
客「足はなん本だ?。」
小「八本あります。」
客「偉いな〜。
流石ぁ、商売人だ。
勘定しないで、すぐに八本ありますって、偉い!。
え(い)ぼはいくつだ?。」
小「えぼなんかわかりませんよ。」
客「なぜ、勘定しとかねーんだ。
そろばんで弾きゃぁわかるだろう。
たこに、えぼ足して、十、とかなんとかよ。
たこは、なんにすんだ?。」
小「酢にいたします。
酢蛸でございます。
桜煮もございます。
持ってまいりますか。?」
客「いらないよ。
聞いた、だけだよ!。
気が早ぇなぁー。
俺ぁ寒気がしてきたよー。そんなら。
酔えやしねーよー。
あの隣に、こんな大きな口の赤い肌の魚、ぶる下がってるの
なんだ?。」
小「どれです?。」
客「あの隣によ。だらしがねーのよ。」
小「あー、あんこうです。」
客「あんこうー?。
なんにすんだ?。」
小「鍋にします。あんこう鍋。」
客「あは、は。
あの隣に、印半纏(しるしばんてん)着て、鉢巻きして、
出刃包丁持って、こう、考(かんげ)えてるのなんだ?。」
小「あれぁ、うちの番頭でございます。」
客「あれ、一人前持ってこい。
バンコウ鍋ってこしらえてくれよ。」
居酒屋というお噺でございました。
〜〜〜〜〜
これでお仕舞。
つづく
断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5
|
2004 リスト6
|2004
リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10
|
2004
リスト11 | 2004 リスト12
|2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005
リスト15
2005
リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20
|
2005
リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006
6月
2006 7月 |
2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006
12月
2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |
2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月
2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月
2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |
2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |
2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |
2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |
2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |
2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |
2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |
2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |
2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月
2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |
2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |
2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |
2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |
2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017
1月 |
2017 2月 |
2017 3月
| 2017 4月 | 2017
5月 | 2017 6月 | 2017
7月 | 2017 8月 | 2017
9月 |
2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 | 2018 1月|2018 2月| 2018 3月|2018 4月 |
2018 5月 |
2018 6月|
2018 7月|
2018 8月|
2018 9月|
2018 10月|
2018 11月|
2018 12月|
(C)DANCHOUTEI 2019