断腸亭料理日記2018

鴻上尚史著「不死身の特攻兵 軍神はなぜ
上官に反抗したか」その4



もう少し、鴻上尚史著「不死身の特攻兵 
軍神はなぜ上官に反抗したか」。(講談社現代新書)

なんだか特攻兵と関係なくなってしまったようである。

三回で終えるつもりであったが、伸びてしまった。

考えてみたかったのは、あと二つ。

一つめ。「世間」を大事にし所与のものとして受け入れるのは
他民族に征服されたことがないから、というもの。

これはどうであろうか。
アカデミアではあまりいわれないことかもしれない。

そもそも他民族に征服されたことがない、ということ自体は
どうであろうか。

有史時代、大和王権ができてからあたりからみてみると、
他国、他民族に元寇などの侵略がわずかにあるが撃退し、
支配下に置かれたということはない。

お、そうである。
太平洋戦争の敗戦も入れて然るべきかもしれぬ。
進駐軍が入り、サンフランシスコ平和条約までは
占領下で、条約発効から初めて独立が成立していると
いうことであろう。
現在の日本国憲法がこれ以前の占領下で作られ、
また、日米安保体制に基づく米国軍の駐留は現在も続いており、
独立状態ではない、という論もあるにはあるが、
まあ、少数議論でトータルすれば支配下にあったとしても
ほんの数年ということでよろしいか。

有史以前はどうであろうか。
問題は、縄文時代と弥生時代の間である。

もちろん、文献のある歴史のフィールドではなく、
考古学の領域なので、明確なことはわからないという
ことになるのだろうが、殺戮行為や征服といったものでは
なかったのではないか、ということ。
稲作を持って朝鮮半島、中国大陸から日本列島に入ってきた
人々は、徐々に同化していったと専門家の間でも
考えてよいようである。

ただし、奈良から平安期の朝廷による蝦夷討伐、
元祖征夷大将軍、坂上田村麻呂の東北地方の平定は、
それにあたるといってよいだろう。

日本民族は、ほぼ侵略、征服されていないが、日本民族、
この場合、大和民族は、蝦夷=アイヌといってよいのか、
さらには、もう少し時代は下るが、琉球は江戸初期、
薩摩藩によって事実上の支配下に置かれている。

これは、意外に日本史上も知られていないかもしれぬ。

「薩摩入り」といって、薩摩藩は琉球に侵攻し江戸幕府からも
琉球支配を認められている。以後、琉球は薩摩藩支配下にあり、
かつ、中国大陸の明、その後の清とのいわゆる朝貢貿易の二枚
看板というのか、二重の主従関係を持っていた。いや、琉球を
介した、明、清との貿易のために薩摩に持たされていた
というべきか。

江戸期以前はこんなところ。
明治以降でいえば、台湾併合、朝鮮、さらに第一次大戦に
よって、パラオなど太平洋諸島、その後、満州、、、
まあ、皆様ご存知のことであろう。

征服したことはあるが、ほぼされたことがない国。
しかし、そんな国は、けっこうあるのではなかろうか。

イギリス、イングランドなどはそうではなかろうか。

いや、イングランドも11世紀にヴァイキングに征服されている
時代があったようである。
ヨーロッパなどは島国とはいえ、征服、被征服の歴史で
あったということか。

世界中探せば、まあ、あるのかもしれぬが、
やはり征服されたことのない国、というのは稀有な存在
ということではあろう。

前にも書いたが、最も歴史が長いということで日本の
天皇家は、世界の王、皇帝の中で最上位にあるという。
これも征服されたことのない国の証左であろう。

さて、問題は征服されていないから「世間」を大切にする
のか、ということであった。

これは、否(いな)、で、あろう。
韓国の例を考えると、朝鮮半島は日本の支配を受けているし
それ以前は中国王朝の支配秩序の傘下に入ってた。
このことを考えると、征服されていても「世間」を大切にする
文化はあるといってよさそうに思われる。

我が国の「世間」を大切にするメンタル文化に、
征服されていないことは影響はあるかもしれぬが、
必ずしもこれがなくとも成立するということになろう。
(こうなってくると、韓国がなぜ被征服の歴史を持ちながら
「世間」を大切にするメンタルを持つようになったのか、
ということをよく吟味しなくてはいけなくなってきた。)

さて、いよいよ最後。

災害の多い国土、である。

あまりにも災害が多いので一心教ではなく
八百万の神になったという説を提出している。

そしてこのあたり著者は曖昧に書いているが、
文脈的には「世間」を大切にするメンタルの
構成要素というのか、一体のものと位置付けているといって
よさそうである。

これについて考えて見たい。

まずこれも、そもそも日本は多神教なのか、
から考えてみなくてはいけなかろう。

日本には神社、お寺、キリスト教会、、
いろいろな宗教がある。

私達に身近なものは、お寺、神社。いわゆるお参りには、
観光の一部としてでも、皆、行き、手を合わせる。

また、神社は私も鳥越神社の鳥越祭に参加するが、
地域のお祭りというのが身近である。

氏子という名前で、住んでいる場所によって神社は特定され、
ある意味どこかの神社の信者という位置付けになる。

また少し前までは、地域にもよろうが、神棚はある程度
どこの家にもあった。特に商売をしている、あるいは
なにかの職人であればこの傾向は強かったと思われる。

神棚は、氏神(産土神)様を祀る、あるいは、伊勢神宮、
天照大神(アマテラスオオミカミ)を祀る。(あるいは両方)
特定の商売、特定の職人ではその業、職の神様があり、
それを祀る。大工であれば聖徳太子、酒屋であれば京都の
松尾大社、といったものが例である。


つづく

 

 

 

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